「常に温かい力で包まれていた」武南GK前島拓実主将が選手宣誓で伝えたかった“感謝”の想い
第102回全校高校サッカー選手権埼玉県決勝トーナメントの開会式・公開抽選会が4日、埼玉スタジアムメインピッチで行われ、今季3冠の武南GK前島拓実(3年)主将が選手宣誓。大役を務めた前島は「これだけ高校がある中で代表してやるというところにはすごい責任感を持って必死にスピーチを考えましたし、やっぱり伝えたいことをまとめるのはすごい難しかったです。その中でなんとか自分なりの、一番のスピーチができたのかなと思います」と笑顔を見せた。
『我々選手一同、高校サッカーに夢や憧れを抱いたあの日から3年間、ここにいる仲間たちとともにこの舞台を目指して日々全力を尽くしてきました。時に躓き、思うように行かず、苛立ちを感じた時もありました。時に怪我に苦しみ、焦りを感じ、心が折れそうになった時もありました。そんな時、常に私たちには温かい力で包まれていたことを思い出します。ともに頑張ってきた仲間の励ましや応援、監督、コーチの叱咤激励やアドバイス、家族の愛情こもったサポートといたわりの言葉、そして多くの人たちの応援によって我々はいまここにいることに感謝します』
今回の選手宣誓で何よりも伝えたかったことは、“感謝”の想いだ。
「多くの応援の人たちの力で包まれていたと言ったんですけど、本当にその通りで、負けた後もいろんな人が声をかけてくれたり、勝った時は一緒に喜んでくれたり、家族に関してはもうずっとそばにいてくれて、ご飯も作ってくれて。自分がサッカーをするために一番良い環境を作ってくれたのは家族であって、そういうところですべての人に感謝という意味で、想いを込めました」。
今季は主将を務める中でことあるごとに応援やサポートの力について話してきた前島らしい言葉。そしてこれは多くの選手たちの想いでもある。そういうことを「代弁できたらという想いで書きました」と話す。
選手宣誓では続けて『我々はサッカーを通じて多くのことを学んできました。ひとつのピンチが次のチャンスを生み、ひとつのチャンスが次のピンチを誘う、奥深いスポーツです。時に敗北の涙を飲みながら、時に勝利の涙を流し、我々はここまで成長してきました』とし、『そんな我々選手一同は、一戦一戦フェアプレー精神に則ることを忘れず、全力でプレーできるすべての環境に感謝しながら、力の限り最後まで諦めず戦い抜きます。そして声出し応援が帰ってきた全国高等学校サッカー選手権大会を多くの人たちに勇気と感動を与える素晴らしい大会にすることをここに誓います。我々の熱い想いで、寒い冬を燃える冬に変えてみせます』と力強く結んだ。
県内4冠目と2006年以来となる冬の全国を目指す今大会は強豪が揃う激戦ブロックに入ったが、「『武南の山結構厳しそうじゃない?』と思う人も多くいると思うんですけど、自分たちは正直、プレッシャーとかそういうのはあまりない。いままで3冠できてきましたけど、それもいろいろな方の支えであったり、応援だったり、いろいろな要因が重なっての3冠という結果だと思うので、全然そこには慢心はなく、絶対王者という感じを出しているわけでもなく、あくまでも自分たちはチャレンジャーという気持ちでやってきた。今回の大会も天狗にならず、チャレンジャーという気持ちでどこの相手も倒すつもりでいるのでプレッシャーとかはないです」と語る。
自身としても最後の選手権へ。「幼い頃にこの選手権という舞台を、全国の舞台を実際に駒場に見に行って、そこで自分もここに立ちたいという強い夢とか、かっこいいなというような憧れを抱いて、そのために自分はサッカーをいままで続けてきたと言っても過言ではないくらい、選手権に懸ける想いというのは強くて。1年の時に選手権の舞台を経験できましたけど、やっぱり高校生活最後のこの選手権の舞台というところに込める想いは強くて、絶対に優勝という結果を残して、いままで支えてきてくれた小学校、中学校からの指導者だったり、本当に自分を支えてくれた家族もそうですし、いろいろな方々に結果で恩返しできたらなというふうに思っています」。感謝の守護神は、次は17年ぶりの冬の全国切符を獲得しその想いを伝えることを誓った。
石黒登(取材・文)