「ちゃっかり得点王を狙ってます（笑）」。

武蔵越生DF須田櫂舟（３年）は笑って話したが、その言葉の中には元FWの矜持が見えた。

３回戦・本庄第一戦の26分、武蔵越生はゴールエリア左斜め前方でFKを獲得する。須田は素早いリスタートから右足を振り抜くと、相手の意表を突く技ありFKがゴール右隅に決まった。

この場面の内幕について須田が明かす。「レフェリーが笛で止めていなかったんです。それでキーパーが壁の指示をしていて、ファーサイドががら空きだった。グラウンドもスリッピーなので、ワンバンして打てば入るんじゃないかと思って打ったら、良いコースに行って良かったです」

コースが見えていたとはいえ、しっかりとここしかないというコースに決めたのはお見事。「普段から練習していて、あのコースには自信がある」。隣には10番MF笛木亮成（３年）もいたが、「どこに蹴ると話していたんですけど、（キックは）もう独断で。外したらもう俺のせいでいいやと」蹴り込みチームに先制点をもたらした。結果的にこのゴールが決勝ゴールとなった。

これで今大会は３点目。初戦となった２回戦の山村国際戦ではCKからのヘディングと、２次攻撃から決めた。準々決勝の細田学園戦はゴールはなかったものの、いまだチーム最多得点者だ。

もともと１年時はFW。しかし、前線は機動力を重視する武蔵越生のサッカーとマッチせず、目立った活躍をすることが出来なかった。そういった中で185cmの長身とキックの良さを買われ、２年生の夏にCBにコンバート。初挑戦だったが、本人も「正直やってみたいなという方が大きかった」と前向きに捉えつつ、先輩DFたちに手ほどきを受けながら練習。「やっぱり一番は身体をバチンと当てて、競り勝つところが気持ちいい」とDFの魅力を感じながら成長している。

本庄第一戦でも持ち味の球際を生かした守備で相手を抑え、ロングスローを何度も跳ね返した。守護神の関根拓郎（３年）、コンビを組む沼田大知（３年）ともに何度も声を掛け合いながらS１リーグ最少失点（６試合６失点）に抑える堅牢なディフェンスで相手をシャットアップした。

理想のCB像はセルヒオ・ラモス。「点も取れて、カバーリング範囲も広いし、対人も強いし、競り合いも強い。自分はそこを目指しています」と攻守でチームを勇気づけられる選手を目指す。

準決勝の相手はプリンスリーグ関東１部所属で今大会の優勝候補筆頭の昌平に。守備の時間帯が長くなることが予想されるが、粘り強く凌ぎ、そしてセットプレーでゴールをこじ開けたい。

石黒登（取材・文）