全国高校サッカー選手権埼玉県2次予選準決勝 昌平 vs 武南

選手権予選準決勝が12日、NACK5スタジアム大宮で行われた。第1試合は3年ぶり2度目の決勝進出を狙う昌平高校と過去14度の大会制覇を誇る武南高校が対戦。試合は2年生MF森田翔の2ゴールを含む大量5得点を奪った昌平が5ー0と完勝し、ファイナルに駒を進めた。

序盤良い入り方を見せたのは武南の方だった。奪ったボールを素早く前線につなげていくと、前半2分にはロングフィードからMF永野駿が落としてMF桜井潤人がミドルシュート。コースを狙ったボールはわずかにゴール右に外れたが、まずひとつ形を作っていった。

また守備においても相手の要注意選手であるMF山下勇希にはMF塩﨑正巳が、エースFWの佐相壱明にはDF井上竜太がしっかりとマンマーク気味について自由にはやらせない。

それでも一瞬の隙をついた昌平が前半11分に先制した。右サイドバックの塩野碧斗のクロスに「1回ニアに飛び込むふりをして」マークを外したという佐相が右足でダイレクト。一度は武南GK深澤颯人に防がれたが、そのこぼれ球を今度は左足で叩き込んだ。「昨年の準決勝は残り15分くらいで入って何もできなかった。そんな悔しさもあったので今日はいつも以上に気持ちを入れて臨んだ」というエースの一撃が決まり、昌平が早い時間帯でリードを奪った。

これでゲームの流れを掌握した昌平はその後、右サイドアタックや後方からのロングボールからゴール前に迫る回数を増やす。前半19分には森田がカットインからエリア内に面白いボールを供給。MF渋屋航平のシュートはゴール上に外れたが、山下がマンツーマンでつかれる中で両サイドの2年生ハーフがインサイドのスペースを取りながら大きなチャンスを作った。

前半23分にはDF石井優輝から佐相に完璧なスルーパス。「自分の動き出しとマッチした」という展開からキーパーとの一対一を迎えるも、シュートはクロスバーに直撃し思わず顏を覆った。その2分後には左サイドの展開からDF堀江貴大がエリア内に侵入、最後はMF古川勇輝が詰めていったが、武南はゴール前で岡野颯が倒れこみながらかき出して追加点を許さない。

その後も最少失点で切り抜けた武南だったが前半33分に失点。昌平は森田、渋屋とつなぐと、身体を張った佐相と入れ替わる形で森田が抜け出す。「左で(渋屋)航平がフリーだったのでそっちにつられるかと思った」と森田。逆方向に一度切り返すとキーパーの位置を見て右足を一閃し、ゴール右隅に突き刺した。さらに勢いに乗る昌平は37分、MF原田虹輝のフリーキックを関根が得意の頭で合わせて3点目。3−0と大きなリードを持って試合を折り返した。

まずは1点を返したい武南は後半、塩﨑に代えてスピードのあるMF鶴田雄大を投入する。すると開始直後には自陣でボールを持った桜井が中盤の密集地帯を個人技で突破してロングパス。左サイドを駆け上がった鶴田のクロスは中央のFW金子海斗には通らなかったが、すぐさま交代の意図を発揮していくとその後も鶴田の縦への仕掛けを生かしながら攻撃を試みる。

しかし次のゴールを奪ったのも昌平。後半9分、ゴール手前でフリーキックを獲得するとキッカーは山下。「逆サイドに巻いて落とすイメージ。そっち側に相手がひとりいてキーパーもいたので、そこの間に落とせたらなと思いながら蹴った」。見事にコースに飛んだボールはクロスバーの下を叩いてゴールに吸い込まれた。前半は厳しいマークに遭う中で守備やスペースを作る動きを意識したという背番号7。その鬱憤を晴らすような1点が決まり4−0とした。

昌平はその1分後にも古川のスルーパスから佐相が決定機を迎えるも、武南GK深澤が至近距離のシュートをビッグセーブ。逆に後半14分には武南にチャンス。金子のポストプレーから永野が狙ったが、昌平GK緑川光希が飛びつきながらワンハンドでかき出して得点は許さない。

その後も後半27分にはエリア前で髙見勇太、佐相と細かいエリアでつないで原田がシュート。31分にはコーナーキックから代わって入ったばかりのMF木下海斗が狙っていく。34分には5点目。原田がダイナミックなドリブルから左にポジションを変えた森田にラストパス。「原田くんがディフェンスを引きつけてくれた。食いついてくると思ったので切り返した」と右に鋭く体重移動すると、今度は身体をひねりながらニアに突き刺して自身2点目とした。

終盤武南は途中出場のMF渡辺瑠太のドリブルから金子、桜井とつないで鶴田がシュートを打つもGK緑川が横っ飛びでセーブ。最後まで桜井を中心に攻める姿勢を見せたが、昌平の固いディフェンス陣を崩すことができず。4冠達成を目指す昌平が5−0で決勝行きを決めた。

昨年はベスト4で正智深谷高校に敗退。「去年はボールを握るというところにフォーカスする中で相手にブロックを作られることが多かった。今年は早い攻撃や奪ってからシンプルに動かしながら前に出ていくという部分は点につながっている」。基本コンセプトは変わらないが、速攻と遅行を使い分けながら相手を追い込める懐の深さが今年のチームにはある。

また右サイドで2戦連続のスタメンとなった新エース候補・森田が躍動した。山下が厳しいマークに遭う中で「勝負だぞ!」と指揮官から送り出されると、良い意味でポジションを崩しながらパスにキープに前線を活性化。「準々決勝の埼玉栄戦ではあまりシュートが打てていなかったので今日は狙っていた」という言葉通り、2本のシュートをそれぞれ枠に突き刺した。

佐相も「周りが見えていて、パスもできてシュートもうまい。うますぎてちょっと腹が立ちますね(笑)」と認める逸材は、入学最初のS1リーグでいきなり出場を果たすなどのエピソードも持っている。FW、トップ下が主戦場だが今夏からはサイドのプレーに挑戦中で、スタメンを勝ち取った準々決勝でも1アシストを飾った。前戦同じく2ゴールを奪った渋屋も含め、2年生サイドハーフの活躍は3年ぶりの選手権予選制覇に向け大きな力となりそうだ。

トップ下の山下も3試合連続ゴールと好調を維持。「ここにきて結構点が取れてきた。次の試合も点にこだわりつつ、チームのためにどれだけ動けるかというのを一番に考えてやっていきたい」。この日先制点をマークした佐相は「決めきるところがあと2本あった」と決定機逸を悔やんだ。今大会では3戦2発と決して悪くはないが「全然物足りない」とピシャリ。「次はハットトリックを狙いつつ、自分のプレーを出していきたい」と決勝での爆発を誓った。

石黒登(取材・文)
椛沢佑一、石黒登(写真)

試合結果

昌平 5-0 武南

3(前半)0
2(後半)0