迷いも、悩みも、すべてを断ち切る会心ゴール! 西武台FW松原海斗は心にあった雲を完璧に晴らし最高の状態でファイナルへ
迷いも、悩みも、すべてを断ち切るゴール。西武台FW松原海斗(3年)にとって、準決勝・武南戦で奪ったチーム2点目はただの一発以上の意味を持つ特別なゴールになったのは違いない。
アタッカーは悩んでいた。大会前はシュートが決まらず行ききれない場面も。準々決勝の武蔵越生戦では後半31分に途中出場したが、シュートを1本を打つことの出来ないまま試合を終えた。
昨年の準決勝・武蔵越生戦にもスタメン出場していた松原にとって、今年は準々決勝で実現したこのカードは「やり返してやろう」と強い想いを持って臨んだ試合。それだけにショックは大きく「本当に落ち込んで、サッカーを辞めようとか、そこらへんまで落ちて」しまったという。
それでも立ち直ることが出来たのは支えてくれる人たちの存在。チームの兄貴分であり「サッカー面ではすごく言ってくれるし、私生活のところも優しく接してくれる」という関根雄太コーチからは「しょげずに切り替えろ」「お前なら絶対に出来るから」と、またずっと支えてきてくれた両親に加え、中学校時代の恩師からも「ずっと見てるよ」とラインが入った。「それがすごく嬉しくて、今日は絶対にやってやろうと思っていました」。燻っていたハートに火が付いた。
迎えた準決勝、松原はスタメンでピッチに立つ。守屋保監督から「結果で見せろ」と送り出されたFWは開始直後、エリア右から迷わずに右足を振り抜いてチームファーストシュート。これは枠を捉えることが出来なかったが、この試合に懸ける想いが伝わってくるシュートだった。
立ち上がりからシンプルに相手ゴールを目指す戦いを見せた西武台は前半6分にDF河合陸玖(3年)がヘディングで決めて先制した。そして9分、ついに松原に今大会初ゴールが生まれる。
自陣でボールを奪ったDF安木颯汰(3年)からロングスルーパスが左サイドの松原に入る。「いつもは縦に行って左足」だった中で松原は逃げずにカットインを選択。「1年生の頃からカットインからのシュートというのをもうずっとやっていた。それがやっと試合に出せた」(松原)。内に切り込むと「自分がファーストシュートを打っていたので、シュートの感覚というのは自分が一番持っていると思った」と迷わずコンパクトに右足をスイングし、ゴールネットを揺らした。
迷いも、悩みも、すべて断ち切る一発。松原は「点を決められて本当に良かった。自分の気持ちも振り切ることが出来た」と会心のゴールを振り返る。また、「この大会で成長してくれたら」と親心を見せる守屋監督も「今日は松原の良さが出てくれた」と背番号17のプレーを評価した。
心にあった雲を完璧に晴らし、最高の状態でいざファイナルへ。「ベンチ外の人たちも応援してくれているし、学校の先生とかも応援してくれているので、そこはみんなでひとつになって、また自分のゴールで勝てるようにと思います」。支えてくれる人たちのことを思いながら、彼らの代表としてピッチに立つ自覚を持ちながら、決勝でもチームを勝利に導く会心のゴールを狙う。
石黒登(取材・文)