昌平高校・針谷岳晃選手、ジュビロ磐田への入団記者会見全文公開

針谷入団会見5

24日(月)、昌平高等学校にて、来季よりジュビロ磐田に加入することが内定している針谷岳晃選手の入団記者会見が行われた。埼玉県久喜市出身の針谷選手はチームでは主にボランチとしてプレー。高い技術と戦術眼を持ち合わせており、展開力を駆使したゲームメイクと攻撃力にも定評がある。今夏行われた全国高校総体では初出場のチームを3位に導く原動力となった。また、ここでの活躍が認められU-19日本代表にも選出されるなど、今後の日本を背負って立つ人材の一人として注目されている。今回は記者会見の全文をお届けする。

城川雅士校長

この度、本校サッカー部所属の針谷岳晃くんが、ジュビロ磐田さんとの仮契約が成立し、入団が内定いたしました。先日同じ場所で松本泰志くんの入団会見も行なっておりますが、この松本くん、そして今日の針谷くんは、本校の歴史に新たな1ページを加えてくれました。高校時代は成長がすごく激しい3年間ですが、1年生の頃から針谷くんを見ていて、本当に試合を見るたびに存在感が増して、明らかに成長しているというような感じをすごく実感していました。本当に様々な努力をして、こういった場にたどり着けたということで、本人の努力に敬意を表したいと思っています。

一つだけ付け加えると、実は学校の成績の方なんですが、針谷くんはサッカーだけじゃなく、いわゆる学習の方でもものすごく努力をする生徒でして、入学時からどんどん成績を上げてきまして、最近ではクラスで1位の成績を取るようになっています。本当にあらゆる方面に全力で立ち向かい、全力で努力する、そういったところがこういった結果に結びついたのではないかなという風にも思っております。

ここまで針谷くんに関わって育てていただいた小学校時代の指導者、また中学校時代の指導者、この学校でいろいろ関わっていただいた方、そして何よりもご家族の方々に心から感謝と敬意を表して、校長からの挨拶にかえさせていただきたいと思います。

針谷入団会見1

ジュビロ磐田・加藤久GM

今日このように多くの報道関係の皆さまと学校関係の皆さまに、針谷選手の来季のジュビロ入団内定のご報告をさせていただけることを非常に嬉しく思っております。本人の方は将来の選択肢として、いろいろな選択肢があったと思いますが、その中でジュビロを選んでいただいたことに非常に感謝しておりますし、またご家族の皆さん、それから針谷選手を育てていただいている学校関係の皆さんにも本当に感謝しております。

我々としてなぜ針谷選手にオファーを出したかといいますと、よくサッカー選手に良い選手というのはどういう選手かと聞くと、「上手い」「速い」「強い」「かしこい」というようなことを言われます。針谷選手はそういう要素を持っている選手です。強いという部分で言いますと、皆さんあれ?と思われる方もいるかもしれません。本人は見た通り、華奢な身体ですけども、我々のチームに練習参加した時、それから本人とのいろいろな受け答えを通じて気持ちの強さといいますか、物怖じしないものを持っているなという風に強く感じました。これはなかなか大事な要素でして、プロになれば自分の意思というものをしっかり持って、やはり今までのように手取り足とりとういう風にはいかない。放っておかれることもありますから。そういう意味で自分の人生を自分で作っていくっていう部分で、気持ちの強さみたいなものを感じました。

それから本人を見ていればわかりますけど、非常に明るさといいますか前向きさといいますか、そういうものを持っている。そういう要素は非常に大事なものです。我々としては彼を、選手でいったら(ハビエル・)マスチェラーノというアルゼンチンの選手がいますけども、彼のように中盤でボールをかき取るような仕事を期待しているわけではなく、どちらかというと(スペインのアンドレス・)イニエスタやシャビ、日本でいったら川崎フロンターレの大島(僚太)選手のように、ボールを持った時にゲームを作ってくれる、決定的なシーンを作ってくれる、そういう要素を期待しております。

もちろんプロとして長く続けるためにも、この今の身体に多少の厚みとか、そういうものをこれからつけていく必要はあると思いますが、今の彼が持っているものの中で、先ほど言った4つの要素というのはこれからどんどん磨いていけば、日本でもトップクラスになれるという評価を我々はしております。技術、戦術、判断力とかそういうものに関しては、プロの練習に加わってもどこかでブレーキがかかるとか、ぎくしゃくするということはまったくなく、初めて練習に参加してもあれほどスムーズにプレーする選手はなかなかいなかったように記憶しております。

