第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 決勝トーナメント2回戦 熊谷工業 vs 浦和学院

選手権予選2次トーナメント2回戦。熊谷工業は1-0で浦和学院を下し、3回戦に進出した。

前半から地力で勝る浦和学院が押し込む形で展開。DF田内利樹を中心にディフェンスラインから組み立て、そこからボランチが機を見て楔のパスを打ち込みながらサイドから攻撃を繰り出していく。14分にはMF宮崎颯太のクロスからMF坂田疾風がヘディングでゴールに迫った。

しかし公式記録による浦和学院の前半のシュートは0本。熊谷工業はボールを持たれながらも相手の攻撃のテンポが上がる縦パスをしっかりとケア。最後の部分では守備の2枚看板である玉江心太郎、飯田隼のCBコンビが中心となり身体を当ててフリーの状態は作らせなかった。

また、コンパクトな陣形から中盤でボールを引っかけ、ショートパスを繋いで攻撃に出る場面もあった。22分にはビッグチャンス。相手のクリアに対し中盤が寄せると跳ね返ったボールが前線のFW玉垣迅のもとへ。決定的な場面だったが、ここは浦和学院GK浅賀琉斗に防がれた。

後半はさらに浦和学院が攻撃の圧を強めてきた中でキャプテンの玉江を中心に粘り強く守ると、引水を前についにゲームが動く。熊谷工業はリスタートからの展開からFW森岡拓巳がドリブルで運び、左サイドのMF戸塚万尋のクロスに飛び込んだのは玉垣。「前半外していたので絶対にここは決めてやろうと思っていた」という2年生FWの一発で先制することに成功する。

その後も攻撃の枚数を増やしてきた相手に対しても、前半同様高い集中力を保って守り抜いた熊谷工業。後半アディショナルタイムにはセットプレーから2次、3次攻撃と迫られたが、飯田がライン上で決死のクリアを見せると直後に笛。北部支部1部所属の熊谷工業がS1(県1部)リーグ所属の浦和学院に対してジャイアントキリングを演じて、ベスト16進出を果たした。

大会屈指の番狂わせを演じた熊谷工業。堅守を牽引した玉江心太郎、飯田隼のCBコンビ

大会屈指の番狂わせといっていいだろう。支部所属チームによるS1食い。もちろんゲームに関わった全員の頑張りもあった中で、存在感を見せたのが玉江心太郎、飯田隼のCBコンビだ。

前半から多くの時間でボールを握られた中で「最後のところをしっかりと詰めていこうというスタンスでやっていました」と玉江。相手の縦パスを警戒しながらも最後の部分でしっかりと身体を寄せ、クロスもすべて跳ね返すなど前半は押し込まれる中でシュート0本に押さえた。

後半は相手がさらに攻撃の圧を強めてきた中で、キャプテンの玉江はこの3年間で最も成長したという「チームをまとめる力」や「声出し」で集中力が切れないようにチームを鼓舞。

中盤以降は相手がパワープレーに出たが、相方の玉江も「100%勝つ」と信頼を寄せる飯田が“跳ね返す力”を見せる。「空中戦には自信がある。県の上位を相手にどれくらい通用するのかなというのはあったが、とりあえず自分自身は負ける気がしなかったので、どんな相手でもやってやろうという気持ちでした」と飯田。ロングボールやクロスに関してはほぼ無敗だった。

終盤にはセットプレーから2次、3次と連続して攻撃を受けた中でゴールラインを割りそうになったシュートを飯田が決死のクリア。「自分でもあそこはびっくりしました」としながら「キーパーも出ていたのでとりあえずゴールを守ろうという意識だけだった。もう足がもげてもいいと思って出したらそこに当たった。本当にぎりぎりでした」。もしあそこで決められていれば追いついた側が俄然有利となっていただけに、チームを助けたファインプレーとなった。

終了のホイッスルと同時に倒れ込んだ飯田は顔を覆いながらしばらく動けず。「本当に粘りに粘った勝利だったと思います」という言葉には、熱戦を戦い抜いた自信と誇りを感じさせた。

守備の要としてだけでなく、チームの中心でもあるCBコンビ。飯田は「やっぱり俺と玉江がどれだけチームを引っ張れるかがこのチームのポイントになる。自分でもそこは自信があるので失点してもめげずに顔を上げてチームを鼓舞していきたいと思っています」と気概を見せる。

次戦は強豪・聖望学園との対戦。2戦連続のジャイアントキリングに期待がかかる。「今年は選手権ベスト8を目標にやってきて、それがもう手の届きそうなところにある。次もしっかり守ってカウンターというところで、最後の最後の締めをしっかりとやっていきたい」と飯田。玉江も「スライドであったり、マークの受け渡し、シュートを打たせない、そういう決めごとをしっかりと徹底してやれば一泡吹かせられるかと思います」と強豪連破に意欲を見せた。

石黒登(取材・文)

試合結果

熊谷工業 1-0 浦和学院
0(前半)0
1(後半)0