北部高校初!成徳深谷グラウンドが人工芝にリニューアル

一昨年は新人戦と関東予選を制して県内2冠を達成した成徳深谷のグラウンドが1月末より全面人工芝にリニューアル改修された。北部の高校では自前の人工芝グラウンドは初となる。

北部で初の自前人工芝Gが完成した成徳深谷。レベルアップとともに「繋がる」ツールに

今回敷設された人工芝は世界シェアNo.1のグリーンフィールド社製のもので、スペイン1部のバレンシアやJリーグでも浦和レッズやFC東京も使用している最新鋭のもの。また、これに併せてライトも全機LEDのものに刷新された。ピッチサイズは105×60メートルと幅が若干足りず公式戦等は行えないものの(公式戦規格は105×68メートル)、練習をするには十分すぎる環境。為谷洋介監督は「間違いなくモチベーションは上がった。水捌けも抜群に良い」と語る。

ピッチを管理するグラウンド係のリーダーを務める高橋航大は「いままでは弾んだりした中で芝になったことでスムーズにトラップすることができるようになった。キックも芝だと良い回転のボールが蹴りやすい。率直に楽しいです」と変化を実感しながらも楽しんでいる様子。

人工芝化を知って入ってきた1年生の代のキャプテン齋藤拓麻が「人工芝になったというところでみんなの意識も変わってきた。最高のピッチで練習できるので、チーム全体でもっとスキルアップしていきたい」というようにモチベーションアップ、練習の張りにも繋がっている。ちなみに改修後は練習後の自主練が「10倍くらい増えた」(大野剛志コーチ)ということだ。

ピッチ内には青いラインで少年用のコートも描かれていて、4月以降は要望があれば解放していく予定。ジュニアユースの県リーグなどではすでに使用されており、多くの問い合わせがあるという。また取材日には2冠メンバーの成澤圭悟、堀井皓士郎のCBコンビが激励に現れ、選手とともに芝の感触を楽しんでいた。そのほかのOBも日毎ごとに訪れているという。レベルアップに加え、成徳深谷の人工芝は様々な人が「繋がる」ひとつのツールになっているようだ。

成徳深谷GK星野颯汰はこのピッチで成長して先輩キーパーとの約束を果たす

副主将を務めるGK星野颯汰にとってこのグラウンドでの記憶は先輩キーパーとの思い出だ。

星野が1年生の時、成徳深谷の絶対的な守護神として君臨していたのが2学年上の神尾龍汰だ。小柄ながらも広い守備範囲や狙ったところにズバッと飛ぶ正確なキックを持っていた先輩キーパーは新人戦、関東予選で埼玉2冠の原動力に。選手権でも初のベスト4入りに貢献した。

一緒にいることも多かったという神尾からは武器のピンポイントキックのほかにもキーパーとしての様々なことを学んだ。「練習終わりや昼休みにこのピッチで一緒にキックの練習とかをしていた。いまの自分が成長できたのは神尾さんのおかげ」と先輩GKとの思い出を振り返る。

そして迎えた一昨年の選手権予選。成徳深谷は西武台、市立浦和を下し、同大会初のベスト4に進んだが、準決勝でその後優勝することになる浦和南に延長戦の末に敗れ、涙を呑んだ。

「ベスト4で負けた時に神尾さんが自分にキーパーコーチの菅井(英司)さんを全国に連れて行ってくれと想いを託してくれた。コーチが人工芝で良いトレーニングを考えてくれていて、毎日質の高い練習ができているので、仲間と競争しながら全国に行きたいと思っています」。

その約束を叶えるためにこのグラウンドで技を磨く。人工芝になり「楽しくも気持ちよく、思い切り飛ぶことができている」と星野。「地面の硬さとかは言い訳にはならない。プレーの幅もどんどん広げていかないといけない」とさらにひとつひとつのプレーに気を引き締めて練習に取り組んでいる中で「土ではできないプレーがいま人工芝でたくさんできている」という。

この環境を与えてくれた様々な人に「日々感謝しながらプレーしている」というキーパーは「オフザピッチ=オンザピッチっていうクレド(信条)というのがこのチームにはあって、この人工芝にふさわしいプレーヤーにならなきゃいけない。オフの面でも自分が中心となって引っ張っていけるような存在になれれば」と成徳の精神的支柱となることを誓う。最高の環境で技術を磨きつつ、「埼玉県で一番でかい声」で力強くチームを牽引し、先輩との約束を果たす。

石黒登(取材・文)