[選手権]主将不在、けが人多数…、“イレギュラー”な状況で見せたチームとしての「成長」。朝霞西がPK戦で花咲徳栄を下し、初の16強進出!

朝霞西が初の16強! 19日、第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選2回戦が行われ、朝霞西と花咲徳栄が対戦。1-1からのPK戦で朝霞西が7-6で制し、3回戦進出を決めた。

朝霞西は青森山田で2年次に選手権優勝も経験したDF多久島良紀(現・明治大3年)の弟で、1回戦の叡明戦でも決勝ゴールをマークした10番FW多久島啓人(3年)主将が入試で不在。

また、初戦の後にもけが人が複数、出るなど、苦しい台所事情だった。その中でも「この1週間できる準備をしっかりして、選手が本当にその通りに実行してやってくれた。ここまでやった選手をまず褒めたい」と割田芳輝監督が言うように、各々がやるべきことを徹底し、勝利を掴んだ。

花咲徳栄は今年から山下暁之コーチがスタッフ入り。6月の総体予選では3回戦でプリンス関東2部の西武台を相手に2-3の接戦を演じた。この日も立ち上がりから攻勢を仕掛け、前半6分、レフティのDF豊間根大希(2年)の右CKが直接ゴールネットに吸い込まれて先制した。

その後も花咲徳栄は相手コートに押し込んでゲームを進め、パワフルなプレーが光るエースFWの廣瀬優太(3年)のポストプレーやFW田島息吹(2年)の抜け出しなどからゴールに迫る。

一方、朝霞西は今季、S3リーグで2度対戦し、いずれも敗戦していたが、「私にも、多分彼らにも“やれる”っていうのはあったと思う」(監督)。この日は5バックで守りながらまずは守備を徹底。立ち上がりに先制点を許したが、すぐに気持ちを切り替え、ゲーム主将のDF橋本怜弥(3年)を中心に長身の廣瀬に対しては2枚対応するなど工夫して守り、追加点は与えなかった。

しっかり守りながら、カウンターも狙うと37分だ。朝霞西はFKのこぼれ球をMF安藤峻希(3年)がダイレクトシュート。花咲徳栄はカバーに入っていたDF小島璃恩(3年)が防いだが、ここで得た左CKから38分、朝霞西はショートコーナーを選択すると、DF三上恒平(3年)のクロスにFW杉川優心(2年)がドンピシャのヘディングで合わせて同点ゴールを奪った。

再び引き離したい花咲徳栄は、後半立ち上がりに続けてセットプレーからビッグチャンス。4分、豊間根のFKから廣瀬が折り返し、DF大澤駿人(2年)がヘディングシュート。さらに直後の右CKを田島が頭で合わせる。だが、いずれも朝霞西GK栗原颯希(2年)が好守で防いだ。

朝霞西は苦しい時間が続く中でも、DF森覇斗(3年)がヘディングで跳ね返し、三上が相手の突破に食らいついて、スライディングでマイボールにするなど粘り強い守備。橋本は「本当にもう一個集中を切らせたら絶対に決められちゃうような相手。その中で後ろの4枚は声を掛け合って、しっかりカバーに入ったり、今回はちゃんと最後までやってくれたなと思います」と話す。

1-1のまま突入した延長戦の前半2分、花咲徳栄は廣瀬が強烈なミドルシュートを放ったが、この日再三にわたって好セーブを見せていた栗原が足に当ててセーブ。朝霞西も後半9分にMF近藤快(3年)が右サイドを抉ってクロスを送ったが、花咲徳栄GK廣澤武(3年)が防いだ。

勝負はPK戦に突入。朝霞西は総体で東農大三にPK負けを喫していた。割田監督は「PKの前に言ったのは、もういまストーリーとしては完璧だと。キャプテンもいなくて、けが人もいっぱいいて、インターハイでPK負けしてて、そのリベンジで、ここで最後勝って、勝ち上がるっていうのはストーリーとして完璧だから」と声を掛けたという。PK戦は5人で決着がつかず、サドンデスとなった中で朝霞西が7-6で勝利。選手権では初となる県ベスト16進出を果たした。

前述のように朝霞西は主将の不在や複数のけが人、また、それに伴いシステムの変更等もあった中でピッチ内外でまとまり、100分間与えられたタスクを完遂しての勝利。橋本は「イレギュラーな中でも、チームでちゃんとみんなで守って、最後こうやってPKで勝てたっていうのは、リーグ戦でもあまり勝てていなかった中で1つ成長したところだなと思います」と笑顔を見せた。

歴史を作る16強入りだが、目指すのはもう1つ上の景色。「チームの目標であったベスト8っていうのがいますごい目の前に来ていて。それは絶対にもうここまで来たら叶えるしかないってみんなが思っている。次はキャプテンの多久島くんもいるので、それはもう自分たちの中で何も言い訳することもないので、また全力でやりたいと思います」(橋本)。3回戦の相手はS1の聖望学園と強敵だが、恐れることなく全力で臨み、チームの目標を叶え、また歴史を塗り替える。

石黒登(取材・文)

試合結果

朝霞西 1(7PK6)1 花咲徳栄
1(前半)1
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
7(PK)6