正智深谷GK森穂貴、ハイボール対応で抜群の存在感!8年ぶりファイナル進出の立役者に

エース不在の難しい状況だった中で、正智深谷は伝統の固い守備で聖望学園を零封し、8年ぶりの決勝進出。守護神の森穂貴(3年)は空中戦で抜群の存在感を発揮し、勝利の立役者となった。

立ち上がりから聖望学園が押し込んでゲームを展開。正智深谷は我慢の時間を強いられた。7分には相手のエースFW太仲貴哉(3年)に抜け出されたが、最後の1対1で森が立ち塞がった。

「コースもなかったので、打ってくるのに反応しようと思っていたんですけど、自分がちょっと動いちゃって。ギリギリっていう感じでした。(自分的には)もっとできたと思います」。その後も森はディフェンスの背後のスペースを埋め、相手の抜け出しに勇気を持って対応。だが、一方で前半終盤には前に出たプレーで相手FWと入れ替わられるなど、ミスもあったことを悔いる。

「前半は自分が3回くらいピンチを作っちゃって。そこは反省しなきゃなんですけど、でもそこはもう割り切って、切り替えて、後半はもうやるしかなかったので、全部やろうと思いました」

「聖望はセットプレーとかっていうのは本当に得意なチームで、みんな身長も高いし、そこで誰が勝てるかっていったらやっぱり手が使える自分だけなので。そこは自信を持って「俺がやるしかない!」と思ってやっていました」。後半はセットプレーやクロスなどのハイボールに対して抜群の安定感を発揮。徹底して相手のストロングを封じ続け、決定機やチャンスを与えなかった。

「最近の試合でリーグ戦も含めてゼロで終わることがなかったんです」と森。選手権直前のリーグ成徳深谷戦、初戦だった2回戦の伊奈学園戦は無失点だったものの、5-4の打ち合いとなった後期・聖望学園戦や今大会も3回戦の市立浦和戦、準々決勝の浦和東戦と失点が続いていた。

「今回は1点取られたら本当にどっちに転がるかわからなかったし、そこはもうずっとクリーンシートをやろうと思ってました」。迎えた一番で3戦ぶりの無失点を達成し、勝利に貢献した。

キーパーを志したのは“選手権”がきっかけだ。小学時代もキーパーをやることはあったというが、まだその当時はフィールドもやっていた。それでも小6で見た選手権の一試合が将来を決める。

「自分もその時、キーパーかフィールドをやるか迷っていて。ちょうどナックですかね。選手権で見たキーパーが本当にかっこよく見えちゃって。本当にうまかったし、そのなんか感覚とかそういうの全部見てかっこいいなと。それで、じゃあ中学ではキーパーをやろうって決めました」

そしてこの日はその舞台で自分が躍動。「とにかく自分がいつも思い描いているのは、チームのためにプレーできるキーパー。自分の欲望とかそういうのじゃなくて、とにかく何があっても、自分が怪我をしても、とにかくチームのために、っていう想いでずっとやっています」と話す。

「決勝は埼玉スタジアムですけど、周りの環境に左右されることなく、自分のやるべきことをチームのためにっていうところをしっかり体現できたらいい」「結局勝たないと何も変わらない。ずっと全国は目標にしているところなので絶対優勝できるようにやっていきます」。堅守・正智深谷を最後方から支える守護神は、次も「チームのために」を体現し、勝利に貢献するだけだ。

石黒登(取材・文)