藤島崇之監督インタビュー「今後の昌平が目指す形。”個とグループの融合”」
「昌平の強さを探る」(第二回)
ここ数年で全国でも強豪校の仲間入りを果たした昌平高校の強さを探る。第二回は昌平が新たに見せ始めた「個」の側面についてフィーチャーする。※このインタビューは活動自粛前に行われたものです。
―ベスト8や青森山田を超えていくために見えてきたこと。藤島
:もちろん技術的に劣ってといたかといったら多分そんなこともなく、じゃあ勝負強さってどこで身につけるのといったら、もちろんトレーニングレベルであったり、いろいろな経験値っていう部分もあると思います。
ただこれが合っているかはわからないですけど、本当に「トレーニングレベルでやってきたことをすべて出したら必然的に勝てる」チームを作るっていう状況にはしたいと思ってはいるんです。そういった部分で言うと、さらなる質にこだわるところと、いまある程度できているところをすべてを壊す気はないですけど、ある意味、そこはベースとできるだけの部分にもうちょっと上げていきながら、違うチャレンジもしなきゃいけないかなと思っています。
攻撃的な部分で言うと、もちろん中央の突破、崩しっていうところもそうですけど、やっぱり手をかけずに個で打開しきることも必要。グループにすると、グループにする強みもあるんですけど、結局それだけじゃ点を取りきれないというところもあります。個の打開力とか、個で本当に止められない、そういった存在が出てくれば、またチーム力のアップにも繋がるでしょうし、どっちをフォーカスするかと言ったときには、いままでやっぱりグループで見ていくというシチュエーションが多かったですけど、「個とグループの融合」をさらなる部分でちょっと顕著に見せていかなければいけないかなという部分は思いますね。
―「個」という部分では今回4選手が評価を受けて高校選抜にも選ばれました。
藤島:これもいろいろなものの見方があると思うのですが、じゃあ僕らが評価していた選手が実際どうだったかといったら、例えば小川優介とかはもっと評価されても良かったかなと思う部分もあります。
須藤(直輝)なんかはわりと(強みが)わかりやすい選手。といいながら須藤がものすごくパフォーマンスレベルが高かったかと言ったら、そこまで強烈なインパクトがあったわけではないのかなと思いながら、ただ随所に良さは発揮できたというところの彼の強みはあるかなと思います。
柴(圭汰)は献身的な部分が目に見える選手で、彼なんかも選手権の時に経験しながら伸びてきた選手なので、高校選抜のトレーニングだったり、ゲームも少し見に行きましたけども、その中でもしっかりと自分の良さを発揮できるだけの力はついてきているので、これから楽しみかなと思います。
小見(洋太)は選手権をトータルしたら点は取ってないですけど、彼の存在、動き出しを含めたプレーの部分で相手のマイナス要素を引き出すというか、そういう状況は見えていたので、そういう部分はやっぱり一番良さは出ていたのかなと思います。
大竹(琉生)に関してはもしかしたらうちじゃない方がもっと良さが出るんじゃないかっていうくらい(笑)。変な話クロスの質が高い中で、わりとそれをやめたりとかっていうシチュエーションも多く出ていたのがやっぱりうちの部分なので。だからさっきの今後に繋がるという状況についても考えたら、逆に言えばそういう個性の強みをグループ、チームで全体が理解しあいながらやるチームづくりはもっと必要なのかなと思いますけど。なのでそのあたりは本当に難しいですよね。
―小川くんについては優秀選手には選ばれませんでしたが、プリンスリーグ関東参入戦、選手権と中盤で抜群の存在感を放っていました。
藤島:まぁ小川優介はすごいですよ。本当に。見た目が悪い(166cm、55kgと細身で小柄)っていう言い方は変ですけど、ボールを取られないだけじゃないですからね。現時点でタケ(針谷岳晃/昌平OB、現J2磐田)よりいいんじゃないかなと思います。針谷よりできることは多い。針谷はキックっていう武器があったんですけど、キックを除いたら針谷より運べるし、作れるし、あと奪えるんですよね。キックも自分でやっと自覚したのか結構トレーニングでやっていますね。タケが練習に来ていた時なんかは、優介のお兄ちゃんとタケが同じ中学校で仲が良くて(小川についても)昔から知っているみたいで、いろいろ話をしていましたね。
新人戦は小川優介がまさかあんな中心で声を出してやるとは思っていなかったですが、彼は彼で高校選抜に外れた悔しさもあったと思いますし、そういうのも逆に言えば(反骨精神で)良いプラスの効果になっていると思います。
―そういった「個」を磨き上げながらグループとの融合を図っていく。
藤島:質を上げるっていうのは必然的にやっていかなければいけないところはあります。さっきも言った個の打開力の部分であったり、手っ取り早く個で崩せればいいなと思いながら、グループの良さ、サッカーのスタイル的な部分の良さも、自分たちがただ楽しければいいっていうものじゃないですけど、楽しむ環境も作っていかなければいけないと思います。このサッカーで勝つっていうところって、いままでは難しいとされてましたけど、今年度の選手権では結局そういうチームがフィーチャーされた。そういう意味ではまたさらに磨きをかけられる状況だと思います。
石黒登(取材・文)