聖望学園MF市原憐、これぞエースの仕事! 途中出場の10番主将がチームを3年ぶりのスタジアムに導く1G1A

これぞエースの仕事だ。ラウンド16の川越東戦、聖望学園は後半途中出場のMF市原憐(3年)が出場20分弱で1ゴール、1アシストとさすがの活躍を見せて、チームの勝利に貢献した。

2回戦後の練習で左膝と右指を負傷。怪我明けということもあり、ベンチスタートだったが、「ずっと出られる準備はしていた」という市原に声がかかったのは0-0で迎えた後半17分だ。

「前半は流れが悪くて、(中盤で)回せていてもパスばっかりでドリブル侵入がなかった。自分が出たらパスをもらって中に侵入していって、相手が嫌なことをやろうかなと思っていました」

山本昌輝監督にも「流れを変えてこい!」と送り出された10番は直後のファーストプレーからゴールエリア内に切り込んでいくと、19分、「アレックス(ペイトン有玖主)がしっかり侵入していって、ちゃんとファーを見てパスを出してくれた。ふかさないことだけを意識して流せた」とキーパーの動きをしっかりと見ながら右に流し込んでチームに欲しかった先制点をもたらす。

これで勢いに乗ると、さらに28分にはMF吉田吏佑(3年)のクロスを巧みなポストワークで落とし、MF橋本翔希(3年)のゴールをアシスト。「1、2回戦はなにもあまりできなかったので、ここで結果を残して、チームを救えたかなと」と自身のパフォーマンスを振り返った。

もともと2年生の頃までは得点を量産するタイプだったが、3年生になり味方を生かすアシストも増えたことで得点自体の数は減っていた。それでも今大会は「自主練でもシュート練を増やした」というように得点への意識を挙げ、チームを3年ぶりのスタジアムに導くゴールを奪った。

東京ヴェルディの下部出身でアイドルは同出身のMF中島翔哉(現浦和レッズ)と話すようにドリブルが最大の武器。指揮官も「周りがすごいよく見えている子」というように、相手の最後の足が出てくるギリギリのところまでボールを持ちながら相手を見て交わすドリブルは絶品だ。

また、山本監督は「人間性」の向上を挙げる。前期の市立浦和戦ではうまくいかないことにふてくされ、途中交代から試合中に指揮官に叱責される場面も。それでも「やっぱり自分が変わらないとチームも良くならないなと思って。自分を変えるように意識してチームを優先するようになりました」。キャプテン、そして10番を背負うことの自覚を強く持ち、チームを牽引する。

「やっぱりいままで1、2年で悔しい負け方をしてきているので、自分の学年ではしっかり最後笑って終われるように頑張っていきたい」。準決勝は今季リーグ戦で2敗、関東予選も敗れている正智深谷だが、得意なドリブルで引き裂き、エースの2試合連続ゴールで勝利を手繰り寄せる。

石黒登(取材・文)