警戒の中でも後半に2発! 昌平の2年生10番、FW新垣杏奈に指揮官も「肝が据わってきた」
HTに外からの声を取り入れ2得点。昌平FW新垣杏奈(2年)は「(前半は)自分的にも感情が焦りすぎて、周りが見れていないというのもあった。(ハーフタイムに)ベンチメンバーも含めて、いままでの自分と何が違ったのかを聞き出して、後半でそれを修正出来た」と振り返る。
前半から警戒を受ける中で相手DFを背負いながら、昌平のアタックを引き出そうとしていた新垣だが、焦りからか背後の敵が見れずにターンで被る場面も。また、味方との距離感もいつものようにうまくコントロール出来ず、持ち味を存分に引き出せているとは言い難い状況だった。
芳賀大祐監督も「狙われて、狙われてというのはわかっていましたけど、前半は正直良くなかった」という。交代という選択肢もあったが、指揮官は「でもそこを掻い潜らせる力、もし彼女がこの先大学とかもう一個上を目指すんだったら、あの中でやっていかなきゃいけないし、力を身につけさせないといけない。あの中で正確に止める、見る、運ぶとか、判断するという力をつけるために代えちゃいけないなと思っていました」と2年生FWの今後を見据え続行を決断した。
後半は「自分たち目線からじゃわからないことを見てくれて、それを聞き出せたことが一番良かった」とベンチからの声を取り入れながらプレー。特に警戒の中でも「見る」能力を発揮する。
すると後半10分だ。広い視野を持ちながら、相手がサイドに釣られた一瞬の隙を突き中へ。そして混戦の中で受けても冷静だった。「はじめ打とうと思ったんですけど、今日は相手のキーパーがすごくうまくて、止められていたので、後半に入る前に芳賀先生から「タイミングを外せ」というのを言われていた」。右から来る相手をダブルタッチで交わしながら、GKのタイミングを外すと最後は右足で流し込み、チームに欲しかった先制点をもたらす。さらに1点を加えた27分にはFW金澤道(1年)が右サイドを突破すると、相手がニアサイドに寄ったのを見極めて「もう一個外に」回り込み、ジャンプボレーでゲット。この日2点目を決め、勝利を決定づけた。
本人は「自分だけの得点じゃ全然なくて、みんなが動いてくれたからこそ相手も動いて、自分が出来るプレー幅とかスペースとか、そういう環境を作ってくれたのが一番大きい」と仲間たちに感謝していたが、広い視野を持って最後得点スペースに入っていったのは新垣の力だ。芳賀監督も「(新垣は)僕から逃げないというか、いつも向き合ってくれる。HTも結構厳しいことを言いましたけど、そこでしっかり取れるというのはメンタルもそうですけど、肝も据わってきているのかなと。あれだけのプレッシャーの中でやるんだから肝が据わっていないと出来ない。タフな選手になってきたし、頼もしく見えました」と今季から「10」を与えるFWの成長を認めた。
新垣は昨年、「1年生のスーパーエースに」という想いを持って臨んだ選手権予選で1回戦から7得点を奪い大暴れするなど、ゴールゲッターとして活躍し、チームのベスト8入りに貢献した。
エースナンバーを背負う今年もその気持ちを心に持ちながら、チームを盛り上げていけるような選手になってタイトルへー。「もちろん点を取る選手はゴール前まで自分で持って行ける技術とか、そういうのも必要ですけど、後半になるにつれてみんな攻め疲れしてきて、きつい場面、危ない場面で、もっとチームに鼓舞出来るような選手になっていきたい」。指揮官も「肝が据わってきた」と話す新10番が、結果で、姿勢でチームを引っ張り、この夏初タイトルを目指す。
石黒登(取材・文)