そういう意味で彼が将来ジュビロの中盤を、ゲームをコントロールできるような選手として我々はオファーを出させていただきましたし、本当に我々の期待するプレーヤーになれるという確信を持っております。先程、校長先生から成績も良いという話もありましたが、そういう要素も大事です。そしてもう一つ、人に可愛がられるという要素は非常に大事だと思います。うちにジェイ・ボスロイドという選手がいますけども、彼を非常に可愛がっているんですよ。(練習に参加していた時は)フィジカルトレーニングなんかもジェイと2人で。ジェイは190cmありますから凸凹コンビでアップをやっていました。そういう中でもまったく物怖じせずやっていましたし、我々のプロの選手たちからも非常に可愛がられていた。こういう要素はプロとして成功していくために、実は非常に大事な要素だと私は思っています。

これからもちろん課題もあると思いますけど、自分に足りないものをしっかり積み上げていけば、日本のサッカーの中心にいれる素材だといういう風に思っております。本当に今日はこういう形で皆さんに内定の発表をできたことを喜んでおりますし、今後とも針谷選手の成長に期待していただきたいという風に思います。

針谷入団会見3

藤島崇之監督

先日(サンフレッチェ広島に)入団が内定しました松本泰志に続き、我が校2人目のJリーガーということでスタッフ一同大変喜んでおります。杉戸町を中心に地域の方々にも支えられ、応援していただいている中でこういった選手が育ってきてくれたこと、また本当にいつも応援があったからこそ選手が活躍できているという風にも思っております。

針谷につきましては、技術的な部分は中学時代から非常に高かったという風に思っております。言葉でいうとストレスなく、サッカーをできているなと。ストレスなく、技術的なものを表現できる選手という風に思っております。あとは本当に華奢な身体ですけども、例えばキックの精度一つにしても、ただ精度が高いだけではなくて、力強いシュートが打つことができたり、そういった部分が高校年代において非常に良くなってきた点かなという風にも思っております。

これからプロになっていくうえで、また大切な要素を兼ね備えていける人材かなとも思っております。彼自身も高校1年時から高校総体予選、リーグ戦等で公式戦にも数多く出場した中で力をつけてきました。特に高校2年生の時にはプリンスリーグの方でも強豪チームと試合をさせていただく中で、本当に飛躍的に力をつけてきた選手であるというようにも思っております。

3年になってからはもちろんチームの中心ということで、高校総体での第3位という結果の原動力、並びにその活躍もあった中でU-19日本代表にも選出されまして、SBS国際サッカー大会にも参加させていただきました。その中で海外の選手相手にも物怖じせず、もちろん課題はあったと思いますけども、技術的な部分は出せた部分はあったということで、本人からも感想がありました。本当にそういった環境で揉まれながら、今後も成長していく選手なのかなというようにも思っています。

見ての通り華奢な身体というよりも、中学生か?というような体格ですので、逆にいえば今後これが伸びしろになってくれればと。フィジカル的な要素は間違いなく、今後成長し得る部分かなというように思います。ですので、今後はぜひジュビロ磐田さんの方で鍛えていただきまして、本当にいろいろな人に支えていただいているということにも感謝をしながら、その感謝をちゃんとプレーの中で表現するというところも大切にしてもらいながら頑張ってもらいたいと思っています。

性格的な部分でいっても、どちらかというとあまり口数の多いタイプではないですが、プレーの面でチームを引っ張ってくれています。今後選手権もある中で、本人は高校でやり残したことは、チームが掲げている日本一だという意識もあると思いますので、その目標に向けて今集中している状況です。今後はまた良い意味で注目をしていただきながら、またそれを本人が良い意味でのプレッシャーと感じながら成長できるように我々も応援していきたいと思っていますし、残り少ない高校生活の中で私が監督としてやるべきことは一つでも二つでも吸収できるものは吸収させて、成長できるところは成長させて送り出すことだと思っております。

針谷入団会見2

針谷岳晃選手

来季からジュビロ磐田に加入することが決まりました昌平高校の針谷岳晃です。小さい頃からの夢であったプロサッカー選手を、ジュビロ磐田という歴史のあるクラブで叶えられたことをとても嬉しく思います。また、今まで支えてくださった方々に感謝し、少しでも早く試合に出れるよう、日々の練習に真剣に取り組み、人としても成長できるように頑張っていきたいと思います。インターハイでは3位という結果に終わり、とても悔しい思いをしたので、今度行われる全国高校サッカー選手権では日本一という目標を達成できるように、まずは埼玉県予選を優勝できるようにしっかりと普段から成長していきたいと思います。本日はこのような場を設けていただきありがとうございました。これからも応援よろしくお願いいたします。

質疑応答

——昨年度は大南拓磨選手や小川航基選手、今年は藤川虎太朗選手と針谷選手と高校年代の選手を獲得されているが、そのあたりのチーム方針は?

