小さいゴールキーパーたちの希望になる――。関東1部・桐蔭横浜大は26日、Jクラブ内定者合同記者会見を行い、来季からJ2に昇格する藤枝MYFCに内定したGK北村海チディ(4年)は「自分の特徴はシュートストップだったり、攻撃の起点となれるキック力だったり、そういうところを見てもらいたいので、Jリーグの舞台で、キーパーなんですけど、アシストを記録できるように頑張っていきたいと思います。自分のようにGKで身長が小さくてもできるんだぞというのを、自分が代表して、しっかりJの舞台で暴れたいと思います」と意気込みを語った。
埼玉県の出身で、上木崎サッカースポーツ少年団でサッカーを始め、中学年代はグランデFCでプレーした。しかし、グランデでは遠征先の大会で出場することはあったものの、公式戦の出場はほぼなし。当時の身長は160cm半ば。「やっぱり身長がないときついかな」と思ったこともあるが、それでも「高校になった時にみんなを見返せるように。自分的には準備期間みたいに思っていました」とその後のジャンプアップを見据え、そのための「準備期間」と捉えていたという。
また、この時、「自分の能力を引き出してくれた」という、加藤大地GKコーチとの出会いも大きかったと語る。現在はFC LAVIDA、昌平高でコーチをしており、昨年は西村遥己(新潟)をプロに送り出した人だ。「ペペさん」と慕う加藤コーチとのエピソードは「ありすぎて(笑)。でも毎回キーパー練習は楽しかった」と話す。北村にとっては初めての本格的なGK指導。「初めてちゃんとしたキーパー練習をした時、片足で待って、「バイーンで飛ぶんだよ、バイーン」とかもう擬音で言われて、こんな感じかなって思ったら、自分はそっちの方がわかりやすくて」。また、セービングの伸びやハイボール時のジャンプ力などを、より引き出してもらったという。卒団の際には「一番お前のこと、期待してるからな」と言われたことはいまでも覚えている。
その後の活躍は知っての通りだ。関東第一高では1年時の選手権でスクランブル出場した中で堂々たるセービングを見せて名を高めた。高校2年時にはインターハイで優秀選手にも選出。高1の時からラブコールを送っていたという安武亨監督が指揮する桐蔭横浜大では1学年上に早坂勇希(川崎)がいたこともあり、なかなかトップで出場機会を掴むことはできなかったが腐らずに先輩の橘田健人(川崎)や鳥海芳樹(甲府)のシュートを自主練でストップし技を磨いた。また、この時期に社会人チームで揉まれたことがひとつ分岐点になったと話す。昨年は早坂の負傷を受け、終盤の3試合に出場した中で自信を深め、安武監督も「歴代No.1くらい跳ぶ」と話す強靱なバネを武器に今季は正GKとして活躍。現在開催中の全日本大学サッカー選手権(インカレ)でも決勝進出を果たし、国立競技場で行われる元日決戦で悲願の初優勝に王手をかける。
身長も高校時代に一気に伸びて178cmに。それでもGKとしては小さい方だ。「小さいGKは身長の高いGKよりも、やらなきゃいけないことは多い。グランデ時代にしっかり準備できたのは、本当に良かったなというのは思います」。あの頃の準備期間があったからこそ、いまがある。
「日本でも結構身長が小さいキーパーって多いじゃないですか。その選手たちに夢と希望を与えられるように、自分が代表になって頑張りたい。そのためにもまずは試合に出て、その中で自分の特徴であるシュートストップだったり、小さくてもこういうポジショニングを取れれば止められるんだよとか、そういう細かいところを自分のプレーを通じて伝えて、「小さいキーパーでもできるんだよ」というのをしっかりと見せていきたいなと思います」
高く飛び上がるためには、一度深くしゃがみこまなければいけない。小さなGKの希望となるべく、北村はあの頃と変わらず戦うための準備を重ね、プロの世界でも高くジャンプする。
石黒登(取材・文)
GK 北村 海 チディ(キタムラ カイ チディ)
■生年月日
2000年9月17日
■出身地
埼玉県
■身長/体重
178cm/78kg
■経歴
上木崎サッカースポーツ少年団→GRANDE FC→関東第一高等学校→桐蔭横浜大学(在学中)