正智深谷MF大和田悠、チームをまとめ上げた主将が影のMVP! 準決勝、決勝は親友と互いに腕章を巻いて激突「とても楽しい経験になりました」
正智深谷はキャプテンのMF大和田悠(3年)がピッチ内外でチームを支え、優勝に貢献した。
大和田は今季、腕章を巻いて関東予選優勝に貢献。総体予選でも4強に進んだチームを引っ張ったが、大会明けの第7節の深谷ダービーで鎖骨を骨折。夏場はプレーすることができなかった。
主将の離脱を境にチームは難しい時期を過ごすことになる。大和田も「外から見ることしかできなくて。中でもっと言いたいなっていうのはあったんですけど」と歯がゆさもあったという。
その中でも「自分が怪我をしている中でできることは何かなって考えた時に、外から見て気づいたことをみんなに要求する。練習の守備の強度だったり、そういうところをもっと、全国レベルに比べたら低いなと思ったので、僕が復帰した時からもう一回そこをみんなに言ってきました」。
正智深谷は夏休み中断明け2試合目となった第11節で細田学園に0-3で敗戦。このあたりが一番辛い時期でチームはバラバラになりかけていた。それでも第12節の市立浦和戦で大和田がゲームに復帰すると6-0と大勝。大和田自身も「攻守において圧倒できた」と手応えを語る。
小島時和監督は「やっぱりあいつがまとめてくれるし、市立の時にチームもちょっとゆがみだしたところであいつが1週間かけて、主体的にチームに声をかけて、徐々にまとまってきたっていう話は聞いています」と話し、DF佐藤飛友(3年)も「チームがバラバラだった時にキャプテンの大和田が声をかけてくれて、チームをまとめてくれたので、本当に感謝してます」。復帰後3試合目となった首位・聖望学園との大一番では同点ゴールを決め、逆転勝利の機運を作った。
迎えた選手権も「自分は全然目立たなくてもいいので。もうとりあえずチームが勝てるように、絶対に中盤のところは吉田(匠吾)と一緒に支配するっていう気持ちでやっています」と中盤からチームを牽引。3回戦以降はすべて1点差のゲームを勝ち上がってきた中で、決勝は後半攻め込まれる場面もあったが、「1点差でも勝てるっていうのをみんな自信を持ってやっていたので、今回もしっかりできたのかなと思います」と最後まで切れずに、8年ぶりのタイトルを掴んだ。
また、タイトル獲得に加え、個人としても今大会は特別なものを感じるトーナメントでもあった。
坂戸ディプロマッツの出身で、同期の浦和学院MF平瀬優真、聖望学園DF菅野陸斗、成徳深谷DF増田蹴人を含めた4人はいまでもご飯に行ったり、遊びに行ったりする親友。今季はそれぞれがチームで要職を務める中で準決勝では菅野と、決勝では平瀬とキャプテンマークを巻いて相まみえる少年漫画的状況に「誰も想像してないし、俺も想像してなかった(笑)」とはにかむ。
「つぶし合うのが嫌ぐらいの気持ちだった」と話すが、決勝前夜には平瀬と「お互い頑張ろうね」と激励。試合前には準決勝を戦った菅野から「俺の分まで頑張ってこいよ」と連絡をもらった。
親友との最高の舞台での80分間は「とても楽しい経験になりました」。マッチアップする回数はそれほど多くはなかったが、「もううまいっすよ。隠すのうまいし、前につけられるし、すごい自分も真似したいです」。試合後には「全国頑張れよ」。シンプルな言葉だが、想いは伝わった。
「昌平とか、埼玉は強いチームばっかりですけど、その代表として出るからには不甲斐ない試合はできないし、昌平がインターハイで優勝した以上、俺らも優勝しないといけないと思っているので、優勝を目指して頑張りたいです」。そして「また(4人で)飯に行きたいと思います」。親友たちの想いも背負って、全国での勝利報告をするべく、チームをまとめ上げ一戦必勝で勝ち上がる。
石黒登(取材・文)