藤島崇之監督、村松明人コーチインタビュー「小見洋太のゲームの『全体像を見る』力」
「昌平の強さを探る」第三回
ここ数年で全国でも強豪校の仲間入りを果たした昌平高校の強さを探る。第三回はU-18日本代表にも選ばれたFW小見洋太についてFC LAVIDA時代から5年間見守ってきた村松明人コーチ、昌平高校・藤島崇之監督に聞いた。※このインタビューは活動自粛前に行われたものです。
世代別代表まで登り詰めた小見洋太。中学年代から見ることができたゲームの「全体像を見る」力
―村松コーチは中学年代から5年間にわたって小見くんを指導されています。村松
:洋太はLAVIDAの時からサッカーの考える力だったり、相手との駆け引きみたいなのはやっぱり良かったと思うんですよね。そういった中で、もちろん足りていない部分だったりというものが高校でだいぶ伸びて、それが僕らも驚きでした。もちろん本人の高い目標だったり、目指すものがあるというので引っ張られたものだと思うんですけど、昌平での伸びっていうのはちょっと予想以上でしたね。
中学年代ではFWをやらせると、どうしても消える時間が多くなってしまうのをちょっと僕らは嫌がっていて、やっぱり常にこいつはゲームから消しちゃダメだとは思ってはいたので、2列目やサイドとか、その辺でゲームをやらせていることの方が多かったです。
―スタイル的な変化については?
村松:いまと大きくは変わってないですね。でも2列目をやっていたので、自分でボールを収めてから発進して行くような感じですかね。ワンツーとかドリブルとか、自分でも突破とかできたので。いまは高いレベルで、それが通用しなくなった中で、だからそこであいつもFWとして生きる道として動き出しとか、いまのスタイルになっていった感じじゃないですかね。動き出しの良さはジュニアユース年代ではあまり見えなかったです。ボールをもらう駆け引きはやっぱりうまかったんですよ。相手と逆に動くとかっていうのはうまかったんですけど、ただどっちかというと自分で仕掛けるタイプでしたね。だから最近も中学年代の洋太を知っている人と話をしても、「あいつあんなだったっけ」「あいつどこやってた」みたいな感じになったので、それくらい変化はあるんですよ。高校でだいぶ変化したんじゃないかなと思います。
―一番変化を感じる部分は?
村松:やっぱりゲームへの影響力はものすごいんじゃないですかね。だからこそいま、絶対外せない選手じゃないですか。そこまでなったというのが、動き出しの量だったり、もちろん運動量の部分もそうだし、守備への貢献度もそうだし、そういう意味ではこれというピンポイント的なところじゃなくて、やっぱり「全体像が見えている」ように思いますね。いま何をするべきだっていうものが見えているから、ああいう感じでゲームから消えないし、ゲームを動かせる力があるんじゃないですかね。そこが大きく変わったように見えます。
―藤島監督にとっての小見くんとのファーストインプレッションは?
藤島:真面目だし、本当にストイックですよ。(トレードマークの)坊主頭も小6のLAVIDAカップ(LAVIDAが毎年夏に開催している4種のイベント。昌平高校U-16が大会準備や審判を務める)で見た時から変わらないです。その時も特徴的な選手という印象でした。
結構、洋太とは(LAVIDA時代から)いろいろと話をしていたんですよ。中学校の時も「何を狙ってたの?」とか、「どんな狙いでシュートを打ったの?」みたいな話をしていたら、わりと明確に言うんですよね。「こう狙ってました」とか「入らなかったけど、こう狙ってました」「こういうふうにタイミングを外してました」みたいな。本当にそういうプレーを言葉でも具現化できるというところもありました。そういう意味では面白い選手だっていう印象がありましたね。
―そういった部分も「全体像が見えている」という部分に繋がりそうです。
藤島:高校1年の最初はトップには入れてないのかな。チームもわりと力はやっぱりこの年代はあったので。でも1年生の時も選手権の予選とかはメンバーに入ってましたし、そういう意味ではやっぱりさっきも言ったようにサッカーの考える力はあると思いますよ。
かといって日本代表に入るイメージはなかったですけどね。最初の頃はやっぱり決めるというところでいうと「お前これを決めないか」という部分は正直なくはなかったです(笑)。
といいながら動き出しの質っていう部分はトレーニングレベルで築き上げて、やっぱりゲームで消えないですからね。消えたゲームはチームとしても良くないゲーム。それが選手権の予選でいう浦和南戦ですよね。あれは完全に消された感はありますけど、あれは洋太のまだまだ課題もありましたし、あれだけラインを下がる相手に対して、もちろんああいうふうに守られるシチュエーションも今後出てくると思うので、そうなった時に彼が次考える部分は出てくるのかなと。話をすれば吸収しようとする部分もありますし、それだけじゃなくて自分でやっぱり発信していく力も多分今後はさらにつくのかなと思います。
―彼の武器となっている動き出しだったりを引き出したのは藤島監督が?
藤島:どうなんだろう。本人でしょあれ、と言いながら言っていたでしょうね。でも例えば、常にラインを取る中で、それが最終ラインを取るのか、中盤のボランチを含めたところのラインを取るのか、いろいろなライン取りっていうところは常に意識していた部分はあると思うので、そこの最終的な部分でいうと、洋太は最終ラインを取りに行くっていうスタイルになりましたね。
リーグ戦とかでもいっぱいオフサイドになっているんですけど、半分くらいギリギリでオフサイドじゃないですからね。映像を止めて見ると「これ全然オフサイドじゃないじゃん」っていうのがいっぱいあります。それくらいもうギリギリの部分で勝負しますね。あとは出し手と受け手の関係なので、そういう部分では今年(小川)優介とかは結構パスをパッと出す感覚で面白いので、楽しみだなと思います。
石黒登(取材・文)