第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 決勝トーナメント2回戦 大宮南 vs 浦和西
選手権予選2次トーナメント2回戦。浦和西は1-0で大宮南を下し、3回戦に進出した。
前半からボールを持って進めたのは浦和西だ。MF栗原大輔を起点にショートパスを繋ぎながら攻撃を展開。しかし「あれで点が取れていれば楽なのに、やっぱり点が取れなかった」と市原雄心監督が話したようになかなか得点を取り切るには至らず、前半をスコアレスで終えた。
一方、前半の立ち上がりはイーブンの状況を作りながら、中盤以降は押し込まれる形となった大宮南も後半に入って再び息を吹き返す。2年生FW田上隼輝やMF水野輝希、10番のFW田中快が絡んで攻勢へ。しかし堅守を見せる浦和西に対し、ゴールをこじ開けることができない。
するとここを耐えた浦和西は後半23分、MF竹下颯真のフリーキックから相手のクリアが内側に飛んだところをDF吉田雄飛がバランスを崩しながらも右足で決めてついに試合を動かした。
終盤、大宮南は途中出場のDF森元海舟のロングスローから得点を取りに行くが、浦和西は吉田、珍田知輝のCBコンビに加え、ヘディングに強いFW荒井慶太がセットプレーの際には必ず戻って跳ね返すなど堅守を発揮。市原監督は「(後半開始15分や終盤で)いままでであれば簡単に失点していた場面で耐えられるようになった」とクリーンシートで終えた守備を称えた。
選手権前最後の練習試合ではJ2千葉内定のブワニカ啓太を擁する修徳に5-4と競り勝ち。「個では通用しない相手でもチームで押さえられた」(吉田)ことも大きな自信に繋がった。
次戦は昨年も同じ3回戦で当たった西武台戦。キャプテンの栗原は「やっぱりリベンジしたいというのはある。公立が私立に勝つには我慢強く守って1-0であったり、1点差のゲームを勝ちきるといった展開になる。そういう面では今日の試合は収穫だと思うし、今日の集中力を続けられれば全然勝てない相手ではないと思います」と語り、昨年の雪辱に意欲を燃やした。
CB吉田雄飛が決勝弾。声と熱きハートでチームを後ろから勇気づける“西高のプジョル”
ゴール後は大きく咆哮した。「実は嬉しさの方が勝ってしまってよく覚えてないんです(笑)。でももう決めた時は嬉しくて喜びが爆発しました」とDF吉田雄飛は決勝弾を振り返った。
前半とは打って変わり、後半開始からの15分間は相手に押し込まれる苦しい展開。それでもここを相方の2年生DF珍田知輝とともに粘り強く耐えると、その瞬間は後半23分に訪れる。
浦和西は敵陣左中間でフリーキックを獲得。「前半1本良いのを打っていたので今日は行ける気がすると思っていた」と吉田。するとその予感が的中。MF竹下颯真のキックのこぼれが転がり込むと背番号4は体勢を崩しながらも右足を振り抜き、チーム待望のゴールをもたらした。
ゴール後は大きく咆哮すると、文字通り身体全体を使って喜びを表現。また、守備でもヘディングのたびに雄叫びを上げるなど最後まで気持ちの溢れるプレーを見せた。やや大げさなまでの感情表現は自らを鼓舞する意味でもあり、そして同時に仲間を盛り上げるためでもある。
「声を出すと盛り上がるし、みんなも応えてくれる。(声を出すことで自分の)気持ちも良いですし、チームの雰囲気も良くなる。そういうところはちょっと意識しているところです」。
そんなCBに対し市原雄心監督も「あれだけガッツがあって、いま自分のことを表現できる選手はいない。今日はあいつが点を取って盛り上がってこれは行けると思った」と信頼を語った。
もともとCBと兼任ではあったものの、FWをメインで務めていた中で「声を出せる」ところを買われて今夏よりCBに。「監督から「吉田、お前はCBだ」と。そこからはすごく責任感のあるプレーをできるようになりましたし、その監督の判断のおかげで良い方向に行ったかなというのはあります」というように主戦場を変えたことも良い意味で心機一転に繋がったようだ。
憧れの選手はかつてバルセロナ、スペイン代表をその溢れるばかりの情熱で牽引した「闘将」カルレス・プジョル。「気持ちでやるような、熱いプレーヤーが好きです」と語る同じく熱きハートを持った“西高のプジョル”は「西武台戦でもびびらないで、臆することなく、自分のストロングポイントを出していきたい」と気持ちで、気迫でチームを勇気づけることを誓った。
石黒登(取材・文)
試合結果
大宮南 0-1 浦和西
0(前半)0
0(後半)1