[選手権]蕨DF中川世南、1点を追う後半途中からFWへ。「絶対に終わらせない」再逆転に繋がる同点ゴールに関与
蕨と杉戸の1回戦は互いの意地がぶつかる好ゲームに。蕨は前半11分に先制するも、その後逆転を許す苦しい展開。失点はいずれも普段はなかなか出ないようなミスが出ての形だった。主将のDF中川世南(3年)も「初戦で緊張していて、意思疎通がうまくできなかった」と振り返る。
それでも「1点ビハインドだったんですけど、自分たちの中ではもう全然逆転できるし、勝てるぞっていう気持ちだった」。勝利には点が必要な中で蕨は、後半途中から中川が最前線に入る。
ボールの収まる中川のFW起用はこれまでも何度か試してきたオプション。前線で起点となりながら、「相手の後ろも疲れてきているので、自分がかき乱して、ミスを誘って、そこから点を取ろうかなっていう気持ちで、もう前から守備みたいな気持ちで、前から追ってました」という。
すると、この中川の前向きのエネルギーが同点弾を生む。後半30分、前からボールを追い、相手DFのクリアに対して足を出してブロック。「本当にもう足もきつかったんですけど、これで負けたら最後なので、「絶対終わらせないぞ」っていう気持ちで、前から気持ちで追いました」。このこぼれ球をFW松本新(2年)が沈め、その後の再逆転劇に繋がる同点ゴールが生まれた。
北一行監督は「気持ちの部分でチームを引っ張ってくれる。彼が前線に入ると何かが起こるという期待感がある」と語る。気持ちや戦うところを個々が徹底する今年の代で、中川は主将としてピッチ内外でチームを牽引。「オフザピッチでも模範となる選手」と指揮官も信頼を置いている。
3年生は6人を残して引退。それでも初戦は引退した仲間たちが多く応援に駆けつけ、声援を送っていた。「今日もいっぱい応援しに来てくれて。辞めて受験勉強に専念するってなった人たちのためにも、絶対に負けられないなっていう気持ちで、勝ち進んでいきたいと思います」と語る。
2回戦の川口北戦に向け、中川は「今日の試合以上にタフな試合になると思う。今日以上にもう走って、気持ちを出して、絶対勝ちたい」と意気込み。「相手は初戦なので、こっちの方が勢いあると思う。もう絶対行きます」と話す主将が、次もチームを守備で、攻撃で力強く引っ張る。
石黒登(取材・文)