[選手権]昌平FW立野京弥、1年生“9番”が逆転決勝導く2発! 夏は怪我で離脱、全国への想いは「3年生より強い」

1年生“9番”が昌平を2年ぶりの決勝に導いた。FW立野京弥は準決勝・成徳深谷戦で0-1の後半20分、GK齋藤結斗(3年)がヘディングで後ろに流したボールに反応。裏へ抜け出すと、ショートバウンドのボールを右足アウトにかけるボレーで打ち抜き、ゴール右隅に叩き込んだ。

「抜け出して、もうシュートしか考えてなかったです」。この日はリヴァプールやバルセロナでも活躍したストライカー、ルイス・スアレスのプレー動画を見てきたという。「プロのプレーを見て、それを思った通りにできた」。その言葉通り、本家を彷彿とさせる一撃で同点弾を奪った。

さらに1-1で突入した延長後半7分には勝ち越しゴールも。MF人見大地(2年)のクロスを収めて前を向くと、眼前のマーカーを深い切り返しで剥がし、右足で豪快にネットに蹴り込んだ。「PK戦も嫌なんで、もう自分が決めてやるって気持ちで決めました」「結構みんなから呼ばれていたんですけど、もう無視して打っちゃいました」。ここでも“9番”としての顔をのぞかせた。

U-16日本代表にも名を連ねる立野は、先月のウズベキスタン遠征にもDF笠原慶多(1年)とともに参加し、ウズベキスタン戦ではゴールも。しかし、帰国後はプレミアリーグの試合でもなかなかゴールが奪えず「結構苦しい期間でした」。今大会初戦では絶妙な落としでMF長璃喜(3年)のゴールを演出したが、「前回決められるところで決められなくて。結構悔しかった」という立野は「今日は2点決められて良かったと思いますし、次にも繋げたいと思います」と話した。

今年は1年生ながら昌平の9番を背負う注目ルーキーは、まだ入学式前だったプレミア開幕戦の市立船橋戦で鮮烈な決勝ゴール。芦田徹監督も「バケモンだなと」と最大級の賛辞を送っていた。上々のスタートを切った立野だったが、5月にもともと中学時代にも疲労骨折などをしていた左足の中足骨を骨折。手術を行い、この夏の総体予選、本大会は戦線離脱を余儀なくされた。

本大会はサポートメンバーとして帯同した中で、チームはベスト8で大津に0-5で大敗。その姿を外から見ていた立野も「あの時、自分が出ていても何かを変えられたかなっていうのはあんまりなくて。それを変えたいなって思って、結構筋トレとか肉体改造にも励んできました」と考えるきっかけに。離脱中は主に前線でボールをキープするため上半身を鍛え上げてきたという。

この日は県内でも屈指のCBコンビに対し「競り負けることも多かった。キープもスローインになっちゃったっていうのもあったので、もっと前を向ければ次のプレーに繋がる」と反省も語る。

それでも後半は相手を背負いながらゴールキックをピタッと収めて長に繋げた31分のプレーや、1本目のPK奪取に繋がったポストワークをしながら裏抜けからのシュートなど特徴も発揮。そのうえで「璃喜に集めろっていうのはあったんですけど、自分もFWなんで、ゴールが欲しいんで(笑)」とゴールで、Jクラブが注目する先輩MFから主役の座を奪うパフォーマンスを見せた。

夏に全国出場を果たせなかった分、選手権に出たい気持ちは「3年生よりも強いと思います」という立野は「次も絶対に決めて、1年生でもチームを引っ張れるっていうところを見せていきたいと思います」。ピッチに立てなかった夏の悔しさを胸に、1年生9番は決勝でもゴールを狙う。

石黒登(取材・文)