2大会連続の選手権出場を決めた昌平 大会を通してチームの合言葉だった「穂高の分まで」

決勝で浦和南を下し、2大会連続の優勝を成し遂げた昌平。全試合を通して選手たちが繰り返してきた言葉がある。それが「穂高の分まで」。今大会、この言葉は昌平の合言葉となっていた。

1年生の頃からレギュラーを務めるCB石川穂高(3年)は各年代別代表にも選出されてきた有望選手。最終学年となる今季はキャプテンに就任した。6月の総体予選は準決勝で敗れ涙を呑んだが、8強に終わった全国でのリベンジを期し、仲間たちと今冬も選手権予選に臨むはずだった。

しかし、7月末の練習中に左膝を大けが。手術の結果、全治8ヶ月と診断され、選手権出場は絶望となった。1年時から日本一という目標を目指してきた中で事実上の高校サッカーでの終戦。悔しくないわけがない。その中でも今大会はマネージャーとして選手たちの荷物を運んだり、試合前の円陣では仲間たちを鼓舞するキャプテンの姿を各スタジアムで見つけることができた。

腕章を託されたDF佐怒賀大門(3年)は「本当に穂高はいつも自分たちが見えない部分でも支えてくれていますし、あいつも怪我をしている中でも成長していますし、パンプアップもしている」と明かし「自分たちも逆に怪我している穂高に負けないように」と刺激をもらったという。

石川から5番を受け継いだDF田中瞭生(3年)は「準々決勝の時とか、俺が背中にいると思ってプレーしろって言われて。(ピッチには)いないけど、穂高がいるからっていうのはある。穂高の存在って本当に大きくて、自分なんかじゃ埋めることはできないなと思うんですけど、ディフェンスライン4人で力を合わせて穂高の分までやろうと毎回円陣の時に話していた」と話す。

決勝は前半28分、田中が石川の想いも乗せて左足を振り抜き先制。攻撃はもちろん、ディフェンスラインも安定した守備で今大会初の無失点で切って抑えるなど、「穂高の分まで」を体現し、2大会連続の優勝を飾った。試合後の表彰セレモニーでは笑顔で仲間たちと整列するキャプテンの姿も。カップリフトでは仲間たちに促される形で最後を務め、喜びを分かち合っていた。

MF長準喜(3年)は「ちょっと先の話になりますけど…」とした上で、「選手権の決勝だったり、自分たちが勝ち続けて、穂高を自分はピッチに送り出したい気持ちは本当に強い」と明かす。現時点で可能性は限りなく低く、メンバー入りするかどうかもわからない状況ではあるが、どういう形になるにせよ、全国大会の舞台でも「穂高の分まで」戦い、ともに日本一を目指す。

石黒登(取材・文)