[選手権]苦境でもブレない強さ。昌平が再びビハインドを跳ね返し成徳深谷に延長逆転勝利、「夏冬連覇」へあと1勝
再びビハインドを跳ね返した昌平が決勝へ。第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選準決勝が9日にNACK5スタジアム大宮で行われ、昌平が延長戦の末、成徳深谷に3-1で逆転勝ちを収め、2年ぶりの決勝進出を決めた。16日の決勝では武南との新旧埼玉強豪対決に臨む。

両雄がトップトップで激突するのは3年ぶり。2022年は総体、選手権予選と2度決勝で対戦し、いずれも昌平が1点差のゲーム(2-1、1-0)を勝利し、全国大会に進出している。
現3年は中3の頃にその激闘を見て入学してきた世代だ。リベンジを狙う成徳深谷は今大会10番を背負うFW関根大和(3年)が初戦の2回戦・城西川越戦以来となるスタメン出場。為谷洋介監督も「彼に求めているのは得点」と話していたストライカーがいきなり仕事を果たす。
成徳深谷は立ち上がりから連動してハイプレスをかけると前半4分、相手のビルドアップにMF鯨井遥翔(3年)が寄せ、MF吉田佑樹(3年)がスライディングでカット。今大会チャンスに絡み続ける鯨井がドリブルで運んで右足アウトで中央に出すと、これを受けた関根が鋭いターンから右足でニアサイドを打ち抜いて、10番の今大会初ゴールで成徳深谷が先制した。
成徳深谷は3戦連続で開始15分以内に得点していた中で、この日も立ち上がりの良さを見せて得点を奪った。序盤からハイプレスやロングボール、奪ってからの切り替えなど自分たちのスタイルを徹底。その中で15分にはFW川上稜介(3年)の直接FKがクロスバーを強襲し、17分には前線でDF菅井陽斗(3年)が引っかけ、吉田が左足シュートでゴールに迫った。
昌平はトップ下スタートの湘南内定MF山口豪太(3年)、スタメンに復帰したMF人見大地(2年)がボールを引き出しながら好機を作ろうとするが、なかなかゴール前まで入っていけず。成徳深谷は山口に突破にもDF横山大平、DF佐々木亮(ともに3年)の自慢の2センターが強さを見せて阻止。前半30分までは距離のある位置からの単発のシュート2本に抑えた。
流れを変えたい昌平は30分、怪我明けのコンディションの不安からこの日スタメンを外れたMF長璃喜(3年)がピッチへ。芦田徹監督は「この交代3回っていうのが非常に難しい中で、前半で1枚切るのは非常に迷った。でも間違いなく前半のところで相手の足が止まりつつあったので、その10分のところで取り切っちゃいたいなという想いがあった」と説明する。
すると入ったばかりの長がプレーでチームを活気づける。33分、右CKのこぼれ球を拾うとMF飯島碧大(2年)とのパス交換からエリア内に侵入して鋭く右足を振り抜いてシュート。39分には再び右CKのこぼれを左足ボレーで狙っていく。どちらもGKのセーブにあったが、停滞感もあった中で2度の決定機と存在感。右サイドに移った山口も仕掛けの回数が増えた。
後半は長がトップ下へ。山口、U-16日本代表FW立野京弥(1年)とのコンビネーションからゴールを狙う。9分には山口の右CKから立野のヘディングシュートが右ポストを叩いた。
成徳深谷は19分、スローインから関根が競り、吉田が落としたボールを川上が右足で惜しいシュート。拮抗した展開が続く中で、次の1点を奪ったのは昌平だった。20分、GK小野寺太郎(3年)のキックから途中出場のFW齋藤結斗(3年)がヘディングで競り勝つと、裏のスペースに抜け出した立野が最後は右足アウトにかけたボレーで打ち抜いて同点に追いついた。
勢いに乗る昌平は藤島崇之チームディレクターも「1人エンジンが違いますよね」と話す長が、相手マーカー3枚を相手にしてもまったくボールを失わず、次元の違うプレーでスタジアムを沸かせる。32分には立野のポストプレーから長の右足シュートがクロスバーを強襲した。
成徳深谷も39分、川上が右サイドを抉って走り込んだ関根にクロス。決定的な場面だったが、小野寺の好セーブに阻まれる。昌平は43分、立野の丁寧な落としから抜け出た齋藤が倒されてペナルティキックを獲得。しかし、この場面も決めきれず、勝負は延長戦に突入した。
延長戦も激しい攻防が繰り広げられた中で、昌平は前戦に続き197cmの長身GK土渕璃久(2年)も準備していた延長後半7分、U-16日本代表DF笠原慶多(1年)が運び出して右サイドへ。人見のクロスを収め、前を向いた立野が深い切り返しから相手を外すと、右足で豪快にネットに突き刺した。1年生FWのこの日2点目が決まり、ついに昌平が勝ち越しに成功する。
11分には齋藤が仕掛けから再び、ペナルティキックを奪取。山口からボールを預かった齋藤がこれを2度目の正直とばかりに思い切りゴールに蹴り込んでダメ押しとなる3点目を奪った。終盤に成徳深谷の堅守を切り崩した昌平が3-1で勝利し、2大会ぶりの決勝進出を決めた。
昌平は初戦となった準々決勝の浦和学院戦に続き、2試合連続で先行を許す中で苦しい試合を競り勝っての勝利。芦田監督は「やっぱり先週もそうですけど、(ビハインドを背負う中で)そこでもう一回自分たちがやるべきこととか、最後までブレずにしっかりと戦っていくということ、そういうことは子供たちなりに非常に大きく成長している1つかなと思います」と話す。
「ビハインドありきではないんですけど、でも自分たちがサッカーから見失わないように、気持ちだけでどうにかしようとするんじゃなくて、もう一回しっかり相手と自分たちっていうものを照らし合わせた時にどうまずは80分間をコーディネイトするか。だからやっぱり焦らずにというか、やるべきことをしっかり見失わずにやるっていうことが大事なんだと思います」。
逆にそこさえブラさなければ、プレミアの試合でも県予選でも追い越し、跳ね返す力はある。夏冬埼玉連覇へあと1勝。「プレミアの時もそうですけど、次の相手に向けて、自分たちのことだけじゃなくて、しっかり相手も見ながら、自分たちの良さが出るようなゲーム、それが間違いなく勝つことに1番繋がる、確率を上げると思うので、そこに向けてみんなで本当にしっかり準備をしたい」。決勝の武南戦も決して見失わず、ブレずに2年ぶりの冬の王者に突き進む。
石黒登(取材・文)
試合結果
昌平 3(延長)1 成徳深谷
0(前半)1
1(後半)0
0(前半)0
0(後半)2


