前監督から受け継いだ「浦和の勢力図を塗り替える」という想い 浦和北が浦和西を下し、2年ぶりの選手権決勝Tへ

第103回全国高校サッカー選手権大会・埼玉県一次予選会の代表決定戦が8月31日に県内各地で行われ、浦和北と浦和西の“浦和ダービー”は1-0で浦和北が制し、県大会出場を決めた。

「浦和の勢力図を塗り替える」。浦和北は前監督から受け継いだ想いを胸に浦和西を撃破した。

「球際、走る、セカンドボールを拾うとか、当たり前なことをやればうちのペースになるので、そこはみんなで意識してやりました」(諏訪部)。浦和北は技術で上回られる相手に対し、「当たり前なこと」を徹底。中盤以降は相手コートに押し込む時間を増やしながらゴールに迫った。

前半7分にMF増山大晴(2年)がこの試合、両チーム通じて最初の決定機を迎えると、19分にはFW千葉礼人(2年)がゴール前の混戦をループシュートで狙っていく。21分にはフリーキックの2次攻撃から左SBの渡辺葵大(3年)のミドルシュートがゴールポストを強襲した。

浦和西はスピードを活かし、シンプルに縦に配球しながらアタック。17分にはMF坂田陸(3年)のスルーパスからエースストライカーのFW井上裕斗(3年)が抜け出してゴールに迫る。前半ラストの44分にはDF末岡碧人(3年)のフリーキックからMF沼田稜平(3年)のヘディングが枠を捉えたが、ここは浦和北GK白石啓太(2年)がファインセーブを見せて防いだ。

スコアが動いたのは後半4分だ。浦和北は渡辺が左サイド深くでドリブル突破を仕掛けてフリーキックを獲得。渡辺のキックを増山が折り返すと「結構相手は競り合いが強い人だったんですけど、味方がゴール前に綺麗に落としてくれたので当てるだけのイメージで、ちゃんと流し込めて良かったです」と話すCB茂木陽人(2年)がヘディングで流し込んで試合の均衡を破った。

後半は1点を追う浦和西が攻勢を仕掛けたが、浦和北は主将のCB諏訪部涼太(3年)を中心にディフェンス間で声をかけて連携を取りながらしっかりと完封。そして歓喜の瞬間。この日は空中戦で奮闘したFW鹿島悠月(3年)は足を4カ所攣らせていた中で「(勝った瞬間は)もうすごかったです。攣るのは初めてで、攣るってこういう痛みなんだって」と痛みとともに喜びを噛みしめ、谷内謙介監督は「今日はうちの良いところが全部出たと思います」と選手たちを讃えた。

浦和北は前任の古市元喜監督のもと「浦和の勢力図を塗り替える」を合言葉にトレーニング。今年、同監督が武南に移った後もその想いは変わらない。諏訪部は「やっぱり浦和の中で北が一番弱いと言われていて、前任の古市先生からその勢力図を変えてやろうっていう想いを受け継いでいたので、そこはチーム全員で目標を持ってやることができました」と強敵撃破に胸を張った。

また、この日は7人の2年生がスタメンしたが、現在の2年生は2年前に浦和北が選手権で市立浦和を下したのを見て入ってきた代。サイドでチャンスを多く作り出した千葉は「試合も直接見に行ったんですけど、やっぱりチームとして戦って、強豪を倒す姿がすごくかっこよかった」と話す。今年は前指揮官に鍛えられた守備的な部分に加えて、谷内監督のもと、攻撃的な部分もフォーカス。得点にこそ繋がらなかったものの、意図的に崩しながらゴールに迫るシーンもあった。

2年ぶりの選手権2次トーナメントへ。諏訪部主将は「常にチャレンジャーっていう気持ちを持って強豪校を倒していきたいです」と意気込み。今年も県大会をかき回す存在となるか注目だ。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和西 0-1 浦和北
0(前半)0
0(後半)1