川口西は後半にFW田中悠真（３年）が２得点。「苦しいゲームになるという話はしていた中でゲームを最後分ける技術であったり、一瞬のスピードというところは発揮できたのかなと思います」と横田純一監督が語ったように、エースが最後の技術や一瞬のスピードで勝負を決めた。

均衡を破ったのは後半12分。「前半１回前を向くシーンがあって、パスに逃げてしまった。横田先生にもドリブルが効くと言われていた」。前を向いた田中は果敢にドリブルを仕掛けて相手ディフェンスを引き剥がす。そして最後は右足で対角に突き刺し、自慢の決定力の高さを示した。

「自分にはほかの選手と違う強い想いがあった」と田中。昨年は学総がなかった中、高円宮杯で県大会に出場。初戦でカムイJrを下したが、２回戦で成立ゼブラ戦に延長戦の末に破れ涙を呑んだ。この代でも４人が経験しているが、田中もそのひとり。先輩たちの想いも背負い、大会がない間も練習に励みながら「絶対にやってやろう！」と思い続けた強い気持ちが結果に繋がった。

そして２点目は「３年間の集大成が出た」と中学３年間の進化を見せるゴールに。これまでも何度もホットラインを繋いできたMF大森拓真（３年）のスルーパスに得意の背後への動き出しで抜け出すと「３年間出来ていなかった」という苦手としていた左足のシュートでゲット。「自分としてもこの大会で成長出来るのかなと感じています」とブレークスルーの予感を漂わせる。

長所とする背後への抜け出しに加え、相手が下がったと見るや足下で受けてチャンスメイクもできる。そして「最後の決定力の部分では非常に強い想いがあります」。どこからでも点が取れるFWレヴァンドフスキを理想としながら、「目標だけじゃなく自分も将来そうなれるように頑張っていきたい」と意識高く臨んでいる。加えてキャプテンシーも高く、指揮官も「常にチームのことを考えて、言葉でも引っ張るし、背中でも引っ張っていってくれる」と大きな信頼を語る。

「個人としては二桁ゴールを狙っていきたい。いろいろスカウティングもされますが、そこに打ち勝つ能力をつけて、自分としても成長していきたいと思います」。もともとの個人能力に加え、大会の中でも成長中のエースがゴールを量産することが出来れば、初タイトルも見えてくる。

石黒登（取材・文）