昌平が全国初制覇&県勢51年ぶりの夏タイトル!高円宮杯U15準優勝メンバーたちが決勝でリベンジ 技巧派集団に玉田圭司監督が植え付けた「戦う」メンタリティ

昌平が初制覇&県勢51年ぶりのタイトル! 令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技の決勝が2日、Jヴィレッジスタジアムで行われ、昌平は神村学園(鹿児島)と対戦。3-2で競り勝ち、初優勝、そして県勢として1973年の児玉以来となる夏の日本一に輝いた。

「決勝は本当に気持ちの強い方が勝つ。何が起こるかわからないし、その気持ちの強い方が絶対に勝つことができるし、それは俺たちだっていうことを伝えた中で見事にやってくれましたね」(玉田圭司監督)。2度先行を許すも不屈のメンタルを見せた昌平が悲願の全国制覇を果たした。

昌平と神村学園、どちらも攻撃には一家言を持つチーム同士のファイナルは白熱した。立ち上がりは今大会5試合25得点と圧倒的な攻撃力を見せる神村学園が連続してゴールに迫るシーン。その中で昌平は前半16分、左サイドを崩され、クロスを相手10番に決められて先制を許した。

それでも昌平は自分たちのスタイルを崩さず、しっかりとボールを繋ぎながら好機を待つ。すると36分、U-17日本代表10番MF山口豪太(2年)のクロスに、斜めのランニングでゴール前に走り込んだU-17日本高校選抜候補MF長璃喜(2年)が飛び込んで食らいつき同点とした。

後半29分にはロングスローから混戦を決められて再度勝ち越しを許したが、昌平はその2分後、MF大谷湊斗(3年)主将からボールを預かった長がドリブルを開始。「最初のファーストプレーで意外とドリブルが抜けたので。(あの場面は)シュートを意識したのでシュートを打てるようなドリブルをしました」(長)。単騎で抜け出すと最後は豪快に右足で叩き込んで同点とした。

さらに34分、長の左クロスに合わせたのはFW鄭志錫(3年)。「やっぱり苦しい時に点を取るっていうのは自分の目標でずっとやっているので。ビハインドでも点を取って勢いづけられたらなというのはありました」という昌平のストライカーは味方の縦突破の瞬間にファーサイドにポジションを取ると「相手よりも先に飛ぶことだけを意識して」ヘディングで逆転弾を奪った。

守備では守護神の佐々木智太郎(3年)が立ち上がりの神村学園エースで世代屈指のFW名和田我空(3年)主将の決定機を含む、少なくとも4つのファインセーブで後ろで抜群の存在感を発揮。左SB上原悠都(3年)も持ち味の守備で何度もシュートブロックに入りチームを助けた。

そしてついにその瞬間が。現メンバーの大多数を占めるFCラヴィーダ組は3年前の「高円宮杯 JFA全日本U-15サッカー選手権大会」で一歩届かず準優勝。当時主将を務めた鄭は「3年前、ラヴィーダの時に決勝で負けて死ぬほど悔しくて、日本一になるために昌平に来て、決勝戦で絶対に勝ちたいという気持ちがあった」。その決勝で見事リベンジ、あの日の涙を歓喜に変えた。

技巧派集団に玉田圭司監督が植え付けた「戦う」メンタリティ

「決勝の含めて簡単な試合はひとつもありませんでしたし、そういう中で優勝ももちろん嬉しいんですけど、大会を通して選手たちが1試合ごとに成長している姿を見られることが、それを感じることができて、こっちの方が嬉しいですね」と玉田監督は選手たちの成長に目を細める。

特に2点差を追いつき、PK戦で勝利した準々決勝の桐光学園戦はターニングポイントとなった。

「桐光は大きかったと思う。ただの1勝じゃなかったと思うし、あそこで勝ちきる力、PKになっても自分たちが優位だっていうことを選手たちはずっと言っていたし、その気持ちで勝ち取った勝利で、準決勝4チームで自分たちは一番勢いがあったと思う。その勢いが決勝まで来てくれましたね」。決勝も2度リードを許したが、そのたびに追いつき、最終的に逆転勝利を収めた。

毎年、技術の高い選手を揃え、魅力的なサッカーを展開してきた昌平だが、一方で勝ちきれない面も。観客を魅了しながらも、その繊細な羽では全国の荒波を超えていくことはできなかった。

今年のチームもスタート時はそういった雰囲気もあったかもしれない。だが、4月に就任した玉田監督は選手たちと良い距離感で接しながら、気持ちの面を投げかけるシーンも多く見られた。

習志野時代は本田裕一郎監督のもと、技術を磨いてきた指揮官は「技術、テクニックは僕の中では絶対になきゃいけない」としつつ、「それにプラスαでやっぱりサッカーも変わってきていますし、そういう中で変化に対応するっていうことが選手たちはすごくできていましたね」と話す。

「それ(気持ちの強さ)も本当に大会を通して成長したところで、特に球際であったり、戦う姿勢であったりとか、テクニック、技術だけでは勝てないっていうのは選手たちも感じてくれた中で実行してくれたんじゃないですか」。プロの世界でも活躍してきた指揮官の植え付けたメンタリティが昌平を一段上の「戦う」技巧派集団に押し上げ、就任1年目での日本一達成となった。

石黒登(取材・文)

試合結果

神村学園 2-3 昌平
1(前半)1
1(後半)2