伊奈学園は残り10分で力尽きる。後半はキーマン・中田悠介をFWに、一時同点に追いつくも一歩及ばず。涙も「最後までやったからこそ得られるものもある」
70分間に関してはほぼプラン通りに進めた伊奈学園だが、残り10分で2失点を喫して敗れた。
埼玉栄との選手権予選2回戦。「まず点を取られたくないというところで、リーグ戦も含めてここ数試合ディフェンスのやり方も変えたことで、ずいぶん失点を少なくすることが出来た」と岡田泉監督は話す。前半は相手にボールを握らせながらも要所を締めて守備。前半終了前に失点したが、押し込まれた中でも被シュートは6本とあまりシュートは打たせず、1失点に抑えた。
「出来ればゲームプランとしては前半無失点でいって、後半の途中から中田を前に出して、点を取りにいきたいと。80分の中でゲームを決めたい。そういう考えがありました」(岡田監督)
すると後半に入り、一気にシフトチェンジを図る。前半は3バックの中央で高さや予測の良さで奮闘していたDF中田悠介(3年)を前へ。「技術的にも、高さも、彼はこのチームの中でいろいろなことができる選手」と指揮官も信頼する背番号10は、中盤から何度もドリブルで持ち出しながらアタックを牽引。自ら行くのはもちろん、引きつけてのスルーパスでチャンスも作った。
すると後半28分、中田とFW武野柊大(3年)が前線からディフェンスにプレッシャーをかけてボールをカット。これを中田がドリブルで運ぶと、たまらず相手がファールしPKの判定に。そしてMF遠藤冬樹(3年)主将がきっちりとゴールネットに蹴り込んで同点に追いついた。
先に失点はしたものの、70分まではほぼゲームプラン通りの展開。岡田監督も「あそこまではよく出来たなと。狙い通り中田を前にすることによって、得点に結びつくようなプレーが出来たというのは大きかった」とする。しかし、その後「ちょっと取られ方が悪かった」というコーナーキックから失点すると、気持ち的に落ちたところをさらに1失点を重ね、1-3で破れた。
試合後、涙に暮れる選手たちに岡田監督は「彼らは一生懸命やってきたから今日こうやって涙することが出来る。やってきたことは間違いなかったんじゃないかなと思います」と言葉を贈った。「勉強も良い」という3年生は遠征の際も参考書を持参し、暇さえあれば目を通していたという。
「最後までやっていたから彼らは得られるものもたくさんあるでしょうし、負けたからこそ得られるものというのがある。でも良いゲームが出来たと思います。悔いが残らないといったら嘘になるかもしれないですけど、でも持てる力を十分に発揮してくれたというふうに思います」。
石黒登(取材・文)