サッカーが苦しくなったこともあったけど…。仲間や家族の支えで熱を取り戻した渡邉が大一番で先制弾! 選手権は「感謝の想いを持って全力でプレーします」
押し込みながらも相手の集中した守備もあり、なかなか決定機を作れなかった中で先制点が生まれたのは前半43分。小見のシュートがポストに当たってこぼれたところをしっかり詰めた。
「こぼれてきたらいける準備はしていた。キーパーがスライディングに来ているのが見えたので浮かせて決めようと思ったら、ちょっと浮かせすぎちゃって危なかったですけど(苦笑)。決められて良かったです」。試合を動かす1点を決めたMF渡邉健太はそう言ってはにかんだ。
昨年は全国をかけたインターハイ予選準決勝で初出場初得点を挙げてヒーローとなったが、その後はコンディションを落としてしまい、今年の新人戦後にはBチーム降格を味わった。「なかなか思うようにいかなくて。サッカーがもう嫌っていうか、すごい苦しくなった時もあったんですけど、それでもなんとか家族やスタッフ、仲間に励まされて立ち直ることができた」。
一番の支えとなったのはやはり「家族」の存在だ。母の言葉はいまも心に残っている。「お母さんに「なかなかうまくいかないけどあと少し、あと1年しかないから頑張ろう」って言われて、やらなきゃいけないって。そういうことを言わせてしまった自分が情けなかったです」。
そこから再び気持ちを奮い立たせて、夏休み前にトップチームに昇格。このプリンスリーグ参入戦には2試合ともにスタメン出場し、得点外でも果敢な仕掛けや守備面で大きく貢献した。
最後の選手権は自分を励ましてきてくれた人たちに感謝を伝える最高の舞台。「自分は本当に周りの人に迷惑をかけてきてしまった。スタッフや仲間、家族に感謝の想いを持って全力でプレーします」と渡邉。一度はサッカーを嫌いになりかけたこともある。それでも再びサッカーへの熱を戻してくれた人たちのために、プレーのひとつひとつで「ありがとう」を表現する。
石黒登(取材・文)