服部年宏強化部長:3年前に加藤GMと話をしたんですが、それまでは大学生をメインにジュビロは取ってまして。しかし、僕らが考えるクラブという中で、チームへの愛というか、そういうものを育てるためにも、やはり高校生からしっかりと育てて、自分たちの血の色というか、そういう選手を育てたいという想いがあり、最近高校生を積極的に取るようにしています。高校を卒業する時に大学という選択肢ももちろんありますが、大学に4年いくつもりでしっかりとプロとして準備して、大卒1年目と高卒5年目、どちらが力がついているかといえばやはり高卒ということで、我々でしっかりと育てるために高校生を獲得しています。

——針谷選手を見初めたきっかけは?

服部:先程少し話にも出ましたが、東福岡の藤川選手を正直最初にリストアップしてまして。その試合を観に、広島で行われたインターハイに1回戦から行きました。(2回戦も)もちろんリストアップしている選手なので、若干東福岡よりで観ていたんですが、いざ試合を観始めたらちょっと相手に嫌な選手がいるなと。小さいけど相手の隙をつくというか、そういうプレーヤーがいるなとまず思って。さらに結果として最後コーナーキックを直接入れるなど、そういう活躍もあり、そこで自分たちの方もちょっと調べたりしまして。そのあとU-19のSBSの大会があったんですが、そのU-19の監督の内山(篤)さんという方が、もともとジュビロの監督だった方で、お話を伺って非常に良い選手だということで、こちらとしてはさらに(オファーに向けての)拍車がかかった形です。

——針谷選手が目標とする選手、得意とするプレーは?

針谷:いま目標にしている選手は、フロンターレの大島僚太選手です。プレーも少しかぶるところがあるので、そこは目標にしています。自分のプレーの特徴は、ボールを取られないということがいつもやっているベースなのでそれと、得点に絡むこととキックの精度が自分の特徴だと思います。

——ジュビロ磐田の練習に参加した時の印象は?

針谷:やっぱり練習に参加してみて、周りの人とかもすごい優しくて、ご飯とかも連れていってもらったりして。とても馴染みやすかったです。そういうのは初めてだったので嬉しかったです。やっぱり名波さんのところでやりたかったというのもありますし、そういう面でジュビロを選んで良かったと思います。

——今込み上げてくる想いは?

針谷:緊張してます(笑)。

——将来の目標は?

針谷:今の近い目標は、今日もU-19の試合がありますが、W杯に出れれば自分も選ばれる可能性があるので、今はそこに選ばれるように頑張りたいですし、将来的には五輪だったり、A代表の中心になれるような選手になりたいです。

——磐田ではどういう風に呼ばれたい?

針谷:みんなにタケと呼ばれているのでそれが一番良いです。

記者会見後

——会見を終えて感想は?

針谷:緊張しかしなかったです(笑)。(サッカーの試合と比べて)10倍くらい緊張しました。

——昨日の夜から緊張していた?

針谷:意識すると緊張してしまうので、あまり意識しないようにしていました。

——ユニフォームに袖を通してみて。

針谷:これからはいろいろな人に見られる立場になったので、行動もしっかりわきまえていければいいかなと思います。

——練習に参加した時のチームの雰囲気が決め手となった?

針谷:それよりも名波(浩・監督)さんの存在というのが一番大きかったですね。評価もしてもらっているので。名波さんの下でできたら、自分的にもっと吸収できるものもあると思いますし、成長できると思いました。

——実際、名波監督にはどんなことを言われた?

針谷:自分の思うように自由にやれと。自分の良さを出せと言われました。

——一部の報道では名波監督の現役時代に似てるというコメントもあったが、それは直接聞いた?

針谷:いや、聞いてないですね。あとで記事が出て知ったのでビックリしました。

——針谷選手にとって名波監督はどういう存在?

針谷:もうレジェンドです。

——会ってみてどうだった?

針谷:楽しかったです。楽しい人でした。でも時には厳しいので、そういう部分でメリハリがしっかりできているというのはいいところだと思います。(サッカー観も)多分自分と似ていると思います。そういうところでは身近で聞ける部分もありますし、実際にボールを蹴っている姿を見て、こういう蹴り方もあるんだなというのを吸収できたりすると思います。

——ジェイ選手に可愛がられているということだが、それは自分から積極的にコミュニケーションを取りにいった形?

針谷:いや、2人組で余ってしまって。ジェイ選手が相手をしてくれて、すごい可愛がってもらったので嬉しかったですね。

——片言の英語で?

針谷:そうですね。自分はあまり得意ではないので、数を数えたくらいです(笑)。

——高校の成績も良いということだが、得意教科は?

針谷:いや、あまりないですけど。去年は数学が好きでしたね。今年は文系なのでなかったですが。

——クラスでトップということだが、3教科トップ、それとも総合で?

