昌平FW鄭志錫、昨年は県大会で活躍も本大会は出場時間「0」… 悔しさを糧に「1日1日を大切に日々成長できた」2年生FWが初の選手権で成長示す2G1A

「去年は1秒も出られなくて、本当に悔しくて、この選手権に出るために1年間照準を合わせてきました」。昨年の悔しさを糧に成長してきた2年生FWが初の選手権の舞台でのそれを示す活躍。FW鄭志錫(2年)は1回戦の奈良育英(奈良)戦で2ゴール1アシストと結果を残した。

「やっぱりまずは点を取れたことが嬉しくて。昌平は良いフォワードがいっぱいいる中で、自分も試合に出た時は点を決めるっていうことを一番の目標にしていたので本当に良かったです」

この日は1.5列目気味にポジションを取り、FW小田晄平(3年)と縦関係の2トップでスタート。「村松(明人)監督がトップ下っぽい選手じゃなくて、フォワードの自分を使ってくれた意図はよりゴールに行くっていう指示も来ていましたし、自分を使ってくれるということはボールに関わるというのもそうですけど、一番はやっぱりゴールに向かうっていうところだと思う」。持ち味のボールキープや守備的なタスクをこなしながらも、ゴールに向かう姿勢を見せていく。

すると前半11分、MF土谷飛雅(3年)の縦パスに抜け出すと、「シュートもできたんですけど、やっぱり勝つことが大事なので、勝つためにどっちが可能性が高いかなと考えて、晄平がフリーだったので出すだけでした」。キーパーを十分に引きつけてのパスで小田の得点をアシストした。

36分には自らの全国初弾が生まれた。MF長準喜(3年)が左サイドで果敢に仕掛けてシュート。これはキーパーに弾かれたが、「詰めることをずっと意識してましたし、準喜が打つなというタイミングで自分も来そうっていう感じがしたので」と点取り屋らしい本能で詰めて奪った。

後半も精力的にプレー。21分にはFW工藤聖太郎(3年)が競って落としたボールに抜け出す。「トラップした時にキーパーを見る余裕があった。ちょっとキーパーが片方に寄っていたのであとはちょっとチップ気味で流す感じで、リラックスして打てた」。この「リラックス」というキーワードは今季スペシャルコーチとして就任した元日本代表FW玉田圭司コーチから練習の際に徹底して言われているという言葉。力むことなく、冷静に流し込んでこの日2点目とした。

またゴール以外の部分でも球際など試合を通じて戦う姿勢を発揮。「やっぱりその魂の部分は一番負けたくないですし、その戦っている姿勢を毎試合毎試合自分が出ている試合は相手にもそうですけど、自分が戦うことでチームメイトを奮い立たせられればいいと思っているので、魂の部分は一番意識しています」というFWは24分の交代まで魂のこもったプレーを見せ続けた。

昨年は県予選準々決勝の立教新座戦で2ゴールを奪うなど、1トップの一番手候補として活躍。優秀選手にも選出され、1年生での高校選抜入りを目指したいと話していた本大会での躍動も期待された。しかし、迎えた本大会では2回戦、3回戦でベンチ入りするも出場時間は「0」。

「去年は1秒も出られなくて、本当にめちゃくちゃ悔しくて…、この選手権に出るために1年間照準を合わせてきましたし、そのために1日1日を無駄にしないようにと思って、本当に1日1日を大切に、自分としても日々成長できた実感もあるので、頑張ってきて良かったなと思います」

その舞台でチーム唯一の複数得点となる2発を奪うなど、1年間の成長を示して躍動した2年生FWは「本当にこの舞台に立てたことは自分にも財産になりますけど、やっぱりまだ日本一という目標は叶えられていないので、次の試合も絶対に勝ちます」と力強く宣言。チームとして悲願の日本一に向かうために、先輩たちと長い冬を過ごすために次戦もゴールをこじ開ける。

石黒登(取材・文)