GK熊倉匠がついに掴み取った「日本一」のタイトル。生まれ育った埼玉で大輪の花咲かす
「自分たちの目標は優勝」。準決勝の激闘を終えてそう話していたGK熊倉匠(レジスタFC→FC東京U-15深川)が決勝の舞台で三度PKをストップしてみせ、ついに日本一に輝いた。
レジスタでは6年時に主将として全日本少年サッカー大会に出場。チームはグループステージ1位で決勝トーナメントへ進んだが、準決勝で柏レイソルに敗れ3位に終わった。中学年代はFC東京U-15深川へ。ここでも再び3年時に全日本ユース(U-15)選手権で決勝まで進んだものの、PK戦の末に敗戦。だからこそ「日本一」という想いは誰よりも強かったかもしれない。
決勝は青森山田の猛攻を浴びる中で2失点したが、相手の武器とするセットプレーや至近距離からのシュートにしっかりと反応。試合は今大会山梨学院にとって3度目のPK戦に突入した。
緊張感のかかる場面。それでも山梨学院が見せたのは笑顔。そこには熊倉がかけた言葉があった。「もう笑っても泣いても最後だし、楽しんでいこう」「別に外してもいいぞ。俺がいるからな」。ここ一番のキャプテンの言葉がチームに最高のリラックスをもたらしたのは想像に難しくない。
互いに1人目が決めた中で2人目に対峙したのはFC東京U-15深川で苦楽をともにしたMF安斎颯馬。「決勝でできて本当に嬉しかったし、やっぱりあいつだけには負けたくないという気持ちで今日は臨んだ。本当に最後の最後まで我慢して、どっち蹴るかなというふうに見ていて、あいつの身体の向きでこっちかなというふうに思った」。これを完璧なタイミングで左に飛んで止めると、相手の4本目のミスを誘い、山梨学院に11年ぶりの選手権タイトルをもたらした。
今年は「日本一のキーパーになる」ことを掲げていた。「やっぱり本当に自分はいままでいろいろな人に育ててもらって、恩返しじゃないですけど、やらなきゃいけないなという部分も感じていた。その中できつい練習だったり、自主練で長くボールを蹴ったり、日本一となるために本当に頑張ってきたので、それが結果として報われたじゃないですけど、本当に良かったんじゃないかなと思います」。積み重ねてきたものが生まれ育った埼玉の地でついに大輪の花を咲かせた。
石黒登(取材・文)