やはり最後に決めたのは“エース”。川口西FW田中悠真は「自分としてはもっと行けた」と反省も、大会を通して相手の想像を上回り続ける

やはり最後にゲームを決めたのは「エース」だった。新座第二中との県学校総合体育大会・決勝、川口西中の10番FW田中悠真(3年)の決めたゴールがチームに初のタイトルをもたらした。

スコアレスの時間が続く中で「難しい試合になるということは想定していた」と焦れずにチャンスを待つと、後半30分についにその瞬間が訪れる。ゴール前でこぼれ球を持った田中は今大会何度も仕掛けてきたドリブルで最後の勝負。ダブルタッチとスピードで一気に2枚を剥がすと、「昨日(準決勝)そういうシーンが多々あった中で1点も決められず、自分でも悔しい想いがあった。今日こそはと思って、振り抜くだけでした」と左足を一閃し、ゴールネットに突き刺した。

「いままでにないくらい嬉しくて、たまらない気持ちでした」。ゴールが決まったのを見届けるや否や身体が勝手にスタンドの方に駆け出していた。「この大会を開催してくれた方々への感謝、いままでサポートしてくださった方々への感謝の気持ちを込めてスタンドにスライディングしました」。この日のスタンドには田中の両親を含むチームの父母会や選手たちの育った少年団の関係者など、限られた人数ではあった中で観客も入れられた。そういった中で成長した自分を見せられたこと、そして伝えたかった想いが感謝のパフォーマンスとなって溢れ出した形だった。

これが決勝点となり川口西は新人戦、学総を含めて県大会初優勝。チームを悲願のタイトルに導いた田中に横田純一監督も「やっぱり勝負を最後分けるのはエース。ああいうふうに決めてくれるところは本当に勝負強いし、頼りになる男だなと思います」と賞賛の声を惜しまなかった。

今大会は危険なFWとして警戒を受ける中でそれを上回ってきた。指揮官からは「警戒される中で相手が君がこのくらいかなと想定してくる、こういう選手だというものを一回一回乗り越えていくと君はこの大会で化けられる。もっと良い選手になれる。相手が10だと思っているとしたら、12、13くらいのパワーを示していけ」と、試合毎に声をかけられて送り出されていた。

そして田中はその課題を次々とクリアしていった。初戦で2ゴールを上げると2回戦ではハットトリックの活躍。3回戦の原山中戦あたりからは「結構自分に来るな」とマークもきつくなったが、「周りの選手が生かしてくれて、最後は僕に繋げてくれた。仲間の存在というのが大きかった」と仲間たちにも支えられながらチームの勝利を第一に考えゴールを重ね続けた。大一番となった南浦和中戦は得点はもちろん、守備でも決定機をかき出すなど献身的なプレーも光った。

初日に掲げた二桁ゴールにはあと1点及ばず、「自分としてはもっと行けたかなと思います」と悔しがったが、この経験もまた力に変えていくのだろう。結果を残しても常に「まだ満足していない」と飽くなき向上心を見せる“エース”は今後も周りの想像を上回り続けながら成長する。

石黒登(取材・文)