武南FW大熊來瑠、残留引き寄せる1G1A! 勝てない中で苦悩も大一番で「楽しくできた」
サッカーってやっぱり楽しい。武南は残留に向けて負けられないS1リーグ第17節で選手権覇者の正智深谷に2-1で逆転勝ち。FW大熊來瑠(3年)が1得点1アシストと結果を残した。
「やっぱり自分たちの代は新人戦以降、全然結果を残していなくて、(リーグ戦も)いまは降格するみたいな立ち位置にいて、「何ができるか」って考えたときにできるのがS1残留っていうのしかもう残されていないので、「絶対に勝って残そう」っていう気持ちで試合に臨みました」
「自分たちは、それぞれの役割が決まっているわけじゃなくて、その流れの中でできたことに対して、それぞれが反応して、繋がっていくサッカーなんですけど、今日は特に、去年の(松原)史季くんとか(髙橋)秀太くんとかのいたときのサッカーが再現できたかなと思っています」
密集を作ってワンタッチパスを繋ぎ、サイドチェンジやドリブルでの侵入でチャンスメイク。前半39分に先制点を許したが、後半も武南らしいサッカーを展開すると4分にスコアを動かす。
左SBの土屋愉生(3年)からのクロスに「土屋くんはああいうクロスが得意で、ここに来るっていうのもわかっていた。前半は自分がサイドの渡辺(悠)くんとかに近づいちゃって、ゴール前で接点が合っていないって監督に言われて、中で合わせるように意識しました」という大熊が反応し、ニアに潜り込む。得意の相手の前に入り込むプレーでDFの前に入り、点で合わせた。
また、その7分後には中盤でボールを持つと、俊足のMF長谷川渉(3年)のスピードを殺さない絶妙なスルーパスで決勝ゴールとなった勝ち越し点をアシスト。その後も鋭いドリブル突破でゴールエリア内に切り込み、武南のアタックを牽引し続け、貴重な勝ち点3獲得に貢献した。
昨年は新人戦、関東予選、総体予選と3冠した上の代でもプレー。一方で今年はエースストライカーとして期待される中でなかなかチームとしても結果が出ず、苦しいシーズンでもあった。
「本当に去年はずっと楽しくて。サッカーをやっていても楽しかったんですけど、今年は勝てない時期だったり、チームの雰囲気が悪いときに「楽しくない」っていう感情が少しあって。今日みたいに楽しくできたっていうことが自分の中で人生においても大事なことかなと思います」
「お父さんにもずっと「何事も楽しめ」って言われているので、それもお父さんのおかげかなと思います」。そう声をかけ続けてくれた父もかつて武南でプレーした選手で、去年、今年は父と同じ13番を背負ってピッチに立った。「去年もちょっと10番をつけたいっていう気持ちもあったんですけどね」とおどけつつ、「お父さんと同じ番号を着られて、幸せでした」と振り返る。
「やっぱりいままで1回も県2部とかに落ちたことがないと思うし、俺らの代でそういう結果を残すことは良くないことだと思っている。残留のための望みを残したっていうことは大事ですし、また来週もこれで切り抜けるんじゃなくて、絶対に勝たなきゃいけないと思っています」。
武南の歴史を繋げるため、そして下級生に県トップリーグの環境を残し、来年に繋げるために負けられない最終節。“やっぱりサッカーって楽しい”と再確認したエースがチームを残留に導く。
石黒登(取材・文)