全国高等学校総合体育大会 埼玉県予選2回戦 浦和南 vs 浦和学院
全国高校総体・埼玉県予選2回戦。浦和南高校会場第1試合は浦和南高校と浦和学院高校が対戦。序盤から激しいボールの奪い合いとなる中で、後半26分にFW齋藤雅之が値千金のゴールを決めた浦和学院が1ー0で浦和南を下して3回戦進出を決めた。
昨年の選手権予選準優勝校の浦和南と先月特別指定選手としてFC東京に加入、すでにJ3デビューも果たしたFW田中和樹を擁する浦和学院の一戦。「剛」の浦和南と「柔」の浦和学院。2回戦屈指の好カードは序盤から迫力ある攻撃の応酬となった。
開始から良い入りを見せたのは浦和南。前半6分にはDF山口翔太のロングスローからFW直野諒太がヘディングシュート。その後も16分までに次々とロングスローを放っていくと、ターゲットの9番・田沼俊輔のポストプレーから得点に迫っていく。
対する浦和学院は古澤亮平、中里竜也のセンターバックコンビを中心としたディフェンスラインでこれを跳ね返し続けると、給水タイム明けからチャンスを作る。
「ミーティングで相手が片方に寄ると話していた。サイドに展開しながら前にいくことを意識した」というボランチの安居海渡。左右に散らしながら流れを生むと、前半22分には田中が左サイドを駆け上がってチャンスを演出。続く23分には1回戦では温存されたというMF小船岳清がワンツーから抜け出してシュートを狙っていく。これは浦和南GK桒原丞の好守に遭いゴールとはならなかったが、浦和学院がゲームの流れを掌握していく。
前半38分にはビッグチャンス。浦和南のセットプレーからのセカンドボールを田中が身体の強さを見せて奪取。すぐさま速攻を開始すると一人二人と交わして相手ゴールエリアに侵入していく。最後は齋藤が狙っていったが、シュートは惜しくもゴールポストをかすめ得点とはならず。それでも浦和学院が大きな流れを持って前半を折り返した。
勢いに乗る浦和学院は後半も攻勢に出る。4分、逆サイドの攻撃が流れて左サイドのMF信太英駿がクロス。MF森氷河がバックヘッドはゴールを割ったが、これは直前のプレーがオフサイドとの判定でノーゴールに。8分には中盤で田中がインターセプト、力強いドリブルで前に運ぶとスルーパスから小船がシュートを放つもクロスバーに嫌われる。
浦和南は直野を起点に打開を図ろうとするが、「昨日出ていない分、みんなより体力があった。自分がやらないと」と奮起していたという小船が運動量高く中盤でプレス。ディフェンスも外に外に誘い出しながら複数で囲い込むなどしてチャンスは作らせない。
すると守備陣の奮闘に攻撃陣が応えた。後半26分、田中が右サイドを持ち込んでターンすると信太とつないで齋藤にスルーパスが通る。「英駿(信太)からボールをもらった時にもうシュートを打とうと考えていた。思いっきり振り抜きました」と齋藤。右足のシュートはディフェンダーに当たってコースを変えながらゴールに吸い込まれた。
ゴール後はすぐに応援団の方に駆け出した。「仲間も勝利を信じてくれている。仲間のためにプレーした」という背番号11は仲間たちにもみくちゃにされながら祝福を受けた。
その後、退場者を出した浦和学院に対し、浦和南が最後の力を振り絞って反撃に出る。アディショナルタイムには右コーナーキックからの混戦のこぼれ球にDF加藤健也が左足を振り抜く。シュートは枠を捉えていたが、浦和学院GK大橋裕史が好反応を見せてこれをセーブ。終了の笛とともにコーチ陣やマネージャーを含め全員が立ち上がり喜びを分かち合った。
4月の浦和カップでも試合を追うごとに成長していったチーム。この一戦の中でも大きな成長を見せて強豪・浦和南を下した。
「素晴らしいの一言」と森山泰行監督。「今日は選手たちが仲間のために無欲になって走ってくれた。小手先だけじゃないハートの部分に期待していたが、今日はきっかけを作ってくれたんじゃないかと思う」と選手たちを讃えた。
エースの田中もプロのレベルを経験することで急成長中。「スピードは通用すると思ったが、止める蹴るの技術が全然違う。そういうところはまだまだだなと思いました」と快速ストライカー。この日はゴールこそなかったものの、声かけや守備の部分でもチームに貢献した。「様々な経験の中で子供のサッカーから大人になりつつある」と監督もその成長を語る。
コンビを組む齋藤はヴェルディ小山の同級生。中学生時代から2トップを組んできた。当然コンビネーションはバッチリだ。「力強いドリブルとシュート」を持つ田中、「素早い動きと運動量」が特徴の齋藤。この2人は今大会の屈指の2トップになれる可能性を秘めている。
他にも好選手が揃う今年の浦和学院。狙うはもちろん「埼玉のてっぺん」(齋藤)だ。
聖望学園高校会場で行われる17日の3回戦ではふじみ野高校と対戦する。
石黒登(取材・文)
試合結果
浦和南 0-1 浦和学院
0(前半)0
0(後半)1