「小さい頃から憧れたピッチ」で成長した姿を見せる。成徳深谷の守護神・木村航大（３年）は、かつて在籍したチームのホームグラウンドである埼玉スタジアム2002に準決勝で凱旋する。

木村はジュニア、ジュニアユースと浦和レッズの下部組織の出身だ。木村が中２の時に成徳深谷は新人戦、関東大会予選を制して県内２冠を達成。インターハイ予選、選手権予選でも４強入りした。その姿を見て、「自分もここで上を目指したい」と思い、北部の雄への入学を選んだ。

３年生となった今年はキャプテンに就任。「やばいなと思っても今年は木村航大がいる」と為谷洋介監督も絶大な信頼を置く。またプレー外でも、同じく昨年から主力のDF増子颯竜（３年）とともにチームを牽引。「コーチが試合に選手として入っているような感じ」と指揮官も舌を巻く。インターハイ予選では木村の好セーブも光り、正智深谷や西武台を下し準優勝を果たした。

そして悲願の全国を目指す今選手権でもその存在感が光る。関東、インハイに続く、３大会連続の４強入りがかかった準々決勝の狭山ヶ丘戦では１－０で迎えた後半７分、味方のパスミスから生まれたピンチで恐れず前に出て１対１を防ぎ、大きくガッツポーズ。また、終盤の攻勢に対しても「ミスをしても味方がカバーしてくれる。自分はどんどんチャレンジしようという思いを持っていた」とクロスにもどんどんチャレンジし、しっかりとクリーンシートで切って抑えた。

準決勝の会場はかつて所属した浦和レッズのトップチームが本拠地とする埼玉スタジアムだ。

「もう本当に小さい頃からの憧れのピッチでもありますし、いまでも埼スタに応援に行きますし、やっぱりあの舞台でできるっていうのはすごい特別なこと。駒場、Nackとはまた違う雰囲気があって、緊張する部分もあるかもしれないんですけど、平常心で、目の前のゲームをするだけ。埼スタで満足じゃなくて、埼スタで勝って、次の決勝で昌平にリベンジしたいので、決勝でまたリベンジできるように、いつも通りやっていこうかなって、声かけていこうかなと思います」。

心のアイドルは浦和レッズGK鈴木彩艶だ。U-15年代から各世代の日本代表に名を連ね、今年７月にはA代表デビューも果たしたアカデミーの先輩とはジュニア時代の数年、そしてジュニアユースでは鈴木が中３の時の中１として、ほぼ毎日一緒に練習し、その背中を追ってきた。

「ザイオンくんは、とにかく意識が高くて、いつも一番最初にグラウンドに来て準備しているし、やっぱり真面目で、うまいのはもちろんですし、向上心がすごい。自分も目指していきたい」。

鈴木も立った埼スタのピッチで成長した姿を見せて、まずは成徳深谷を初のファイナルへ導く。

石黒登（取材・文）