[選手権]武南MF関口海龍、悔しさを力に“実質2発”。攻守120%の奮闘で14年ぶり決勝へ導く

攻撃も守備も常に100%以上で。準々決勝で不完全燃焼に終わった悔しさを、そのまま燃料に変えた。武南MF関口海龍(3年)は細田学園との準決勝で、実質2ゴールに絡む決定的な働きを披露。最後は足が吊りそうになりながらも走り切り、チームを14年ぶりの決勝へと押し上げた。
「西武台戦は自分の得意なプレーも、点に絡むところも出せなかった。それがすごく悔しくて。今日は特徴を出して、得点を決めて、武南を決勝に持っていきたいという強い意志で臨みました」
先制点は“その気持ち”で押し込んだもの。前半14分、MF小山一絆(2年)の左CKから混戦が生まれると、こぼれ球をファーサイドのDF田村大地(3年)がシュート。これは相手守備に当たったが、こぼれ球に対していち早く反応した関口が右足でプッシュし、ネットを揺らした。
「ここで決めなかったら、流れが悪くなる。S1の後期でも点が取れず、1失点して、そのまま守り切られて負けちゃったので…。前半のうちに俺が1点決めてやろうという気持ちでした」。前期は1-1の引き分け、後期は0-1で敗れた相手に対して、3度目の対戦で先制点を奪う。
その後チームは前半に2失点し逆転されたが、後半は流れを持って進めてFW藤森隼叶(3年)、MF平野琉斗(3年)主将のゴールで再逆転。迎えた後半37分には再び関口が得点に絡んだ。
足が吊る直前だったというが、右サイドでボールを持つと、「監督とかコーチには最後まで走り抜けと言われていた」というサイドアタッカーは、果敢に仕掛けて切り返すと右足でクロス。これは相手DFに当たったが、「1回ミスっても、何回も繰り返して、自分の特徴を出して」食らいつき、もう一度パスを入れると、結果的に相手に当たったボールがゴールへ吸い込まれた。
オウンゴールとなったが、この日は“実質”2ゴールの活躍。また、得点だけではなく、守備での奮闘も際立った。「守備の強度でも、自分は前からずっと追い続けて、スプリントっていうのも意識して、1回でやめずに何回も繰り返し守備をやって前からはめることを意識しました」。前半はインターセプトから1本決定機を迎え、後半も前から2度追い、3度追いして取り切ってそこからチャンスに繋げるシーンもあった。主将の平野も「関口の運動量がやっぱり多いので、そこで追ってくれるから助かるし、関口が追ってくれるから全員が連動して前に行ける」と話す。
内野慎一郎監督も「海龍は要求を出したら、100%以上でやってくれる。そこはすごく僕の中では信頼感がある。授業の雰囲気も変わってきたと先生方も言っています」と信頼。関口は「監督にも2年生ぐらいから大切にされて、3年生で、最後の選手権で、ここで優勝しなかったらいつやるのかなと思って。自分なりにも3年生で、スタメンで出てるからにはチームを優勝に導かせられる選手になりたいなと思ってました」という意識の変化が現在のスタイルに繋がっている。
「昌平は格上なんですけど、絶対に諦めることはなく、19年ぶりの武南高校の優勝をみんな見たいと思っているので、絶対に優勝します」。そう力強く誓う関口は、攻守で100%以上を出し切る覚悟だ。攻撃ではスピードとドリブル、守備では切り替えの速さと前からのプレスを武器に「倒れるぐらいまで、足が吊るぐらいまで走り続けて、埼スタで優勝したいです」と言い切った。武南として19年ぶりの冬の全国がかかる決勝。その右サイドで、関口海龍は最後まで走り抜く。
石黒登(取材・文)


