[選手権]少ない出場時間の中に“凝縮”させた3年間。武南の中体連出身FW安藤大翔が絶妙ヒールで決勝アシスト

「自分がこの試合の流れを変えるんだっていう強い気持ちで、試合に挑みました」。0-0の後半37分、武南FW安藤大翔(3年)はピッチへ。今年は怪我でプレーできない期間もあった中で「この舞台で活躍するっていうのが夢だった」というCFが少ない出場時間で仕事を果たした。

40+1分、右サイドからの崩しで、MF鞭馬小太朗(2年)のパスをヒールで落とし、10番MF有川達琉(3年)の決勝ゴールを演出。冷静な判断で、勝利を呼び込む絶妙なアシストだった。

「自分で行きたい部分もあるんですけど、チームが勝つために自分がどう動けるか、やっぱりチームのためにっていうので、一番良い状態で打てる選手に打たせたいなっていうのがあった。有川くんは前に入った時に、近くにいてくれる選手。それを信用して落としたのがアシストという形になった」。勝利を最優先する判断力。チームプレーに徹する姿勢が、試合の命運を分けた。

練習試合の中でも得点に絡めるシーンも多く、「調子は上がってきてるなっていうのはあった」と安藤。「あとはこの舞台で披露するだけだったので、その中で点に絡めたっていうのはすごい自分の中で嬉しく思いますし、自信にも繋がるかなと思います」と会心のアシストを振り返った。

今年はセカンドチームのS2リーグを主戦に10番を背負って攻撃を牽引。トップチームでの出場は新人戦決勝以来となるが、その相手も同じ西武台。「自分が出た試合で負けちゃったっていうのもあって、自分は他の人よりもやっぱり西武台に対しての想いというか、やってやりたいっていう気持ちはすごいあったので。本当に勝ててよかったです」と因縁の相手に雪辱を果たした。

東浦和中では両足が蹴れて、得点力もあるボランチとして活躍。10番主将として1つ下の弟・優翔(川口青陵)とともに県学校総体を制し、関東大会も突破して全国中学校サッカー大会にも出場。ちなみに5人兄弟の長男で、三男の勇翔は浦和レッズジュニアユースでプレーしている。

高校は「自分がどこまで通用するのか」、また「小さい頃からの夢だった」という、全国高校サッカー選手権出場を果たすために武南を選択。その中で「本当に1年生の時は周りがクラブチーム出身者ばかりで、みんなうまいし、そのスピード感についていくので精一杯だった」という。それでも「周りから吸収できる部分もありますし、本当にこの高校生活は毎日成長ばかりで。だから本当に武南に来て良かったと思っているし、やっぱりこの武南で選手権に出たい」と話す。

中学時代も得点感覚は高かったが、武南では2列目やFWとなり、よりフィニッシュにこだわるように。「本当に自主練も毎日遅くまでやってきて。(出場時間は)短い時間ですけど、その短い時間のためにたくさんの時間はやっぱり費やしてきたので。だからどれだけ出場時間が少なくても、あそこの1点っていうところにはこだわりたいなって」。この日の出場時間は追加時間を含めてわずか7分ほど。その中でも3年間準備してきた成果を見せて武南の勝利に貢献した。

「中学で全国に出た時は、初戦で負けちゃって、長い時間全国でサッカーができなかった。なのでやっぱり高校では全国に引き続き出たいっていう想いも強いですし、全国に出て満足するんじゃなくて、全国でより多くの試合を積んで、やっぱり優勝っていう目標に向かってやっていきたいっていう想いがあります」と安藤。そのためにも残り2戦も自分の役割をまっとうする。

「多分準決勝も今日みたいに流れを変えるっていう重要な役割があると思うので、そこは今日の試合に引き続き、やっぱり得点に絡む、得点への意識っていうのは持ちつつ、いつでも出られる準備して、試合を決定づけるプレーができたらいいなと思います」。中学年代に続く全国出場を目指し、たとえ5分でも、10分でも与えられた時間の中で流れを変えて、試合を決定づける。

石黒登(取材・文)