第99回全国高校サッカー選手権大会1回戦 昌平 vs 高川学園
「ヒーローになるんだと言い聞かせていた」。MF篠田大輝が2年連続AT弾でチームを救う。直前の弟・翼の追撃弾も刺激に
今年も土壇場でチームを救ったのはこの男だった。昌平は1-2で迎えたラストワンプレー、MF須藤直輝のフリーキックを途中出場のMF篠田大輝がドンピシャのヘディングで合わせて同点に。PK戦は9人目まで及んだ中で最後はMF小川優介が決めて逆転で1回戦勝利を掴んだ。
この日は後半26分に途中出場。「交代する前から自分はこの試合でヒーローになるんだと言い聞かせていた」という。その中で「チームを救ってやるんだという気持ちが最後頭が勝手に触ってというのに繋がった。自分の強い気持ちが出たゴールだったと思います」と得点を振り返った。
また、ゴールシーンでは思い切った判断もあった。「自分はもともとCBが競りに行くところのガード、相手のマーク外しだったんですけど、あの時はそれを無視して自分が点を取りたいなと思った」とまさかの戦術無視。それでもその判断がラストの劇的なゴールを生むことになった。
「(入った瞬間は)本当に決めちゃったみたいな。ラストプレーというのはわかっていて、これを外したらみんなとやるのも最後なんだなと。でもここで俺が決めたらもっとできる。強く念じるじゃないですけど、俺のところに来いという気持ちで、もうゴールしか頭になかったです」。
加えてその直前にはこちらも途中出場から弟の翼が追撃弾を奪っていたのも刺激に。「翼が入ってきた時に俺らが今日は入れてやるぞと声をかけた。翼が決めたら次は俺でしょみたいな感じもあった」。公式戦での揃い踏みは初。それをこの舞台で決めるのだから“持っている”兄弟だ。
昨年も3回戦の國學院久我山戦で途中出場するとアディショナルタイムの劇的決勝弾でヒーローに。そして今年もアディショナルのゴールでチームを救った。「去年もいまも決められたのは自分でもよくわからないですけど、練習の時からずっとゴールというのは意識していますし、練習でやってきたことは絶対に試合でもできる。そういう積み重ねが出たのかなと思います」。
今年は選手権後の新人戦で9番をつけて3試合4ゴールで優勝に貢献したが、大会後に左足の第五中足骨にボルトを入れる手術を行い、そこから長期離脱を強いられることとなった。6月に一度は練習復帰したものの、それから1か月ほどで違和感が出て再度離脱。結局、完全復帰は夏休みの終わりまで待たなければならなかった。チームではその間に同じ2年生のMF平原隆暉や1年生MF荒井悠汰が台頭。復帰後もなかなかスタメンを取り戻すことができなかった。
それでも練習では一切腐ることはなかった。その姿に藤島崇之監督も「絶対的に不貞腐れるとかはまったくないですし、本当に人間としても良い。出たら絶対に結果を出すという意識は誰よりも強いのかなと思います」と語っていた。スタメンで出られず、悔しい気持ちがないわけではない。それでもこの大舞台での劇的ゴールはそんな篠田のひたむきさが引き寄せたゴールだった。
「全国大会の厳しい戦いの中で疲労であったり、身体に故障を抱えたりする選手が必ず出てくる。その時のためにいつでも出られるように準備していますし、また点を取って自分がヒーローになるくらいの気持ちを持って、どんどん勝ち進んで、日本一までいきたいと思います」。
石黒登(取材・文)
試合結果
昌平 2(8PK7)2 高川学園
0(前半)1
2(後半)1
8(PK)7