監督からの檄に「見せてやる!」。MF須藤直輝が課題の縦突破から2アシスト。同点弾の後には涙も

アディショナルタイムもすでにほとんどを消化し、1点のビハインド。依然として絶望的な状況の中でトップ下から今期主戦場としてきた左サイドハーフに移ったMF須藤直輝が魅せた。

「監督が俺を左サイドハーフに入れるということは、もう3年間の中でどういうことかというのはわかっていた。縦に仕掛けたり、中に仕掛けたりのドリブルを求められていると思った」。

左サイドはコーチングエリアからもっとも近い位置。藤島崇之の「ラストは魅せろ!」という指示もしっかりと耳に入っていた。「監督からの檄でやってやろうと。本当に縦突破がすごい自分にとっての課題で監督にも「お前、縦突破できないのか!」というのは何回も言われていたので見せてやろうとしたことでああやってファールがもらえた。そこは本当に成長したなと実感しました」。須藤の思いきりの良い突破から昌平は土壇場でフリーキックのチャンスを迎える。

審判からはこれが「ラスト」と言われていたという。「ラストかと思って。でもいままでたくさん練習してきたのを披露しようというか、自信を持って速いボールを入れれば絶対に“こいつ”が決めてくれると思ったので、本当にあれは練習通りでした」。須藤のクロスに合わせたのは「来年は「直輝くんの次は俺だ!」みたいな、そのくらいの強い意志を持ってやりたい」と話していたMF篠田大輝。信頼のホットラインからその後のPK勝利に繋がる劇的同点弾が生まれた。

「(決まった瞬間は)本当に頭が真っ白になって何も考えられなかったですけど、身体がもうスタンドの方に走っていって、気づいたら泣いていました。もう本当に「俺らの選手権は終わりだと思っていて、諦めてはいなかったですけど、心の奥底にはそういう気持ちもあった。そこが一気に晴れたので泣いてしまいました」。

この日はその直前にも中盤でのボールカットから「ちょうど前を向いた時に道が見えた。絶対にシュート(コース)を閉じてくると思った。翼はああいうところのシュートがうまい。シュートを打つふりをしてパスを出して、あれは本当に練習通りできました」とMF篠田翼のゴールを演出。終盤の2アシストでチームの勝利に大きく貢献した。

昨年もゲームキャプテンとしてこのピッチに立った中で今年は162人の部員を率いるキャプテンとしてこの舞台に。「試合に出られない選手たちがたくさんいて、LINEとかでも頑張れとみんなが言ってくれて、たくさんの人が応援してくれているのでここでは負けられない、あいつらのためにも勝たなきゃいけないと思った。いまも泣きそうなんですけど、そういうことを言われちゃうとやっぱりあいつらの顔が浮かんできて…。どうしても勝ちたいという気持ちが2点に繋がったので本当に嬉しかったです」。

そう感慨深そうに語った須藤だが、2回戦に向けてすぐに気を引き締めた。「やっぱり全国の戦いは厳しいというのはみんなわかったと思う。本当に緊張感を持って、この経験を生かして自分たちがうまくいかない時でも修正していかないといけないと思いますし、まだまだ自分たちは良い試合ができる。自分は本当に改善点しかないと思っているので、しっかりみんなで話して2回戦に繋げていきたいと思います」。初戦の難局を乗り越えて、この経験を次に生かしていく。

石黒登(取材・文)