[選手権]昌平GK土渕璃久、197cmの大器が“自分の舞台”で躍動。PK戦でチームの敗退危機救う2連続ストップの大仕事

197cmの大器がチームの危機を救った。昌平GK土渕璃久(2年)は準々決勝の浦和学院戦でGK小野寺太郎(3年)に代わり、PK戦を前にした延長後半11分からピッチへ。負ければ2年連続の8強敗退というプレッシャーの中、見事2本のPKを止め、昌平をベスト4へと導いた。
「キーパーコーチには『半分飛べば(ゴールが)半分隠れるんだから、冷静にいつも通りやれ』って言われて。練習でもたくさん止められていたので、PKになったら勝てるなっていう自信はありました」と土渕。その言葉どおり、2年生キーパーは堂々とした立ち姿でゴール前に立った。
1、2本目は決められたが、相手の傾向を冷静に分析。「1、2本目は両方とも利き足と対角に蹴ってきた。シュートスピードもそんなに速くなかったので、ギリギリまで見て待ちました」。
197cmの長身とリーチを生かし、直前まで待って3本目を止めると、さらに「2本以上止めないと自分が出た意味ないので」という土渕は続く4本目もジャストでストップして勝利に貢献。PK戦は公式戦では初めてだったが、「自信があったし、PKになってからは“自分の舞台だ”と思っていた」。勝利の瞬間には「いままで感じたことないぐらい気持ちよかった」と笑顔を見せた。
中学2年時、急激な成長が身体を襲った。身長が一気に伸びたことで関節が緩み、両肩を脱臼。先を見据え、FC LAVIDA時代から師事する加藤大地GKコーチと相談を重ねた末に、手術を決断する。中学3年の1年間をリハビリに費やす覚悟の選択だったが、「いまのタイミングじゃないと高校に入ってから時間がなくなると思ったし、プロを目指すうえで必要な判断だと思いました」と語る。手術を経て、高校では万全の状態に。身長はさらに伸びて197cmまで成長した。
長身を生かしたシュートストップやハイボールはストロングポイントだ。今季は小野寺が前期から正GKを務める中で「ただのサブキーパーでいちゃダメだなっていう自覚があった」。後期は浦和レッズ戦、鹿島アントラーズ戦の2試合に出場。鹿島戦は終盤に追いつかれて同点に終わったが、首位のチームに対して勝ち点を持って帰れたことは個人としても「大きかった」という。
その中で「やっぱり試合を勝たせられるキーパーにならないといけない」という土渕は、「小野寺くんのあの足元の技術とか盗めるところを盗んで、今年中に欠点のないキーパーになって、自分の長所を最大に活かせるキーパーになりたい」と先輩守護神からも学びながら成長を続ける。
今大会も「いつでもスタメンを取ってやろうっていう気持ちでもいます」と静かに野心を見せる2年生GKは、「もし自分が出られなくてもPKになるんじゃないかって、最後まで諦めずにずっと身体を動かして、PKになったら100%勝てるキーパーになっていきたいです」と意気込み。しっかりと準備をしながら、PK戦となれば197cmの超大型GKが巨大な壁となって勝利に導く。
石黒登(取材・文)


