平成29年度埼玉県高校サッカー新人大会 南部支部予選 決勝 南稜 vs 浦和南

平成29年度埼玉県高校サッカー新人大会南部支部予選決勝が6日に与野八王子グラウンドで行われ、南稜高校と浦和南高校が対戦。終盤に一気にスコアが動いた試合は延長、PK戦の末に南稜が浦和南を下して支部優勝を果たした。両校は10日より開幕する県大会に出場する。


ともにここまで失点0。堅守がベースの両校の一戦は最後まで気の抜けない戦いとなった。

両チームともに準決勝からメンバーを入れ替えた中で前半から積極的な姿勢を見せたのは南稜。後ろで回しながら攻撃を展開しようとする浦和南に対し、ハイプレスをかけて高い位置でボールを奪って早いアタックに繋げていく。前半はシュート本数でも浦和南の1本に対し、4本と前からの守備が嵌った南稜が優勢に進める中で0ー0で試合を折り返すこととなった。

後半も果敢な守備でペースを握った南稜だが、なかなか得点に結び付けられずにいると、浦和南は後半25分に投入されたMF窪田亮輔が前線に勢いをもたらす。31分には中盤でボールを奪うと、MF岡田竜哉のスルーパスに窪田がフリーで抜け出して決定機。シュートは惜しくも枠を外れたが、徐々に試合のペースを掴んだ浦和南が終盤にかけて南稜を自陣に押し込んでいく。

するとついに均衡が崩れる。浦和南はゴール右斜め前でフリーキックを獲得すると、DF庄司千暁のクロスに窪田が頭で合わせて先制。この時すでに時計の針は後半39分を迎えていた。

南稜にとって今予選399分目での初失点。それまでほぼ完璧な守備を披露していただけにこの1点は重くのしかかった。「結構みんな下を向いていた」と振り返ったのはMF繪鳩康太。フィジカル勝負が予想されたこの試合では後半31分に投入された2年生アタッカーは、「自分は途中交代なのでここは俺の番」と積極的に前に出ていくとこの姿勢が直後の同点弾を生んだ。

失点からわずか1分後の後半40分。MF長谷川大輝が左サイドを崩すと「自分はあまり入らずにマイナスでもらおうと思った」と繪鳩。長谷川のパスを受けると迷うことなく右足を振り抜いた。強豪校相手では久々というゴールはチームを敗戦の危機から救う大きな1点だった。

その後延長でも決着がつかずPK戦に突入。先に浦和南が1本ストップする中で南稜はビハインドで後攻・浦和南の5人目のキッカーを迎えたが、ここをGK松尾昂星が起死回生のビッグセーブ。すると松尾は8人目のキックもしっかりと読み切って防いで勝負あり。試合後、松尾は「もう本当に嬉しいっていう一言で…何も言えないですね(笑)」。「あそこまで行けたのはみんなが決めてくれたおかげ。サッカーをやっていて良かった」と感極まった様子だった。

それは他の選手にしても同様だ。ハイプレスが嵌ったところはあったものの、浦和南を相手にPK戦も含めれば2度のビハインドを跳ね返しての勝利。最終ラインを支えたキャプテンの堀内慶汰も「もういまは頭が真っ白で(笑)」と激闘を終えたばかりの高揚感を感じさせた。

南稜・須釜久之監督も「もういっぱいいっぱいの中で本当に最後まで選手たちが戦ってくれた」と労った。「うちはもう全員で。それしかない」。ある意味で主役のいないチームは、またある意味で全員が主役でもある。文字通りの全員サッカーで強豪揃いの南部支部を制した。

今週末からは南部1位として県大会に臨む。「2位とはまた違ったモチベーションで臨めると思うので、土曜日に向けて練習の中で上げていけたら」と堀内主将。繪鳩は「実力では劣ると思うが、チームで戦えば勝てなくはない。一丸となって勝ちたいです」とした。強烈な個はいないかもしれないが、個をカバーするチーム力と切り替えの速さで南稜は県大会に挑む。

石黒登(取材・文)

試合結果

南稜 1(7PK6)1 浦和南

0(前半)0
1(後半)1
0(延前)0
0(延後)0
7(PK)6