[プリンス関東1部]RB大宮U18 FW平家璃久斗、度重なる怪我と挫折…苦しみ続けた10番が最終節でプレミアPO導く同点弾!

苦しみ抜いた3年間をぶつけるようなゴールだった。プリンスリーグ関東1部最終節の横浜F・マリノスユース戦、RB大宮アルディージャU18は10番FW平家璃久斗(3年)が1点を追う67分に執念の同点ゴール。試合は1-1で終わり、チームはプレミアプレーオフ進出を決めた。

「シーズン通してなかなか得点で貢献できなかったので、この試合にかける想いは強くて。内容云々より、得点で貢献したい想いが強かったので、あそこは気持ちで押し込めたと思います」

得点シーンは一度、左サイドに叩くと、クロスからゴール前が混戦となった中で冷静に動き直し、得点の匂いのするポジションへ。DF遠藤柊眞(2年)のゴールエリア内へのスルーパスを引き出すと、「落ち着いてキーパーも見れて、コースもしっかり見れて打てたので、自信を持って打てたかなと思います」。右足でコースを打ち抜き、ゴールネットを揺らすと喜びを爆発させた。

「やっぱり今日の試合で、チームの活動が終わるかもしれないっていう試合で、誰よりも強い気持ちがあったので。FWとして、自分の得点でプレーオフに進めたいっていう気持ちが強かったので、その想いが得点に繋がったかなと思います」。チームとして目指していた優勝には届かなかったこともあり「最低限」としたが、この一発がチームをプレーオフに導くゴールとなった。

「この2年、自分が思い描いていたシーズンじゃなかった」というようにユース生活は怪我や挫折の連続だった。1年次から出場機会を得ていた平家だが、ちょっとした怪我の連続と自身への失望感から「サッカーから離れたい」と思うほど追い込まれ、チームを約1ヶ月離れた時期も。「身体が動かなくて、思うようにプレーできなくなって…。その中で本当に辞めたいと思った」。

そのとき寄り添ってくれたのが、丹野友輔監督とキャプテンのMF斎藤滉生(3年)だった。「お前はチームに必要」「一緒にサッカーしたい」と学校でも、帰宅後の通話でも、ポジティブな声をかけ続け、寄り添い続けた斎藤の存在が、平家をつなぎ止めた。丹野監督も毎週電話をかけ、「焦らなくていい」と言葉をかけ続けた。仲間と指導者の支えが、彼を再びピッチへ戻した。

だが復帰直後に、またも試練が訪れる。プレミアリーグ開幕1週間前に前十字靭帯を断裂。2年のほぼ1年間を棒に振った。悩まされることも多いシーズンだったが「でもやっぱり自分自身、メンタル的に強くなれたし、その期間があっていまがあると思うし、やっぱりその期間でまたみんなにサポートしてもらって。特にトレーナーさんにはだいぶお世話になって。あの期間があって、より自分自身強くなれたと思うし、あの期間は忘れられないかなと思います」と振り返る。

「去年はたくさん迷惑をかけたなっていう想いが強いので、今年は去年の3年生の分の気持ちも背負って、プレミアに上がりたいっていう想いがありました」。より「チームのために」という想いを強くした今季も細かい怪我で短期離脱も多かったが、ここに来て復調気味のエースに丹野監督も「プレーオフのところも勢いを持ってやれるんじゃないかなと思います」と期待する。

「去年の3年生たちの分も背負うっていうのは全員が持っていると思いますし、どこよりもプレミアに上がりたいっていう気持ちは強いと思うので、残り2試合、悔いのないように、自分たちの、大宮らしいサッカーをして勝ちたいなと思います」。その中で「内容云々より、チームのために走るところだったり、戦うところだったり、もちろんFWとして点でチームを勝たせたいっていう気持ちはあるので、泥臭く自分らしいプレーをして勝ちたい」と意気込みを語った。

今シーズンは2種登録もしていた中で、大学4年間を経てプロを目指す道を選択した。それでも「大学で頑張って、また大宮に戻りたいっていう気持ちがある。大学卒業後はまた大宮に戻って、Nack5のピッチで恩返ししたいなと思っています」と、4年後成長した姿での帰還を夢見る。

「やっぱりいつでもこのチームの仲間は支えてくれたので、その気持ちも背負って。いま試合に出られていない人たちや怪我してる人たちもいるので、その人たちの想いも背負ってピッチに出ている以上、責任を持って全力でプレーしたい」。苦しいとき支えてくれた仲間たちと笑顔で大宮での第一幕を終えるために。RB大宮U18の10番はプレーで、ゴールでプレミア復帰に導く。

石黒登(取材・文)