[総体]昌平GK小野寺太郎、「自分が止めれば負けない」。青森からやってきた守護神がスーパーセーブ連発で全国導く!
青森からやってきた守護神が今季初タイトルに貢献した。昌平GK小野寺太郎(3年)は決勝の西武台戦で好セーブを連発。3試合連続の無失点に切って抑え、チームを全国大会に導いた。
昌平はなかなかエンジンがかかりきらず苦戦。その中で「自分が止めればとりあえず負けることはないので、チームに声をかけつつ、自分のプレーに集中した。平常心を保ってゴールを守るっていうところを徹底して勝てたと思います」と話す“最後の砦”が好守でチームを助ける。
15分、相手の決定機に好反応を見せて防ぐと、26分には右からの速いクロスからチャンスを作られるもここも好守。40分には西武台の自陣からのロングカウンターで抜け出されたが、「もうかかってこいよって。決めるなら決めてみろと」とどっしり構えてシュートに反応。「自分一度目をつけたものは離さないので」という守護神は弾いたセカンドもがっしりと捕球した。
「練習の成果が出たかなと、あとは気持ち7割です。みんなを全国に連れていきたいっていう想いが出た」。53分、MF山口豪太(3年)のスーパーゴールでチームは先制。1-0で迎えた65分にはクロスからまたしても決定的なシュートを放たれたが、ここも守護神が立ち塞がる。
ボールの出所は見えなかったという中で「みんなを超えた瞬間、ボールが止まって見えたというか、ゆっくり見えて。止めるぞっていう気持ちが高まった上に身体がついてきて、手が出て、勝手に身体が動いた」。瞬時に反応し食らいつき、右手ワンハンドで弾き出すビッグセーブ。またチームを鼓舞する声や得意のハイボールでも存在感を見せ、チームの勝利に貢献した。
今大会は3試合を通して失点「0」。「GKコーチのぺぺ(加藤大地)さんとなるべく失点数は少なくいく目標だったので、そこを叶えられたのは自分的にも、チームGK的にも良い流れ作れるかなと思います」。一方で「正直、100点ではないです。セーブに関しては練習してたことができたので、そこは良かったですけど、チームを動かすとか、自分が落ち着いてパスをつけるとか、そういうセーブ以外の面でもうちょっとできたかなって感じます」と課題も語った。
小野寺は小中と青森県のリベロ津軽SC(現リベロ弘前SC)の出身。運命が大きく動いたのは第98回全国高校サッカー選手権準々決勝の昌平vs青森山田戦だ。リベロ津軽の先輩DF西澤寧晟も出場した試合で昌平は前半に3点を先行されるも、後半に脅威の粘りを見せ当時2年生だったMF須藤直輝(高知)のゴールなどで1点差まで迫り、同年の準優勝チームを追い詰めた。
当時小6だった小野寺は「先輩が何人かリベロから昌平に行っていて、自分も行きたいなって思っていた中で見た試合で“悔しいな”って、よりその気持ちが強くなって。俺が昌平に行って全国取りたい、みたいな感じで昌平に来ました」と決意。「山田を倒してからこその王者だと思っていたので、“打倒山田”で来ました」と強い想いを持って、埼玉の強豪校の門を叩いた。
「最初はそんなサイズもないし、試合も全然絡めてなかったので、こんなピッチに立てると思ってなかったですけど、自分を信じて3年間コツコツ努力してきた甲斐があったと思います」
なかなか出番を掴むことができていなかった中でも「他のキーパーにないところを自分が磨けば勝てると思ったし、ゴールさえ守れれば使ってもらえると思ったので、とりあえずそこは磨いてきました」。176cmとサイズがない分、ポジショニングとキック精度で勝負。「でかいキーパーは飛べば届くんですけど、自分みたいにサイズがないなら足で稼ぐしかないし、その移動とか身体の使い方とか、そういうところを徹底しました」。その結果、今年はプレミアリーグ開幕戦の市立船橋戦からスタメン出場。そこから現在まで正守護神の座を守り続けている。
全国大会では「青森から出てきた以上、青森のところと戦いたいです」と青森山田を倒した八戸学院野辺地西との対戦を希望。中でもGK喜村孝太朗(3年)は「1年生からずっと出てて、自分、うまいなと思っていて。敵対視じゃないですけど、勝手にライバルみたいな感じに思っているので、戦えたら、身長もそんなないですし(178cm)、同じようなキーパーなので。山田にも張り合ってるし、山田を倒したならそこも倒さないといけないなって」と意識する存在だ。
「ディフェンディングチャンピオンって言われてるんですけど、俺らの手で取ったわけじゃないし、1からチャレンジャーとして気を引き締めて俺らの手で確実にチャンピオンカップを取りにいきたい」。その中で「今日みたいなプレーをして、ゴールを許さなければ負けないので死ぬ気で止めます」と全国でも気持ちを前面に押し出したプレーで昌平のゴールを守り抜く。
石黒登(取材・文)