今夏ボランチからコンバート 大事な場面での怪我に泣いたこの2年、花咲徳栄CB大矢静佳は今度こそピッチで最高の瞬間を目指す

大事なところでの怪我に泣いたこの2年、それでも今度こそはピッチの上で仲間たちとともに最高の瞬間を迎える――。花咲徳栄DF大矢静佳(3年)はそんな未来を思い描いている。

長身を生かしたヘディングとカバーリングを得意とする大矢は、昨年の総体予選決勝を前に前十字靭帯を断裂。チームは総体での悔しさをバネに選手権予選を制覇したが、大矢はそこにいることが出来なかった。約半年間のリハビリを経て、3月のめぬまカップで久しぶりに実戦復帰。今年は手嶋友那(3年)とのダブルキャプテン体制でチームを牽引していくことが期待された。

そんな大矢にとって10番を背負って臨んだ今年の総体予選は「1年越しのリベンジ」の場になるはずだった。だが、準決勝で右目の上を切り、9針を縫う怪我。決勝はまだ抜糸も終わっていなかった中で後半途中からスクランブル出場したが、チームを勝利に導くことが出来なかった。

総体後にはある決断を下す。それがボランチからCBへのコンバート。もともと中学校年代を過ごしたCANA CRAVO FC(現・INAC千葉CRAVOFC)ではCBをしており、再転向の形。「ボランチとは意識することやポジショニングも違ったので難しい部分は合ったんですけど、やっぱりCBとして、チームの最終ラインとして、やることになった時には責任感も伴ってきた」。

皇后杯予選ではCBとしてクラブチームなど、県のトップレベルとしのぎを削り、「いまの自分に足りないところが浮き彫りになったり、いままで見えなかった課題やうまく出来たところも自分の中で浮き上がってきた」。カバーリングの意識はあった中で身体がついてこなかった場面や相手FWが落ちた際の対応など、やるべきことが見つかり「やっぱりいつも考えてプレーしないといけない」と痛感。この夏はそんな課題をひとつずつ潰しながら自身の成長に繋げてきた。

ラウンド16の埼玉平成戦では、そこまで攻められる場面はなかったものの、CBでコンビを組む橋本琴音(2年)と常にコミュニケーションを取りながら後方をケア。末貴光監督は「CBとして少しずつ風格も出てきた」としつつ、「本当の評価が試されるのはここから」と期待した。

「去年のインターハイ決勝前も全十字を切っちゃって悔しい想いをしていますし、今回も目の上を切っちゃってやっぱりいつも決勝前で出られずやりきれない気持ちがあった。去年は出場出来なかった選手権を最後まで、やっぱり県決勝で終わらずに関東、全国と繋げていきたい」。

まずは怪我無く、勝ち進むこと。そして今度こそ、その瞬間を仲間たちとピッチで喜び合う。

石黒登(取材・文)