自分の持ち味を再確認して値千金のゴール。西武台は０－１の後半21分に途中出場のFW松原海斗（３年）が裏に抜け出し同点弾。その後PK戦の末に勝利し、プリンス１部参入を決めた。

前日の練習で松原はスタメン組としてプレー。しかし「崩そう、崩そうみたいな感じになってしまって、足元で受けて叩くとかになっていた。そうなると自分は身体が小さいので潰されてしまうことが多かった」とゲームメイクに関わろうとするあまり、自分の良さを見失いかけていた。

松原の良さはタイミングの良い裏抜けと鋭いカットインからのフィニッシュ。エースFW市川遥人（３年）は前線からのハードワークで味方を生かし、また味方に生かされる選手であり、もうひとりのFW細田優陽（３年）は体調不良から選手権に間に合うかは微妙な状況だ。そういった中で単騎で仕掛け、フィニッシュまで持って行けるのは松原だけが持っている唯一無二の“色”。

前日の練習を終え、守屋保監督からは「お前の良さは引いてきて、ターンして前を向くんじゃなくて、前を向いたままゴールに行くんだ」「みんなでパスワークを組んでみんなでリズムを作るのも大切だけど、お前はそれに合っていない。ひとりで行く、その代わりにひとりで決めてくる。外したとしても何十本でもやりきる。そういう持ち味を大事にしろ」とアドバイスを受けていた。

関東第一（東京）との決定戦はスタメンからは外れたが、「前半あまり西武台は裏を取れていなかったんですけど、何本かあって、相手のCBの対応があまり良くなかった」とベンチから戦況を見つめながら自分が出場した時をイメージ。そして出番は０－１の後半15分にやってきた。

直後から積極的なプレーでファールを獲得するなど良い入りを見せると、その時が訪れたのが投入から６分後の後半21分。「ハーフタイムにボランチに「俺が入ったら裏に蹴ってほしい」と伝えていた」。MF岡田瑞生（３年）にボールが入ると、オフサイドにかからないように一度外に膨らみながらプルアウェイして一気にディフェンスを置き去りにし、完璧な形で裏へ抜け出し。最後はキーパーとの１対１を冷静に右足で流し込み、欲しかった同点ゴールをもたらした。

本人としてもこの一戦を通して自分の良さを再確認出来たようだ。「選手権の準決勝の時も裏抜けから得点だったので、自分が裏に抜けたら得点に絡めるというのは自分でもなんとなくわかっていた。そこがもう一回確認出来て良かったです」とし、「このままもっとアピールして、スタメンに定着してゴールを決められたらなと思っています」と全国に向け、意気込みを語った。

上のステージに行けば行くほど最後に求められるのは『個』の部分。初の選手権４強以上を目指すチームにとって、松原が自分の『色』を再認識出来たことは必ずや大きなプラス材料になる。

石黒登（取材・文）