針谷:全教科ですね。8教科で。でも英語はそんなに得意ではないです。ある程度ですね。

——練習でご飯に連れて行ってもらったということだが?

針谷:あと映画にも連れて行ってもらいました。昼ごはんは(清水)貴文くんにおごってもらって。その時は(小川)航基くんや荒木大吾くんとかもいました。夜は櫻内渚くんに焼肉に連れて行ってもらいました。楽しかったですね。

——周りの選手も受け入れ態勢を整えてくれたと。

針谷:そうですね。入りやすくて、航基くんとかもすごいよくしてくれたので。プリンスでやっていたので、ちょっとだけ知ってもらえていた。それで話せたのでそれは良かったですね。

——小川選手らとともに、これからのジュビロを背負って立つ選手と評価を受けていたが、奮い立つものはあった?

針谷:そうですね。去年まで航基くんのことは偉大な人としか見ていなかった。その人と同じクラブにいれるということは光栄ですし、松井(大輔)選手もすごい人なので、そこは誇りを持ってやれればと思います。

——プロになったらやはりフィジカルを重点的に鍛えたい?

針谷:そうですね。ジュビロのスタッフにも言われているので。ある程度は身体もつけなければいけないですし、そこは自分が努力して変わるところなので。ご飯の量とかもそうですし。ずっと意識してやっていけば成長すると思うので。そういうやってできるところは伸ばしていきたいですね。どうしてもセンスは生まれつきの部分もありますが、フィジカルはやった分だけついてくると思うので、そこは入ってからと、入るまでのこの期間でしっかりとやっていきたいと思います。

——高校レベルではほとんどボールを取られない自信もあると思うが、実際ジュビロの練習に参加しても手応えはあった?

針谷:そうですね。ゲームをやった時もあまり取られたりはしなかったので、そういうところは自信を持ってできました。

——今年は点を取る意識も高くなったと思うが?

針谷:やっぱり今年のチームは結果というのを、監督からも始まる前に言われていたので、そこを自分が点を取ってやるという気持ちもありますし、自分がフォワードに点を取らせるっていうのも仕事なので、そういうところは言われ続けてきたことがある程度はできてきたかなと思います。

——先程、話にも出たが、大島選手のプレーは意識している?

針谷:やっぱり一緒にやってみてもすごい上手いですし、試合とかを見ても全然ボールを取られないですし。尚且つ、得点に絡めることができているので、そこはすごい尊敬しています。

——同じチームの松本選手とは仲間でありライバル?

針谷:そうですね。昌平のプロ1号は取られちゃったんですけど(笑)。J1出場1号になれるように頑張っていきたいと思います。

——まず目標は試合出場?

針谷:そうですね。やっぱり試合に出ないとサッカーも楽しくないと思うので、試合に出て尚且つ、自分が良いプレーをできればこれからの将来にも繋がってくると思う。そこは1年目だからじゃなく、1年目から出てやるという気持ちでいきたいと思います。

——以前にトニ・クロース選手を目指していると言っていたが、少し変わってきたところはあるか?

針谷:そうですね。やっていくうちにクロース選手よりはドリブルをする選手なので、そこで五輪とかで大島選手を見て。あとは柏木(陽介)選手もずっと好きだったので、左足ですけどキックの精度がすごい高いので、見習っていければいいかなと思います。

——散らすというよりも、得点に絡む選手、前に出て行くように選手に目がいくようになってきた?

針谷:そうですね。自分自身も縦パスを出して尚且つ、自分もそこに入っていくっていうのを意識してやっていますし、うちのサッカー自体もそこを崩すというサッカーでやっているので。選手権とかでは引かれるかもしれないですし、マンツーマンとかもあると思うんですけど、ここまでやってきたことで成長したと思いますし、自分でも外せるという自信はあるので、そこは夏で成長できたところだと思います。

——今週末から選手権が始まるが意気込みは?

針谷:埼玉栄で勝ったら武南というのは、2年前と相手がほぼかぶるので。そういうところは縁を感じますし、今年は絶対にいかなければいけない、他の学校には優勝は取らせないという気持ちでやっているので。関東大会は県では逃してしまったので、残りは全部取るという気持ちでやってきました。そこはチーム一丸となってやっていければいいかなと思います。

取材終了後にはサンフレッチェ広島に入団が決まっている松本泰志選手が登場。ともに来季から身にまとうユニフォームに袖を通し、ガッツポーズで写真に収まった。今季の昌平は針谷、松本に加え、トップの本間椋選手など、逸材も揃っており楽しみな陣容となっている。埼玉県予選を制し、全国大会での躍進なるか。まずは29日(土)、埼玉栄高校との3回戦に臨む。

石黒登(取材・文)