[選手権]武南MF有川達琉、後半ATに劇的決勝弾!名門の「10」背負う責任、重圧を乗り越えてチームを勝たせる存在に

武南の「10」が勝負を決めた。西武台との準々決勝は0-0のまま後半ATへ。その中で40+1分、武南は10番MF有川達琉(3年)が決勝ゴール。右サイドからの崩しでFW安藤大翔(3年)がヒールで落としたボールを右足で、正確に、そして力強くゴールに流し込んで見せた。
本人としても「驚きの方が強い」という決勝ゴール。「いつも自分、あそこから打たないので。ドリブルで入っちゃって、打てないみたいなことがいままで多かった」というが、この場面では身体が自然と動いた。キーパーを確認すると、コースを狙ってダイレクトでネットを揺らした。
「最初はもうなんか嬉しいより驚きの方が強くて。(ゴール後も)ちょっとあっち行くか、こっち行くかを迷っちゃって(笑)。でも、みんな走ってきたんで、そこから嬉しいに変わっていった」。仲間たちから祝福を浴びた10番は「こんな大舞台で、自分の決勝ゴールで勝つってことはいままでのサッカー人生で1回もなかったので、マジでめちゃくちゃ嬉しかったです」と喜んだ。
「西武台はプリンスリーグで3位だし、新人戦でも大敗してるので、ボールを持たれる時間が多くなると思っていたんですけど、自分たちがボールを握れて、自分たちらしいサッカーをできたと思います」。新人戦では1-5で敗れた相手に対し武南は前半からボールを持ってプレーする。
有川も「自分は2年から10番をつけさせてもらって、責任感っていうのも3年になってから大きくなったので、自分がチームを引っ張ろうと思って、たくさんドリブルで運ぶことを意識しました」というように立ち上がりから推進力のあるドリブルでチームを牽引。後半16分にはFW藤森隼叶(3年)のクロスからジャンプボレーでゴールにも迫った。その中で「やっぱりシュートを決めたいなって思ってたので、それが本当に結果に繋がって良かったです」と笑顔を見せた。
有川は、2023年に全国高校総体に出場したMF松原史季(現・法政大2年)の後を継ぐ形で1年生の新人大会から名門のナンバー10を背負ってプレー。「2年の頃は(大熊)來瑠とかがいて、助けられてる感があって、そのプレッシャーはなかったんですけど、3年になってすごい重圧というか、責任感が大きくなっていった」。今年1年はこの番号を背負う意味を感じてきたと話す。
「自分がチームを勝たせなきゃいけないってずっと思ってきて。期待を裏切っちゃうこともあったと思うんです。でも、先生たちが使い続けてくれて、この舞台で結果を残すことができた」
今年は総体予選でスタメン落ちも経験。それでも「悔しい想いをしてきたからこそ、この選手権に全部ぶつけられていると思う。自分的には感情がイライラした方が良いプレーができる」という10番は自分に対するフラストレーションもエネルギーに変えて、最後の選手権に臨んでいる。
「武南としても、(冬の選手権は)全国大会に出られていない。自分たちの代がチャンスだと思っているので、絶対に全国に出たいと思います」。普段の練習や試合から、武南の全国行きを願って応援してくれている人たちの存在も感じている。「やっぱり結果でしか、その恩返しっていうのはできないと思っているので、そういう人たちも全国大会に連れていきたい」と力を込める。
「多分次が一番難しいと思う。去年の聖望も昌平に勝った後に負けた。チームとして緩むところもあるかもしれないけど、そこは(平野)琉斗とか俺中心に気を引き締めたいなって思います」。卒業後はプロ選手も多く輩出している強豪大への進学を予定している武南のエースナンバー10は「次は2点ぐらい決めたいです」と準決勝もゴールという結果でチームを高みへと導く構えだ。
石黒登(取材・文)


