[選手権]朝霞西FW杉川優心、不在のエースから「頼むぞ」。託された2年生FWが豪快ヘッドで値千金の同点ゴール!

不在のエースに代わり、2年生FWが大仕事だ。朝霞西は0-1の前半38分、ショートコーナーからDF三上恒平(3年)のクロスにFW杉川優心(2年)がヘディングで合わせて値千金の同点ゴール。苦しい展開の中で飛び出した一撃が、チームを初の16強へと導く道を切り開いた。
「ずっと多久島くんから『頼むぞ』って言われてて。ずっと多久島くんばっかり頑張っていたので、自分はやっぱり多久島くんに恩返ししたいなっていう気持ちがあって、今日頑張りました」。
朝霞西は1回戦で決勝弾を決めた、エースのFW多久島啓人(3年)主将が受験で不在。その中で多久島の想いも背負ってピッチに立った杉川が、1点を追う前半終了間際にスコアを動かす。
「本当はあそこにいるはずじゃなかったんです。たまたまクロスが上がって“来た!”と思って飛んだら当たって入っちゃいました」。普段は多久島が出ていることもあり、ショートコーナーの指示はわかっていなかったというが、ポジションを取り直すとクロスにFWらしく反応し値千金の同点ゴール。「やっぱり多久島くんのためにってのがあったので、決められてめちゃくちゃ嬉しかったですし、あとで多久島くんに連絡しようかなって思ってます」と笑顔で振り返った。
また、押し込まれる中でも「先生からは背負って味方使うことを言われていて、今日は背負う系を主としてやりました」という杉川は、味方が守って繋いでくれたボールをDFを背負いながら収めるプレー。本人はコントロールした後のボールが浮いてしまったことを反省していたが、割田芳輝監督も「前1枚でよくボールを収めたりとか、そこはかなり大きかったかな」と話す。守備面の貢献度も大きく、相手ボールを後ろから刈り取りに行き、取り切ったシーンもあった。
1-1のまま突入したPK戦では7人目に登場。「もう蹴る前から仲間に「ふかすなよ」って言われたので、ふかさないようには意識しました。キーパーに読まれたけど、(決められて)良かったです」。しっかりと蹴り抜いてこれを成功させると、その後、チームは7-6で勝利した。
「結構自分を見てくれたり、弟子ではないですけど、育ててくれている」。杉川にとって、似たプレースタイルを持つ多久島は一番身近なお手本であり、目標でもある。「収めるところは自分と同じだと思うんですけど、そこからやっぱり運んだり、多久島くんはどんな状況でもターンするのでそこはすごいなって思います」。その背中はまだ遠い。それでもこの日はエースの不在をしっかりと埋めるパフォーマンスに杉川も「今日は出来すぎ」と自信をつけたゲームとなった。
次戦は多久島が戻ってくる中で、目標のベスト8、スタジアム進出をかけて聖望学園と対戦する。「相手はS1のチームで、自分たちはチャレンジャー。多久島くんを中心に、自分ももし出たら点に絡めるように頑張りたいと思います」。右利きだが、逆足の左足にも強い自信を持つ2年生FWは、初戦で左足首を痛めたこともあり、この日はなかなかインステップシュートを打つことができなかったが、大一番で多久島のアシストから「左足」で恩返しの2試合連続ゴールを狙う。
石黒登(取材・文)


