第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 決勝トーナメント1回戦 伊奈学園 vs 細田学園
選手権埼玉2次トーナメント1回戦。昨年ベスト8の細田学園は4-0で伊奈学園を下した。
立ち上がりは伊奈学園が縦に早い攻撃からFW加賀山太健が相手の裏を狙い圧をかけていく。
一方、開始早々は初戦特有の固さも見られた細田学園も徐々に落ち着きを取り戻すと前半16分、左シャドーのFW山本翼のアーリークロスをFW金子弘輝がヘディングで沈めて先制した。
その後は細田学園がボールを持って展開。今年採用する3-4-2-1のワイドが高い位置を取って幅を使った攻撃を繰り出していく。前半21分にはサイドチェンジでディフェンスに揺さぶりをかけ、左サイドのDF五十嵐隆成のクロスのこぼれをFW齋藤真が決めて追加点とした。
後半も優勢に進めた細田学園は14分、右コーナーキックからの混戦をエース齋藤がきっちりと沈めてこの日2ゴール目を記録。同32分にはMF細島大空のアーリークロスに先制アシストの山本がジャンプ一番、頭一つ抜ける打点の高いヘディングで沈めて4-0で初戦突破を飾った。
エースFW齋藤真が2ゴール。引退宣言から一転、決意の復帰「今年は自分が引っ張る」
今年10番を背負うFW齋藤真は前半と後半の勝負所で2ゴール。本人は「自分の持ち味は収めることだったり、前への推進力なんですけど、そこが今日は出せなかった。あとは決定力というところでもチャンスがあったんですけど、決めきれなかったので今日は30点くらいです」としていたが、得点外でも相手のセットプレー時には身体の強さと抜群のバネを生かしたヘディングで跳ね返し、空気作りの面でも下級生が半数を占めるチームを声やプレーで牽引していた。
そんな齋藤だが、このコロナ禍で一度は高校サッカーからの引退を決意していたという。
「このコロナ期間が明けて正直、関東予選やインターハイがなかったというところで、どうしてもサッカーへの感情が薄れてしまったところがあった。チームのみんなにも帰ってきてほしいと言われていたんですけど、(上田健爾)先生にも「夏で引退する」と言っていました」。
それでも指揮官とのもう一度話し合った末にチームへの復帰を決意。「もう一度自分を見つめ直した。みんなに認めてもらうために地道な作業から始めました」と最初に始めたのは草むしりから。そういった中で再び仲間たちの信頼を勝ち取り、今大会ではエースNo.10を背負う。
昨年は初のベスト8入りしたチームでも主力を務め、破れはしたものの準決勝の聖望学園戦では一時同点とするゴールを奪った齋藤だが、「3年生が自分を生かしてくれたというところで結果も出せた」。そして「次は自分の力でチームを引っ張っていく、仲間を生かしていくというところでは、まだ自分が引っ張っていく力が足りないんじゃないかと思います」。昨年は3年生に引っ張ってもらった分、今年は自分がチームを牽引するために大会を通しての成長を誓う。
戸塚西中出身のFWは「(中3で)進路がないという状況の時に上田先生に「3年後必ず全国に行くから是非来てほしい」と言われてその言葉を信じてここまで来た。裏切ってしまった部分もあるんですけど、今年が最後なので先生を必ず全国に連れて行って恩返ししたい」と語る。
一度は引退という形で裏切ってしまったかもしれない。それでも再びこの舞台に帰ってきたNo.10は、大会を通してさらに成長しながら、指揮官との約束の舞台である全国を目指す。
石黒登(取材・文)
試合結果
伊奈学園 0-4 細田学園
0(前半)2
0(後半)2