浦和東が今季未勝利の春日部に競り勝つ! 駒澤大FW松本らOBたちから悔しい想いや伝統を継承 「浦和東としての総合力」で戦い、ひとつずつ上へ
第101回全国高校サッカー選手権県予選の1回戦が9日に行われ、同じくS2Bリーグに身を置く浦和東と春日部の一戦は1-0で浦和東が競り勝った。浦和東は2回戦で浦和西と対戦する。
今季同居するS2B(県2部)では春日部が1勝1分。順位も浦和東が8位、春日部が9位と近い実力伯仲の両者の一戦はどちらに転んでもおかしくない、一進一退の展開で繰り広げられた。
浦和東は前半、前線で精力的に動くエースFWの石川幸稀(3年)やFW本間敬悟(2年)のヘディングの強さを生かし、サイドからのクロスやロングスローからゴールに迫ろうと試みる。
一方、春日部は主将も務めるGK山根煌(3年)がクロスへの対応や1対1、コーチングで存在感。それに牽引されるように、ディフェンスラインも集中して守り、相手に決定機は作らせない。
攻撃では開始1分、MF石井大斗(2年)のシュートが惜しくも右に外れたが、早々に1本チャンス。スコアレスで折り返した後半は10番MF中村蒼弥(3年)が起点となり前へ。15分には石井がタメを作り、スペースに飛び込んだ中村の右足シュートがわずかにゴール左に逸れた。
すると浦和東は後半23分、MF横田壮吾(3年)の右CKをDF山野海(3年)が競り、途中出場のMF富田悠斗(3年)が頭でリターン。最後は石川が詰めて、これが決勝弾となった。
平尾信之監督は「春日部高校は今年力があるし、本当に延長、PKまで覚悟して、厳しいゲームになることはわかっていたんですけど、選手権のトーナメントが決まって、相手が春日部に決まってから、相手に矢印を向けるんじゃなくて、もう1回自分たちに矢印を向けて、今日のピッチの中でもそうですし、ピッチ外でも、浦和東がいままで培ってきた伝統、そういうのをもう1回見直した。OBたちもこの1週間すごい駆けつけてくれて、みんながこいつらに話してくれて。そういうのも含めて、「浦和東高校サッカー部として総合力で勝とう!」と。いろんなOBの力だとか、いままでの先輩が培ってきたものとか、悔し涙とか、そういうのを全部含めて高校サッカー選手権だよと話をして、今日はそういう目に見えない力が働いたじゃないですけど」と話す。
抽選会前に行われた第11節(8月27日)で春日部に0-1で敗戦したが、ここがひとつ契機となった。「春日部に負けて学んだというか、春日部に敗れたところでもう1回、自分たちでやろうと」。1回戦の相手は因縁の春日部に決まったが、相手ではなく自分たちに矢印を向けた。
「相手より走るとか、ヘディングに絶対負けないとか、セカンドを拾うとか、ゴール前で絶対身体張って守る」浦和東らしさを再度追求。また「今日は最高の会場運営しよう」とピッチ外からもしっかり雰囲気作り。「そういう浦和東が大切にしているところをしっかりやろうというところで。そうしたら絶対結果はついてくるっていうことで、今日は臨みました」と平尾監督はいう。
加えて、大会前最後の1週間は連日のようにOBたちが駆けつけた。CBとして高3時には関東大会出場の原動力に、大学でFWに転身し今年8月の総理大臣杯では全国3位に貢献した松本ケンチザンガ(駒沢大3年)、その関東予選で当時2年生守護神として1大会通算7本のPKストップと離れ業を見せたGK川村龍世(拓殖大2年)、昨年関東予選4強入りしたFW豊田春斗(東京国際大1年)らが練習場を訪れ、当時の悔しかった想いとともに浦和東の伝統を継承。そういったひとつひとつを掛け合わせた、まさに「浦和東としての総合力」で今大会は臨んでいる。
豊田やMF紀武瑠(拓殖大1年)ら攻撃陣にタレントがいた昨年のようなアタック力は確かにない。それでも「五角形の戦力図とかよくあるじゃないですか。うちはオール4の子はいないので、みんな3だけど、ひとつだけ5とか、そういう飛び抜けた特徴をうまく集結して戦わないと。でも、今日は僕の起用にうまく答えてくれましたね。みんな自分の特徴をうまく出してくれた」。
主将の左SB若原凜飛(3年)は危険なエリアに食らいつき、最後のところでしっかりとクリア。決勝点に絡んだ途中出場の富田もヘディングという武器を発揮した。そして、それをゴールに結びつけた石川も「一生懸命声を出して、一生懸命走って、決してうまい選手ではないですけど、スピードもある。夏を越えて、浦和東の選手っぽくなってきた」というプレーで仲間を牽引した。
今年はリーグ8位と苦戦しているが、敗れた試合のほとんどは僅差での敗戦。「ラスト1分で点を取られたり、そういう僅差で負けて、すごく悔しい、悲しい想いをして家に帰ることが多かったんです。1年間、僕の指導者人生の中でもすごくそれが今年は多くて、子供たちもそうなんだなと思って。だから今年はもう1試合1試合、みんなで勝って笑って帰ろうと、喜んで帰ろうと」。
僅差をものにできなかった学年は、先輩たちから脈々と受け継がれてきた「浦和東らしさ」「浦和東としての総合力」で戦い、僅差を勝利に結びつけて、ひとつずつトーナメントを勝ち上がる。
石黒登(取材・文)
試合結果
春日部 0-1 浦和東
0(前半)0
0(後半)1