「先生、僕がいま出られない理由はなんですか」。課題を受け止め、サッカーと向き合った立教新座DF今野朝陽が起用に応える3点目
高校サッカー選手権というのは本当に選手にとって特別な大会だ。立教新座DF今野朝陽(2年)は準々決勝・越谷西戦に強い想いを持って臨み、終了間際にヘディングでゴールも記録した。
今野は昨年の選手権予選でも1年生ながらスタメンでプレーし、チームのベスト8進出にも貢献。179cmと大柄で、サイドバックながら得点力も併せ持つなど、スケール感を感じさせた。
今年は中堅選手として2年連続の選手権を迎えると思われていた矢先。10月の上旬の練習でチームメイトと接触し、むち打ち状態に。それから約1週間、プレーをすることが出来なかった。
さらにこの期間でDF三浦航(3年)、DF岡本聡吾(1年)の両SBが安定。左右両SBを務めることが出来ることも特徴とする背番号12だが、復帰後もチームとして初戦となった2回戦・国際学院戦(3-2○)、3回戦・埼玉平成戦(4-2○)とついに出番は回ってこなかった。
チームが勝ち進んでいくことへの嬉しい反面、自分が出られないことへの歯がゆさも内に秘めていたことは前田和伸監督も感じていた。そして今野は週明けに1通のメールを指揮官に送る。
「先生、僕がいま出られない理由はなんですか」。
今野は言う。「本当に悔しかったんです。この選手権ってやっぱり本当に大切な大会じゃないですか。そこに出られないというのが本当に自分でも情けなくて、今回は本当に出たかったので、前田先生に自分のどこが悪いのか、改善点を聞いて、今週1週間本当にもうサッカーと向き合って、言われたこともちゃんと意識しながらプレーするというのは練習中に心がけていました」。
前田監督から帰ってきた現時点での課題をしっかりと受け止めながら1週間必死に練習に取り組んできた姿に指揮官も「伝わるものがあった」。そして準々決勝の越谷西戦で初先発を果たす。
「本当にシンプルに嬉しかったです。「もうやってやろう!」と、「もうここしかないなと!」」と臨んだ試合。今野は持ち前の攻撃性の高さを生かし、FW大塚康生(3年)とともに強力な左サイドを形成した。後半は1列上がって左SHに。直後にはポスト直撃のシュートを放った。
2-0で迎えた延長後半5分には岡本のフリーキックにドンピシャのタイミングのヘディングで合わせ「めっちゃ嬉しかったです!」と喜んだ。自分をこの舞台で使ってくれた前田監督の期待にも応えたかったという攻撃的SBは、しっかりと結果という形でも指揮官の信頼に応えた。
勝利はまた新たな競争へのスタート。「また来週に向けて、本当に全力で取り組まないとすぐにスタメンを取られてしまう。この1週間もまたサッカーに集中して次の試合に臨みたい」。この1週間も再びサッカーと真剣に向き合い、スタメンを引き続き掴み取る構えだ。
またチームには「頑張らなければ」と思わせてくれる存在もいるという。マネージャーの松ノ井暁(2年)だ。「自分たちの高校は男子校なのでマネージャーとかはいないんですけど、その中でも松ノ井くんは自分も選手でもあるのに、マネージャーもやってくれて、それは自分たちも頑張らないといけないなというのがある」。そして「女子はいないんですけど、男子校だからこそ良いところもあるので、本当にそれは知ってもらいたい!」と力を込めた。チームを陰で支える松ノ井の分も自分たちが頑張り、まずは決勝進出をプレゼントする。
石黒登(取材・文)