[高円宮妃杯U-15]浦和L JrユースMF増田彩衣里、チームを勢いづけたキャプテンの同点ゴール!悔しさを力に「最高の仲間」と掲げた日本一

敗戦の記憶を力に変えた主将が、再び巡ってきた大一番でチームを勝利へと導いた。高円宮妃JFA第30回全日本U-15女子サッカー選手権大会決勝。浦和レッズレディースユースのMF増田彩衣里(3年)主将は、後半2分に貴重な同点ゴールを決め、“3冠”達成の立役者となった。

「去年は本当に悔しかった。でも、今年は3冠を取ろうと決めて、この最後の大きなタイトルを取れたことは、本当に最高ですし、最高の仲間と最高の舞台でその目標を達成できたのは本当に嬉しい」。そう語る表情には、キャプテンとしての責任と安堵、そして達成感がにじんでいた。

昨年のファイナルでは2点を先行しながらも後半に追いつかれ逆転負け。「(前回)2-0になった時、どこかに隙ができた。今年は何点取っても集中を切らさずに戦うことを徹底した」。悔しさを糧にして臨んだ決勝戦。前半は苦しい展開が続いたが、後半に入り試合の流れを引き戻した。

「後半はみんなが冷静になって、ボランチの河合選手を起点に、仙石選手や片岡選手も絡みながら、モビリティのある攻撃ができた」。すると迎えた後半2分、増田が決定的な仕事を果たす。

仙石がボールを持った瞬間、「近寄るよりも、遠くにスペースを取った方がシュートできる」と判断。絶妙なポジション取りから仙石のラストパスを右足で合わせ、ファーサイドに冷静に流し込んだ。「あそこで点を決めないと苦しい時間が続いたと思うし、延長にもつれ込む可能性もあった。だからこそ、決めきれてよかった」。まさにキャプテンの意地がもたらした一撃だった。

後半は左サイドで起点となり続け、特徴の縦突破やそこからのクロスでチャンスメイク。本人は「テンポをずらすっていうところを自分の中で考えていたんですけど、テンポが1、2、3…って同じテンポで行っちゃって、足だけで抜いているような感じがしていたので、もっと突破の質を上げていきたいと思いました」と反省していたが、相手にとっては明確な脅威となっていた。

昨年は右サイドに配置されていたが、「目の前の相手ばかりに集中しすぎていた」と反省。今季は仙石との連携や周囲を使う意識を強め、「自分のプレーの幅が広がった」と手応えを口にした。

インタビューでは「最高の仲間」というフレーズを繰り返し使っていた。「オフの時間も本当に仲が良くて、みんなで笑い合って、本当に楽しくて。でも、サッカーになったら、みんな集中してサッカーに対してしっかり真剣に取り組めていた」。オンオフをはっきりしながら、互いに切磋琢磨し合って成長。だからこそ、「この仲間で優勝できたことは本当に嬉しく思っています」。

また、普段はアカデミーの一員としてWEリーグで運営サポートをしている中で、自分たちのために「WE ARE DIAMONDS」が響いた場面では「浦和レッズとしての誇り」を感じたという。

来年からはユースチームへ昇格する。今年もユースに帯同する時間が多く、高校生年代の「強さ」を肌で感じてきた。「体格とか、キックの飛距離とか、やっぱり高校生のフィジカルの強さは実感しました。そこは自分ももっと強化していかないといけないと思っています」。高校生となる来年はフィジカルやキックの質も含め、さらなる成長が求められるフェーズへと突入していく。

「自分は足の速さが武器なので、そこでの突破とかシュート練習も最近はだいぶしていて、そういうところはストロングポイントだと思うんですけど、でも味方を使った時の即興性、その場でのパス回しの即興性がまだ自分には欠けていると思うし、もっとパスとかを丁寧にしたり、時間帯を考えて、どのようなプレーをするべきか、そういうところを考えていきたいと思います」

目指すのは、マンチェスター・シティでプレーする日本女子代表の藤野あおばや、スペイン代表ラミン・ヤマルのような、観客を魅了できるアタッカー。「スルーパスや突破力、そしてアイデアのあるプレーで、観ている人をワクワクさせたい」。その視線の先には、確かに世界がある。

「これからユースに上がって、ユースでの全国大会とかもあるし、ユースの試合とかでしっかり結果を出して、世代別の日本代表に選ばれていきたいと思っています」。敗戦の記憶を力に変えた主将が、中学年代で日本一に輝いたことを良い意味で自信に変えて、ユース年代でも飛躍する。

石黒登(取材・文)