鹿島内定の小川優介の武器は、類い希なる「予測」と「判断」。日本高校選抜入りを逃した悔しい経験も経てプロ入りを掴む

166cm、58kg。見た目だけで言えば「大丈夫か?」という感想も持たれるかもしれない。

でもそれは杞憂だ。小川優介は類い希なる「予測」と「判断」を生かしたボール奪取とドリブルで攻守において起点となれるインテリジェンスに溢れるボランチ。そして会えばいつも「優介良いですよ」と藤島崇之監督が話してくれる指揮官の「秘蔵っ子」でもある。

初めて見たのは昨年の新人戦。その頃はさらに細身で「身長は165あるかないか。体重も49とかしかない」という中で大柄な上級生たちを相手に1年生MFは意識的に取り組んでいた守備や武器のドリブルを披露。何より80分間を通じてのゲームコントロールが光った。すぐに針谷岳晃(ジュビロ磐田)、原田虹輝(川崎フロンターレ)とJリーグに進んでいった先輩たちに続く、昌平のNEXTボランチと紹介させてもらったのが記憶に新しい。

その後はスタメンに定着。柴圭汰という名パートナーを得て県内屈指のボランチに成長を遂げていく。関東、インターハイは逃したが、リーグ戦、選手権予選の優勝にも貢献した。

もとより欠かせない選手ではあったが、凄みが出てきたなと感じたのは昨年末のプリンスリーグ関東参入戦だ。この大会で小川は水戸ホーリーホックユース、ジェフユナイテッド市原・千葉U-18といったJのエリートたちを相手にほぼパーフェクトな出来を披露する。

守備では柴圭汰とともにことごとくボールを回収。また攻撃面では鹿島も評価した「ドリブル」で特別な輝きを放つ。「あれだけ相手を見て、相手と駆け引きできて、サッカーできる選手はそういないと思う」と指揮官も絶賛するドリブルでJクラブ2チームを手玉に取った。

このあたりから全国区のメディアも小川を無視できないようになる。選手権前には各種媒体が昌平の小柄なボランチを紹介。そして昌平の14番は迎えた本大会でもそれに違わぬ活躍を見せ、選手権では初となるベスト8入りをしたチームでも大きな存在感を放った。

だからこそ意外だったのが、小川が大会の優秀選手入りを逃したことだ。注目を集めた2年生カルテットでは須藤直輝、小見洋太、柴圭汰が選ばれる中で小川優介は選外に。「テレビで優秀選手が流れている時に見ていて、自分の学年で出ていた4人で自分だけ選ばれなかった悔しさは本当にあった」と小川。手応えも得ていたからこそ、その分大きな失望も味わった。

「自分が最高学年となったこの新チームでやっぱり自分を出していかないともう意味がない。言い方は悪いかもしれないですけど、本当に選んだ人を見返してやるという気持ちで今年はやりたい」と迎えた新シーズン。コロナ禍もあった中でプロ入りに至る成長を見せたのは、この「悔しい気持ち」と「自分を出して」というところが大きかったかもしれない。

理想の選手像はイニエスタと話していた小柄な青年は、来季よりその憧れの選手と同じフィールドに足を踏み入れる。

石黒登(取材・文)