[選手権]昌平が苦しみながらも初戦突破。2度先行許すもプレミアで磨かれた“底力”発揮、PK戦で浦和学院破り準決勝へ

昌平が苦しみながらも初戦を突破した。第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選準々決勝1日目が1日に浦和駒場スタジアムで行われ、夏の王者で2大会ぶり7度目の優勝を狙う昌平が2-2からのPK戦の末に浦和学院に勝利した。昌平は9日の準決勝で成徳深谷と対戦する。

プレミアリーグEAST所属でこれが今大会初戦となった昌平は、左足首の負傷で戦線を離れていたU-18日本代表MF長璃喜(3年)がスタメンに復帰。その長や湘南内定の10番MF山口豪太(3年)が果敢に仕掛け、U-16日本代表FW立野京弥(1年)も前線で強さを見せていた。

23分、長がU-16日本代表DF笠原慶多(1年)とのワンツーからエリア内に侵入し決定機。24分にも山口が右サイドを深く抉って左足シュートで狙うが、浦和学院GK大日野渉(3年)がいずれも好守で防ぐ。26分にも昌平は山口のスルーパスから立野が迫ったが決めきれなかった。

一方、昨年大会準優勝で、今回は3回戦で前回決勝で敗れた正智深谷を下してこのステージに進出した浦和学院も個の強さを見せる昌平に対し、グループで繋がった守備で相手の攻撃を個々に分断。攻撃では後ろからしっかりと繋いで相手を引き出し、サイドに展開して攻撃を仕掛ける。

33分には左SHの桜井亮(2年)のパスから裏抜けしたFW本田優生(3年)がシュート。これは昌平GK小野寺太郎(3年)が防いだが、その3分後に浦和学院は左SB町田璃斗(3年)が1人剥がして前方のスペースに出すと、ボールを受けたボランチの平方虎(3年)が果敢に仕掛けてエリア内に潜り込み、最後は角度のないところから左足でニア上を打ち抜いて先制した。

昌平は攻め込みながらも前半は無得点に。芦田徹監督は「ボールを持つことにちょっと臆病になっていた部分が少なからずあったんじゃないかと。ミスを恐れずに自分たちの良さを出す、そのためにボールを受ける、アクションを起こすっていうところはやっぱりまだまだ。もっともっとやらないとみんなが期待するようなプレーにはいかないんじゃないかと思います」と分析する。

後半8分に昌平はMF人見大地(2年)を投入。それと同時にFW齋藤結斗(3年)を左サイドに移し、長をトップ下に配置転換する。すると、このポジションチェンジがピタリとハマった。

14分、MF髙見澤光(2年)からのパスを中央で受けた長が、立野との絶妙なワンツーでゴール前に抜け出し。さらに間髪入れずに来た相手DFのスライディングを交わすと、バランスを崩してやや右側に流れながらも身体を捻りながら右足でファーを打ち抜くゴラッソで同点とした。

浦和学院は中盤以降、足を吊る選手が続出。苦しい時間帯が続いたが、ここを凌ぐと34分、右MF小川澄羽(2年)が縦に仕掛けてクロス。これを本田が決めて再び、昌平を引き離す。

昌平は36分、得点力のあるFW島田大雅(2年)をピッチに送り出し、点を取りにいく。終盤も昌平が猛攻を仕掛ける中で浦和学院はDF長岡璃空主将、DF長島蒼空(ともに3年)を中心に粘り強い守備。また、途中出場のDF門倉佳希(3年)が相手のシュートに食らいついていた。

それでもこのまま試合終了かと思われた中で昌平は40+3分、島田の左CKをDF森井智也(3年)がヘディングで値千金の同点弾。終盤で意地を見せた昌平が土壇場で試合を振り出しに戻す。

浦和学院は延長前半4分、桜井のポストプレーから10番MF平昭一哉(3年)が抜け出したが、シュートは小野寺がキャッチ。昌平も延長後半ATにゴール前の混戦で山口がシュート。こぼれ球を森井が拾ったが、浦和学院MF遠藤一輝(3年)がブロックし、勝負はPK戦に突入した。

昌平は終了間際に小野寺に代えて197cmの超大型GK土渕璃久(2年)を投入。するとPK戦ではその土渕が躍動した。互いに2本ずつ決めた後の3本目を右に飛んで止めると、4本目も相手をしっかりと見ながら左に飛んで完璧なセービング。昌平はDF伊藤隆寛主将、DF高橋心晴(ともに3年)、森井、途中出場のDF中島夢瞬(3年)と全員が決めて熱戦に終止符を打った。

芦田監督は初戦の固さも認めた上で「浦和学院さんが本当に素晴らしかった」と話す。今年度、市立長野からやってきた指揮官は「埼玉県でベスト8の戦いとなった時には間違いなくどこが全国に出てもおかしくないチームが揃っている。ベスト8だけれども決勝戦ぐらいの、ひっ迫感もそうですし、埼玉県のレベルの高さを思い知ったっていうところです」と表情を引き締める。

その中でも「プレミアでも鍛えてもらいながら、やっぱり最後まで諦めずに、最後本当にあの苦しい状況の中でも追いつく力とか、プレミアも結構多いんですけど、先制されて、もう1点返すとか、追いつくとか、逆転するとか、そういったところは彼らの中に多少染みついてきている部分じゃないかと思います」。今季はプレミアでも先制されることも多い中で、後期も逆転勝利した市立船橋戦やFC東京U-18戦、また首位を快走する相手に対し、一時は逆転まで持って行った鹿島アントラーズユース戦(最終的には2-2)のように跳ね返す力は今年の長所でもある。

後期は怪我や体調不良でなかなか人が揃わず、前節怪我から復帰したばかりの人見や長など、万全な状況ではないのも確か。その中でも前期は出ていなかった選手が多く入ってきている中で、全体の経験値は上がっているチームがまずは夏に続く全国出場を目指し一歩一歩階段を上がる。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2(4PK2)2 浦和学院
0(前半)1
2(後半)1
0(延前)0
0(延後)0
4(PK)2