初の年代別代表で受けた衝撃をプラスに。2年目を迎えた武南のNo.10、FW松原史季はさらに「結果を残す」エースへ

2年目を迎えた武南のNo.10、FW松原史季(新2年)は昨年末に初の年代別代表候補入り。そこで大きな刺激をもらい、意識も変わったというアタッカーは成長しながらチームを牽引する。

ジュニアユース年代を過ごした浦和レッズでは主にSBを務め、3年時には高円宮杯で3位になったチームでも主力として活躍した松原は武南進学後、1年時から伝統校の10番を背負った。

普通であれば委縮してしまいそうだが、そこが松原の強心臓。「容姿から目立つ」ことを意識し、番号に加え、ピンクのスパイクを履いて、『俺を見てくれ!』とばかりにプレー。もちろんそこに中身が伴わなければただの目立ちたがりで終わってしまうが、プレーでも小中と積み上げたパス&コントロールを武器に162cmのMFはフィジカルで勝る2学年上の相手にも渡り合った。準決勝で敗れたが、「10番を背負って埼スタのピッチに立てたのは大きかった」と振り返る。

昨夏には「武南から代表に」と大きな展望を話していたが、選手権予選でのプレーぶりが評価され大会後にU-16日本代表候補で年代別代表に初招集。しっかりと有言実行を果たしてみせた。

代表合宿では年代別代表の常連であるFW小田晄平(昌平高)やDF市原吏音(大宮アルディージャU18)といった“埼玉組”の2人が、松原がなじめるように気を配ってくれたと感謝する。

合宿5日目に行われたU-16福島県選抜とのトレーニングマッチでは小田と2トップを組み、ゴールを記録。しかし、結果を残したということ以上に、周囲のレベルの高さを感じたようだ。

「自分の中でジュニアユースとかで積み上げてきたパス&コントロールをはるかに上回ったレベルで代表の選手たちはやっていた。点は取れたんですけど、やっぱりミスとかそういうのが目立ったのでもっと自チームでも意識してやらなくちゃいけないんだなというのは感じられた」

「全員上手かった」という中で特にMF石渡ネルソン(セレッソ大阪U-18)やFW貴田遼河(名古屋グランパスU-18)、FW石井久継(湘南ベルマーレU-18)といった選手には刺激を受けた。

「ネルソンに関しては真ん中の選手ですけど、やっぱり運動量が桁違いなのでどこにでも顔を出しますし、ひとつのリターンのパスを取っても全部正確に出す場所にしっかりと帰ってくるので、やっぱりあそこの落ち着きは参考にしなくちゃいけないと思いました。前の久継と遼河に関してはシュート前のトラップがもう全部足元にビタビタ来る。そういうのはやっぱりストライカーというか、点を取る人間としてシュートだけじゃなくて、その前が大事なんだなというのは選択肢として実感しましたし、やっぱりトラップというのが一番代表で影響を受けました」

また、代表では少し落ち気味のFWとしてプレーしたが、今季から武南でも同じポジションに。「1年の時は足元で受けることが多かった。でも代表で森山(佳郎)さんからやっぱり運動量を増やさないとというのは言われていて、背後に抜けるというか、斜めの動きというのは、まだまだ全然足りないですけど、自分では意識するようになった。トラップのところもいまはまだあまり落ち着きを取り戻せていないというか、試合間が空いてしまってまだ全然収まっていないところはありますけど、そういうひとつひとつの意識というのはだいぶ変わったかなと思います」

ひとりひとりのレベルの高さに衝撃を受けた初の代表合宿ではあったが、「マイナスな感じではなくて、そういうのをいまプラスに変えられている。そこは経験的に良かった」と振り返る。

今年はチームとして全国の舞台への帰還、そして選手権でベスト8に入ることが目標だ。その中で昨年以上にゴールやアシストなど、得点に絡み「自分で結果を残す」という部分を強く求める。

「もう2年。1年でちやほやされるあれじゃない」。『1年生10番』『注目ルーキー』という殻を脱ぎ捨てて、伝統校のエースとして、松原は自身の成長で、そして結果で武南を力強く牽引する。

石黒登(取材・文)